主≠監。
pussy struck
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このひと月のあいだはどの授業を受けても、人並みほどほどにそつなく熟せた。
魔法史、飛行術、錬金術……すべてにおいてだ。
途中挟んだ小テストだって悪い成績じゃなかったし、日々片す宿題や、課題もきっちりと期限は順守。
提出するたびにその内容をクルーウェルたちには褒められたけれど、そんなことで満たされるわけが、今のトレイにはなかった。
「そうか……よくよく考えればザルだな……。ジェイドにはそれが見えてたんだな。もうずっと前から」
「っ……」
「しかしなぁ……まさかウチの寮の欠点も見抜かれてるなんて誰が思う…?リドルが気付いてないことに気付くなんて……。な、名無し」
「あ……、ん…。うん……」
「――……当たり前とは思うが…初めてだろう?ハーツラビュルに来るの……歓迎するよ。俺だけは……ん」
「トレイ……、……ん…ッ!!」
今日という日をどんなに待ち望んでいたか計り知れない。
ふとした瞬間に思い出す、名無しの面影、身体、声……。
そして四肢と頭を揺らし、乱れに乱れる愛らしいその姿。
些細なきっかけで脳裏は占拠され、会えないでいたひと月ものあいだ、何度自分で慰めようとしたことだろう。
「チュ……――。ジェイドは遅れて来るよ……お前もそれくらい訊いてるんだろう?」
「…ん……、…トレイ……あの……」
「フッ……なんだ、そんなにそわそわして。まあオクタヴィネルやジェイドの部屋に比べれば……多少はうるさく感じるのも分かるが……。あっちは落ち着いてるしな、視覚的にも」
「ッ……」
「……ベッド、大きいだろう?」
「!」
「ハハ……図星か。可愛いなお前……だからちゃんと泳がないと、簡単に捕まるし、逃げられないぞ…?俺からも……ジェイドからも」
――――。
『ね?これで問題なくトレイさんのお部屋まで……』
『~……参ったな…。穴だらけじゃないか、うちの寮は』
『そういうわけでもないんですがね……そんなことを言ったら、どの寮にもあてはまってしまいますよ。ふふふ』
『……で、君も一緒に来るんだろう?』
『はい……ですが、すぐというわけには……。アズールが不在のときは、フロイドがその気になるまで給仕の仕事に付き合わなければ……ですから少し遅れます』
他人の動線を把握して、日頃の行動パターンも、殆どのズレなく頭に入っているという。
自ら叩き込むというよりは、勝手にインプットされてしまうそうだ。
まあ、そうでなければたかだか一人、そうとはいえこの敷地に名無しを連れ込むことなど、不可能に近いだろう。
『………』
『!ふふ……僕は気にしませんよ。名無しさんにも話しておきます……好きなように、弄んで差し上げてください?間違いなく悦びますよ』
たとえば余程のイレギュラーが起きたとて、そんなことすら、ジェイドにとっては小事に過ぎないらしい。
自分の部屋からトレイのそこへと場所を移すことなど、彼にはなんの差し支えもなかった。
むしろ、いつもと雰囲気も変わってより楽しめるだろう。
名無しも、そして自分たちも……。
そう表情に俄かな高揚を織り交ぜて説くジェイドは、メインストリートを共に歩いていたトレイをどこまでも驚かせていた。
「――………お前はずっと、ジェイドに…」
「ッ……、……?」
「……いや…。――ハハッ…、さあ……おいで」
「!わ……ッ、トレ……」
誰に見られることもなく、自室まで名無しを連れ込んで胸を撫で下ろす。
小さく息を吐いたトレイは、敢えて張り詰めていた緊張の糸を自ら断ちきった。
部屋の中から施錠をし、滅多なことでは使わない合い鍵は、既にジェイドに渡してある。
平気で差し出せたあたり、自らの歪みももはや僅かなものから、顕著な見てくれへととっくに変貌しているのだろう。
密室、名無しと二人きり。
