主≠監。
pussy struck
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――――。
ひと月前と同じ空気が流れている気がする。
たとえ時が経とうとも、何も変わってはいない。
まあ、だからこそ……この瞬間に抱ける幸福もあったのだろう。
つい先刻まで、狂ったように自分たちに溺れていた。
それがまるでうそだったかの様に目を閉じる名無しは、とろんとした表情で時々まぶたを上げ、ジェイドとトレイを見つめていた。
「……んん…」
「フフ……可愛いな…。朝起きてお前が居たら、きっと幸せなんだろうな……毎日」
「っ……、うぅ…」
「ああ、いいよ……まだ少し休んでろ」
トレイは名無しの体内に熱を送り込んだ時、ほんの僅かに、胸につっかえる鈍い傷みを感じていた。
気持ちを表すならば、身体も脳も、その殆どに溢れていたのは多幸感だった。
けれど針の穴ほど抱いた罪悪感も確かにあったのは、いかにもトレイらしいといえば間違いない。
直接触れた壁に擦られて浴びる快感に、出した瞬間の何とも形容しがたい最高の浸り心地。
白い泥にまみれた、されどどす黒い欲望をぶちまけて名無しを汚している、犯している……そんな邪な想いが滲み溢れれば、完全悪になるには彼はまだ優し過ぎた。
「ん……」
「……名無し…」
悶絶する目下の彼女を組み伏せて辱めても、愛情がなければ自分にはやはり出来ないことなのだと強く思った。
一種の捌け口と捉えるのならば、相手は誰だってよかったのだから。
こんな出会い方、こんな抱き方。
それでもトレイが名無しの頭を撫で続け、事後も愛で続ける仕草をとれたのは、彼女に恋慕を抱いていたゆえだろう。
たかだか二度目。
けれど数字だけでは想像もしえない、濃密な時間を既に過ごしていたから――。
「これは…ふふふ……、よく撮れていますね……」
「!…ジェイド……」
その後名無しと身体の繋がりを解いたトレイは、名残惜しそうに何度も何度もキスをして、赤らんだ頬や耳を撫でた。
手のひらを使って示す愛情表現は、射精してから彼女がうとうと、トレイのベッドに意識を預けるまでずっと続けていたことだった。
汗だくになってシーツが乱れ、セックスそのものが終わってしまっては、あとはこの場の解散が待っている。
それが辛くて、少しでも余韻に浸って欲しかった。
あわよくばもう一度……そんな浮いた気持ちさえ抱くのは、自分が欲深いいきものと自覚していれば当然だ。
「よく、ね……ははっ…」
すべてが終わった各々の動きは様々だった。
とはいえ想像に容易い範囲であることも確かだった。
行為の締めくくりを見届けていたジェイドは、撮影したトレイと名無しの映像が、きちんとスマホに保存されていたかどうかを確かめていた。
表情が緩んだ瞬間が恐らく、スマホに記録が残されたそれだろう。
壁際にもたれたまま冷静に画面へ指を滑らせ、他人の濃密な時間をひとり再生させる彼の姿は、少し異様だった。
にじり上がる口角は次なる企みを意味していたかもしれないし、かといって見当外れ、ただの笑みに過ぎないかもしれない。
ベッドの下にあった寮服と眼鏡を拾い上げ、名無しに軽く添い寝をしていたトレイに、ジェイドは続けて声をあげた。
「動画……トレイさんのスマホにお送りしておきますね。ああ、僕のスマホの分は削除しますので、どうぞご安心ください?」
「、……消すのか?別に俺は気に……、ああ……君はどうせ持ってるんだろうな……自分のを」
「ふふふ……ええ、まぁ。――……しかし本当にいいカオをしていますよ?僕が帰ったあと、名無しとゆっくりご覧になってはいかがでしょう……?」
「ッ……君がそう言うってことは、そうなんだろうな……ハ…まったく――」