そういう図式が出来上がって、今まさにそれを目の当たりにしているのだと思うと、トレイの身体には急激に帯びる熱があった。
「ッ……ト…」
「……お前さ…、少しマゾッ気あるだろ」
「っ………」
「やっぱりな……フッ。――あの日……お前を抱いてから今日まで、ずっと考えてたんだ……思わない日なんてなかったよ。会いたかった」
「ト…レイ……」
「、ああ……勿論、レンアイめいた意味じゃないぞ……?そうだな……たとえば次はどうすれば、お前をもっと悦ばせられるか…とか」
自室に連れ込んですぐ、施錠とほぼ同時に名無しを抱き締めた。
確かなぬくもりに安堵して気持ちが落ち着けば、ひと月前の出来事も夢じゃなかったのだと、自然と改まれる。
トレイが少し屈んでキスをしたとき、名無しはそれを避けなかった。
けれど、それは全体的に彼女がぎくしゃくしていたからだ。
初めて訪れる寮、トレイの部屋。
失礼にあたるなと思いながらも、キョロキョロと泳いでしまう両の目。
名無しの視界に入った彼のベッドは、部屋の面積もさることながら、ジェイドのそれより大きく見えていた。
「今日はこの前よりも、もっともっと……ちゃんとお前を知りたい。教えてくれるな……?」
「ト…、……、なに…を……教えることなんてもう…」
「ん……?ふふ……お前が…いつもジェイドとどんなセックスをしてるか。…他にどうされれば、この前以上にいっぱい濡れるのか……」
「そんな……っ!あ……」
「まあ……そういうことばかり考えて毎日過ごしてたよ、俺は。……引いたか?」
「ッ……そんな、ことは…」
「ハハ……だろうな。………――お前に引く資格はないよな。逆に俺が引くようなことをいつもしていれば、尚更だ」
「!」
待ち合わせはジェイドと同じやり方だった。
数分前、その現場に彼ではなくトレイがやってきた瞬間、あのとき作った関係は現実だったのだと、名無しも思い知らされていた。
他人を欺き、掻い潜り、周囲から疑われる余地もなく、容易にトレイの部屋まで来て、その扉を閉ざされる。
トレイとのキスは名無しにとっても当然ひと月ぶりに交わすそれであり、見上げた彼の前回とは違う雰囲気に、自然と頬は赤らんだ。
「ッ……トレイ…やっ……おろして…重いから……っ」
「はは……何処が?別に重くないさ……運ばせろよ、ベッドまで」
「…ッ……」
「?……なんだ、今日はやけに純情ぶるんだな。……まあこんなものか、女の子は…。初めて会ったとき、服だって既に着てなかったわけだしな、お前」
「…っ……あ、あれは…ジェイドに脱がされて……あの格好で、待ってろって言われて……ぅ…」
「……フッ、……そうか…。何だか俺も新鮮だよ……チュ……ん」
「ッ……」
「可愛い服。よく似合ってる……下着も可愛いのかな……ん?」
「ト……ッ、あ……」
「もう脱がせるぞ?見せてくれ……お前の身体」
前回とは違う……。
扉に背をつけ、逃げられないまま唇を塞がれたとき、名無しはトレイに小さな既視感を覚えていた。
それは顔や背格好、キスの仕方等についてではなく、もっと単純なジェイドとの共通点に対してだ。
決して頻度は多くはなかった……けれど、寮の部屋で会うときは、制服以外では大体がそこに準じた装いにあたる。
ジェイドも寮服姿を名無しに見せていたし、きっちりと締めたボウタイを解き、帽子を脱ぎ髪を揺らす瞬間が、口には出せずとも名無しは大好きだった。
「名無し」
「…ッ……」
そしてトレイも今、名無しに初めて寮服姿で会っていた。
勿論その姿は、彼女にとっても初見である。
制服時よりもきっちりとして見え、けれどどこかラフさも兼ね備えている砕けた雰囲気が、名無しの胸を擽っていた。
「……あ…」
羽織るだけのファニーなジャケットに、前を留めない黒のベストが、トレイにはよく似合うと思った。
白いインナーは爽やかさを演出しているように見えるのに、自分の知る彼は、そんな文字とは程遠い濁った黒さも持ち合わせている。
キスのあとすぐに抱き上げられ、ベッドに向かうまでの数歩数十秒のあいだ、名無しはトレイの胸元でも彼を見上げた。
短髪に帽子もとても好きだ……。
が、その組み合わせこそが、どことなくジェイドに似ている。
――なんて口にしようものなら、トレイはきっといい気はしないだろう。
分かっていたから、名無しは横抱きにされた彼の腕の中で純情ぶり、必要以上の抵抗はしなかった。
「…ッ……んん…」
名無しが頬を染める理由が自分の格好にあるとはつゆ知らず、トレイは彼女をベッドへ寝かせ、それを着崩してゆく。
とはいえ、上はその必要も今はまだあまりない。
腹部のロゼットに手をかけ、黄色と黒の腰布をしゅるりと掃うだけだった。
ジャケットは暑苦しく感じれば脱げばよかったし、何より、自分がそうする以前に、名無しを先に脱がしたいとトレイは思った。
「トレ……あ…」
「フ……やっぱり可愛いな…。……キスマーク、何処に付いてるものも薄くなって…もう殆ど消えかけてる」
「…っ……だって…」
「?お前……ひょっとしてジェイドと会うのもあの時以来なのか?」
「…ッ……ん…」
「!」
トレイは広々としたベッドの真ん中に名無しを下ろすと、想像どおり逃げ惑う彼女の所作に興奮を覚えた。
あまりの愛らしさに、一刻も早く汚したい……。
そういう気持ちに駆られるも、グッと堪えるのは、まだまだ見たい姿がトレイにはあったからだ。
スカートの裾が捲れた傍に指を添えれば、色の白い彼女の太腿はびくびくと震えている。
天蓋付ゆえ、自身のベッドが影っていても、その表面は浮いた鳥肌がよく見えた。
「そうか……てっきり何度か会ってると思ってたよ」
「ッ……約束…だからって……ジェイドが。…次はトレイの部屋って、決めてたから……」
「!……フッ…、嬉しいよ。ん……ちゅ…」
「ふッ…!んん……ちゅく…チュ……」
少し触れるだけで敏感に反応してくれる。
到底演技にも見えない名無しの扇情的な仕草は、ことごとくトレイの性欲を波立たせた。
ふと、焦れた指撫でが辛そうにも思えたのは、名無しにとっても此処へ来るのがひと月ぶりだったからだ。
キスだけじゃなく、セックスまでも……。
驚いたトレイは相変わらず眼鏡のずれを直しながら、律儀な性格を垣間見せる、今はまだいないジェイドに苦笑いを浮かべた。
「じゃあ……お前ももう、したくてしたくてたまらないんじゃないのか?名無し……」
「っ……そんなこと…っ、恥ずかしい……から、訊かないで…」
「――……ああ…名無し……可愛い。……ん」
「!!んぁ……ッ」
それはジェイドなりの筋の通し方だろうか。
今となっては、名無しは互いに共有する私物に値する。
が、別にトレイは、ジェイドが裏で彼女と会っていようと気にはならなかったし、てっきり今日までにもう何度も肌を重ねていると思っていた。
まあ、仮にそうだとしたら、多少は得意の悋気を沸かせていたのかもしれないけれど……。
それでもこの部屋で名無しを可愛がると決めていた以上、ジェイド自身も己を律していたのは、意外だった。
「………」
自分に合わせる必要など……まるで情けでもかけられているような気分だ。
その反動か、逆にトレイの中にあった名無しへの想いはより強まり、目下の彼女へ抱く熱情は、数分前の比ではなくなっていた。
「今日も沢山……めちゃくちゃにしてやるからな…。お前のこと暴いて……溺れさせて…何度でも…――」
「や……!!ん…っく、……ちゅ、んん…ッ」
「…ン……ハァ…、名無し……犯したい――」
「ッ……、ト…!いや……」
そのとき、トレイの目にも火が灯ったと分かったのは、その声音が極端に下がり、甘い感情がフッと消え伏せていたからだ。
視線を合わせなくてもじゅうぶん伝わっていた。
耳元に迸る感情が、自分を欲し、汚したいと唸っているように聞こえる。
待ち合わせをしたときからここへ来るまで。
そして入室して、少しのあいだに言葉を交わしたトレイは、既に居なくなっていた。
「あ……ッ」
直接的な行為を匂わせるそれを紡がれれば、身体がびくんと疼いた。