ジェイドはトレイに話しがてら、自身も腰を起こすと、久々にベッドからおりて直立する感触に違和感を覚え、苦笑いを零した。
どんなに陸に慣れようと、ふいに自分が真人間ではないことを思い知らされる……そんな瞬間なのだろう。
借りていたトレイの椅子の背もたれに手を伸ばし、引ききった汗を頃合とみて服にも同じく手を伸ばす。
が、彼がジャケットを持ち上げる前に掴んだのはメインのスマホだった。
電源を入れると、意外にも通知の出なかった画面に胸を撫で下ろし、同時にフロイドから何の連絡も入っていないことには、少し寂寥感を抱いていた。
「ジェイド?」
「……ええ、ラウンジは問題なさそうです。あとは……僕が此処を離れるだけですね、ふふ」
「!」
「……足りないのでしょう?分かりますよ……この前、僕がそうだったんですから、ふふふ」
シャツの皺を伸ばし、いつもの着こなしに戻るべく袖に腕を通す。
片手で器用に釦を留めながら、ジェイドは行為の記録された方のスマホを再び操作していた。
慣れた手つきで終えたのは、その数分のデータをトレイに送信することだった。
彼には自分が帰ったあと、この部屋で起こりうることが分かっていたからこそ、早々に動画を転送していたのだろう。
「……送れたようですね。それじゃあ、僕はこれで……」
「名無しには?何も言わなくていいのか……?」
「ええ……名無しが今すり寄っているのはトレイさんですし、僕が入る隙はもうないようですよ……ふふふ」
「っ……どうだかな…ハハ」
「ふふ。……これで、お互いの部屋でのお遊びは済んだことになりますが……お誘いいただけるなら僕はいつでも大歓迎です。また三人で遊びましょう?」
トレイはジェイドの言葉を真に受け、馬鹿正直に寮服のジャケットに腕を伸ばす自分を少し恥じていた。
射精したばかり、まだ残されていた、少しの甘い事後のひととき。
それでも逸っていた気持ちがスマホに手を伸ばさせ、本当にデータが届いていた事実に腹の内側では歓喜が満ちた。
事後はジェイドも名無しを撫で回すかと思っていたけれど、冷静だったあたりは、ラウンジのことも多少気がかりだったのだろう。
自分たちに近しい寮長というポジションの者が不在でも、何かが起きてそれを小事と捉えることが出来ても、名無しを敷地に連れ込んでいる以上リスクはゼロじゃない。
乱れ髪を直し、手袋まではめ帽子を被った、部屋の中心に立つジェイドの姿からは、到底その数分前まで女を抱いていたとは思えない相貌がよみがえっていた。
「三人ね……、なあジェイド。もう俺に気を遣うな……君は君で好きに名無しを…」
「勿論そのつもりです……」
「っ……」
「ですからこれからは……トレイさんも好きに名無しを可愛がって差し上げてくださいね。この子は本当に、貴方のことが好きなようですから……」
「フ……その言葉、そのまま君に返すよ」
「これからも仲良くしてくださいね……ふふ。――……では、僕はこれで失礼します…―――」
締めくくりは、長いストールを肩に。
ジェイドがこの部屋に来た時と同じ格好に戻ったとき、漂っていた甘い空気はその一層が消失したようにも思えた。
性感物質を放っていた人物がひとりいなくなることで雰囲気が変わり、それでもベッドの上にはまだ二人、一糸も纏わず身を預けている……。
支度を終えたジェイドは余程ラウンジにも戻りたかったようだった。
本当に扉に手をかけ、トレイにだけ最後の挨拶を交わす。
物入れにそれぞれなおしていたのは勿論、メインのスマホと、既に動画データのなくなっていた古い機種だ。
ジェイドが名無しに敢えて一瞥をくれなかったあたり、彼にはそんなことをする必要など今更……そう言われているような気がして、トレイは腹の奥が少しむず痒かった――。