名無しも本当はそれを望んでいる。
けれど尊厳のためにあくまで拒む。
そういう流れを仕掛けてくるあたりもまた、実にジェイドに似たものを感じてしまうのだ。
トレイは自身の性癖を既に理解して、大いに楽しんでいる……。
上手く泳げずに、スプリングの軋む初めて寝かされたベッドの上。
逃げ惑う名無しがトレイの手から離れる術など、ある筈もなかった。
「ん、ぁ……ッ、や…、トレイ……」
「チュ……んん…はぁ……、ん…可愛いよ、お前」
「っ…あ……」
「フ……。下着もこんなに可愛いのに、なんだろうな……?この前つけてたやつよりいやらしくて――……スケベだ」
「ッ……ん!!あ…ァ……」
「…ン……どうせ汚れるし、さっさと脱がせるつもりだったが……もう少しつけてろ」
「トレ……ぃ、あ…ッッ」
瞬く間にトレイに服や靴を脱がされた名無しは、露わとなった自身の下着姿をまじまじと見下ろされ、視姦にひとり下腹部のむず痒さを感じていた。
恥ずかしげにありがちなポーズは両手で胸を覆い、膝同士も典型的にこすり合わせる。
ブラジャーのなかに仕込まれた胸は窮屈そうに肉感漂い、下半身に食い込む下着のラインは、その食い込みが欲情を掻き立てる。
部屋の明かりがじゅうぶんに届かないその場所だからこそ、卑猥さには拍車がかかっていた。
「あ……ぁ…」
「んー……チュ、……ちゅる……ンッ」
トレイはグローブを外すと、それを隣の机上へと勢いよく投げ捨てた。
そして素手になった途端に手のひら全体を使い、久々の名無しの感触に息巻く姿は、雄を思わせるにじゅうぶん相応していた。
ブラジャーの上から揉みしだいても、まるで撥ねかえるような肉厚な胸に熱く高揚する。
生地から溢れたハリのある肌色に舌を這わせながら、それを捲られることを実は望んでいるであろう名無しの裏をかき、据わった目つきでただただ彼女を煽る。
掴んだ細腕を頭上に運べば、トレイは胸から唇へ再びキスをして、何度も何度も舌を絡ませた。
「ん、……トレイ…あッ」
「……ハァ…、……フッ…もう汗掻いてるのか……?ちょっと滲んでるぞ」
「!……や、だ…ッ……あ」
「はぁ……、汗の味がするよ……全部舐めてやる。ン……」
「いや……ッふ、ぁぁ……」
トレイの匂いがするベッドとトレイ自身に挟まれて、寮服ごし身体をきゅっと擦り付けられる。
肌恋しさゆえ、トレイにも早く脱衣してほしいと思う傍ら、蕩けた目で見上げる彼の姿にも名無しは胸が高鳴った。
気持ち激しめだったキスは、何度も角度を交互にかえて交わした。
けれどトレイの帽子はまだ彼の頭上にあり、時々つばが頬に触れても落ちる気配がなく、それが名無しをもどかしく感じさせた。
「あん……ッ!ら、…トレイ……」
「んー…?ン……フフッ……、チュ…」
そんなもどかしさを悟るように、トレイは目が合う度、邪魔なら取ってもいいんだぞ?と視線で訴えかけてくる。
ニヒルな笑みを黙って降らされれば、名無しは彼の頭に手を伸ばすほかなかった。
「っ……」
これで好きだったキスがなに不自由なく出来る……。
これから齎されるであろう愛撫にも、きっと大きく影響が及ぶ。
名無しが震えた手でトレイの帽子のつばを掴めば、彼は二度ほど頭を左右に振り、再びフッと微笑むだけだった。
その仕草がジェイドと似ていれば、名無しがこの場でトレイを心から拒める理由など、なにひとつなかった――。
「あ…ぁ……」
「ちゅ……ん、……ちゅ…ッ」
「ト……!いや…恥ずか…し……」
「ん……何処がだ?俺はただ……お前の身体に触れて……ちゅ…、舐めてるだけだぞ?」
「、ッ……それが恥ず……!ぃ…ア……」
トレイの帽子を持った手は、ほどなくしてトレイ本人に奪われた。
手首を掴まれた反動で、名無しはそれを床に落下させてしまったけれど、彼は関係ないと言わんばかりにキスを続けた。
拾い上げる素振りのひとつも見せなかったのは、名無しに組み伏せ、彼女の全身を愛でることで既に頭がいっぱいだからだろう。
ゆえに、自分の装飾品に気を遣っている余裕など皆無だった。
「ん、ぁ……」
「はぁ……」
それはベッドにきてまだほんの僅かのことである……。
早くも名無しの皮膚にじわじわと滲むのは、彼女自身の汗だった。
その匂いにトレイがわざと鼻をスンスンさせれば、名無しはセオリー通り恥じらってトレイを拒む。
が、抗いは虚しさを生むだけだということを思い知らされる。
首筋を伝って、舌が行きついたトレイのそれが名無しの腋に触れれば、名無しは脱力を余儀なくされ、彼に屈する道を辿るまでだ――。
「ひ、…ぁ……」
「感じるんだな……ン…、こっちもちゃんと腕上げてみろ……両方舐めてやる」
「!!いや……だめ…、とれ…い……ああ…」
「ハ、ァ……んむ、……チュ」
「ト……やだ…、ぁ……っ」
トレイの舌遣いはとても巧妙だった。
腋の曲線に馴染む感触に、ゾクゾクとした気持ちをどこまでも感じさせられる。
部位から離れればねっとりと銀糸が伸び、切れる前に再びそこを窄められれば、吸引する卑猥な擬音が耳に入った。
名無しは顔を横に向けており、殆ど目の前でトレイの愛撫を見ていたのだけれど、時々キスをされる度に腰は揺れ、ベッドからもいくらか浮いた。
性的興奮に閉じていた脚が自ずと開けば、閉じれないようにトレイにすかさず介入される。
そうしてはしたなく股を広げてもベッドにはまだまだ余裕があり、名無しはひとり、本当に今日はここで溺れさせられるのだなという想いに駆られていた。
「ん……トレ…」
「はぁ……、ん?どうした……他も舐めて欲しそうに……さては焦れたな…?」
「ッ……ちが…う…もん」
左右の腋を交互に舐めつつ、トレイはブラジャーのホックにようやく手を伸ばしていた。
名無しの背中に彼の腕が滑り込み、そんなことでびくびくとしてしまうのは、既に敏感になりすぎていた証だろう。
三段ホックが一度にスムーズに解かれる……そんな感触が走れば、生地に包み込まれていた彼女の豊満な胸がそこからぽろりと零れ、トレイの目に映った。
「っ……」
既に浮き立つ鳥肌に、桜色をした綺麗な乳輪。
その中心はぴんと主張を見せている。
肩紐を下ろしてブラジャーそのものを外してやれば、名無しはより恥ずかしそうに頬を染めていた。
「フッ……可愛いな、バレバレだぞ?――……そら、どうして欲しいんだ?そのカオは……んー、……ココか?」
「!は、ぅ……んんッ」
「はは……アタリだよな。顔に書いてあるとホントに分かりやすいよ……けど、まだだ。俺は先にお前の……ん」
「!!や……んぁ、ぁ……ッ」
抵抗を織り交ぜつつ、男を受け入れる身体にじっくりと仕立てられてゆく……。
名無しの中で身体と心、気持ちの乖離がなくなりかけていても、あくまでトレイは低音の囁きで彼女を翻弄した。
意地の悪い耳傍での呟きに腰が震え、捩る度に下着が陰部に食い込んでゆく。
興奮ゆえにその中の実は既に充血していたし、だからこそ下着の締め付けは全身に影響を及ぼし、名無しに淫猥な表情を作らせていた。
「あ……!だ…め…ッ、トレ……イ…そこ……」
「ダメじゃないだろう?この前……ジェイドに散々舐められて、おねだりまでして……アンアン啼いてたのは誰だったかな」
「!!ひ、ン……ぁ、ぁ…」
「全身感じても、ここは一際群を抜いてるな……腰が浮きまくって、つま先もピンとなって……本当にいやらしい…」
「あ…ぁ……ッ!!」
「ちゅ……んく…、はぁ……もっとしてやる……んっ」
名無しが焦れを覚え、ブラジャーを剥がされたことで露わになった彼女の胸は、あたかも刺激欲しさに乳首が勃起していた。
勿論トレイの目にもそれははっきりと見えていたし、やわらかな乳房に貪り付けば、どんなに美味いだろう。
どんなにはしたなく喘いで、どの機に虚ろな瞳をして、自分に縋り付いてくるだろう。
様々な思惑を浮かべつつ、けれどそれをよそに、トレイが彼女の身体を弄ぶのに選んだ次の部位は、腋から胸元へではなく、耳だった。
すべては焼き付いて離れなかったゆえだ……。
ひと月前、ジェイドに跨って淫らに悶える名無しの姿は、今日までの夜毎、トレイを誘惑し続けていたのだから。
「あ…ん、……あッ…ぃ、や……」
「ん……チュ…」
「と、れ……そんなに、らめ……感じ…ちゃ……」
「ああ……そうだな…どうした?もっと喘いでみろよ……ん?」
「!ひ、ぃ……んぅ…」
「たったこれだけで……あとでお前の下着を脱がすのが楽しみだよ、名無し……どんなグチョグチョになってるだろうな?フフ……」
「ッ……あ――」
双房に浮いた鳥肌を撫で、そこにだって舌をあてがいたい想いは当然あった。
が、それを後回しにしてでも、耳を食んで感じる名無しを一刻も早く見たいと思った。
実際トレイが腋から耳を攻めると、もう今が交わった状態にでもあるのかと思うほど名無しはベッドの上で身悶え、嬌声をトレイに響かせた。
「あ、んぁ……あン…ッ、あ――」
耳たぶを噛めば肩がびくつく。
耳輪に吸い付けば、それに比例するかのように乳首がまたピンと勃ち、変わらず甲高い声が鳴る。
舌をドリルのように押し込んで内部を刺激すれば、何に形容するにも難しい反応で全身を打ち震わせ、絶頂さながらに感じる名無しの姿がトレイに映った。
「名無し……――」
ただの愛撫ひとつでここまで……ふと、寮服のボトムスが苦しく感じれば、それはトレイ自身も興奮に満ちている証だった。
刺激を撒くのに躍起だったところ、もう片方の耳を愛でる為に体勢を変えたときに感じた、その怒張力。
それは思わず、ファスナーに手を伸ばすほどだ。
彼もまた昂り、欲望を肉で体現していた事実は、誰にも覆せないものだった。
「トレイ……舌…も、だめ……今はもう…ほんとに、感じちゃうから……らめなの…」
「ん……やめていいのか?本当に……?」
「ッ……」
「こんな……アンアン喘いで、何度もヤダって拒んで……それでも舐め回されて濡らすのが気持ち好いんだろうって、俺は思ってたんだが……アテが外れたか?」
「…や……」
「まあ……全身感じるなら何処だっていいか…。キスひとつでだって、お前はアソコをグショグショにする女だしな……そのうち俺が見てるだけでイクんじゃないか……?フッ」
「ト……ッ」
ファスナーを下ろしてずらしたボトムスは、下腹部もいくらか楽になった。
ゆえに出来たゆとりが心のそれとも繋がって、まだまだトレイに名無しを煽らせる。
言葉で詰れば名無しは簡単に踊り、ベッドシーツがつま先に触れる音さえ、今は心地好いと思えた。
「名無し……」
甘い言葉も、囁きも……。
何処かまた彷彿とさせるのはジェイドの面影だろう。
そんなつもりがなくとも自然と所作が近付いてしまうのは、名無しが嬲られることを好いていたのを分かっていたからだし、トレイも、それがクセになりつつあった。
「ッ……」
「ん……?」
「…っ……続けて…ほし……でも…ほか、も……して?」
「!―――……ハッ、お前は本当……チュ…」
「ン……んく、…チュ、ぅ……」
「――いっぱいしてやる。だから……ちゃんと声出せよ……?名無し……我慢は俺が許さない」
「ッ……―――」
ずれたボトムスから覗いたボクサーが名無しの下着に触れ、布地の擦れる感触が焦れと恍惚を思わせる。
間接的に伝う互いの熱は、殊のほか心地よかった。
名無しはトレイの蠱惑的な囁きに負け、結局自ら前言撤回して、彼に屈した。
耳を食むために髪を撫でてくれるその仕草さえ愛しくて、同じことばかりを……更にはその先を求め、猫撫で声で縋りつく。
涙目にも見える名無しの好色めいた表情はトレイを焚き付け、少しのことで軋みそうもなかった彼のベッドは、直後ぎしぎしと唸声を上げていた―――。
――――。
「これはいけませんね……予定よりかなり遅れてしまいました。……まあ、僕が居ない方がトレイさんは嬉しいかもしれませんが」
ラウンジの出入り口を抜け、別の寮へ移動するために鏡舎へと向かう。
夕方からの寮長ミーティング。
フロイドに任せた給仕の仕事。
条件をすべてクリアした上でジェイドが向かっていたのは勿論、ハーツラビュルのトレイの部屋だ。
「……ふふふ」
大体の想像はついている。
ひと月ぶりの名無しの身体に貪り付くトレイ。
名無しもまた、ひと月ぶりにその身を弄ばれ、今頃は悦びに満ちた顔を漏らしていることだろう。
ジェイドは彼女が、まだ姿を見せない自分のことを少しでも恋しがってくれていれば、それでよかったのだ。
もっとも、恋慕していない筈がないことを分かっていたからこそ、余裕の微笑も零せるのだけれど……。
「一ヶ月はなかなか長かったですね……人間の遠距離恋愛……恋人同士は、こんな気持ちなのでしょうか」
肩でもたついたストールの皺を伸ばしながら、颯爽と前を歩いてゆく。
もの思いに口漏らした言葉に意味などない。
けれどジェイドもまた、鏡舎に近付くにつれ昂ぶっていた想いがあったことを自覚していた。
「――そう思うと、それ以上に溜まっていたトレイさんが不憫ですね……ふふ。紹介して正解でした」
早く名無しに会いたい、抱きたい。
トレイと二人で、彼女の悶絶する表情を目下に自分も多幸感を味わいたい。
電源を切ったスマホを上着の物入れにしまいながらその後、ジェイドはひとり、トレイの部屋へと急いだ―――。
魔法史、飛行術、錬金術……すべてにおいてだ。
途中挟んだ小テストだって悪い成績じゃなかったし、日々片す宿題や、課題もきっちりと期限は順守。
提出するたびにその内容をクルーウェルたちには褒められたけれど、そんなことで満たされるわけが、今のトレイにはなかった。
「そうか……よくよく考えればザルだな……。ジェイドにはそれが見えてたんだな。もうずっと前から」
「っ……」
「しかしなぁ……まさかウチの寮の欠点も見抜かれてるなんて誰が思う…?リドルが気付いてないことに気付くなんて……。な、名無し」
「あ……、ん…。うん……」
「――……当たり前とは思うが…初めてだろう?ハーツラビュルに来るの……歓迎するよ。俺だけは……ん」
「トレイ……、……ん…ッ!!」
今日という日をどんなに待ち望んでいたか計り知れない。
ふとした瞬間に思い出す、名無しの面影、身体、声……。
そして四肢と頭を揺らし、乱れに乱れる愛らしいその姿。
些細なきっかけで脳裏は占拠され、会えないでいたひと月ものあいだ、何度自分で慰めようとしたことだろう。
「チュ……――。ジェイドは遅れて来るよ……お前もそれくらい訊いてるんだろう?」
「…ん……、…トレイ……あの……」
「フッ……なんだ、そんなにそわそわして。まあオクタヴィネルやジェイドの部屋に比べれば……多少はうるさく感じるのも分かるが……。あっちは落ち着いてるしな、視覚的にも」
「ッ……」
「……ベッド、大きいだろう?」
「!」
「ハハ……図星か。可愛いなお前……だからちゃんと泳がないと、簡単に捕まるし、逃げられないぞ…?俺からも……ジェイドからも」
――――。
『ね?これで問題なくトレイさんのお部屋まで……』
『~……参ったな…。穴だらけじゃないか、うちの寮は』
『そういうわけでもないんですがね……そんなことを言ったら、どの寮にもあてはまってしまいますよ。ふふふ』
『……で、君も一緒に来るんだろう?』
『はい……ですが、すぐというわけには……。アズールが不在のときは、フロイドがその気になるまで給仕の仕事に付き合わなければ……ですから少し遅れます』
他人の動線を把握して、日頃の行動パターンも、殆どのズレなく頭に入っているという。
自ら叩き込むというよりは、勝手にインプットされてしまうそうだ。
まあ、そうでなければたかだか一人、そうとはいえこの敷地に名無しを連れ込むことなど、不可能に近いだろう。
『………』
『!ふふ……僕は気にしませんよ。名無しさんにも話しておきます……好きなように、弄んで差し上げてください?間違いなく悦びますよ』
たとえば余程のイレギュラーが起きたとて、そんなことすら、ジェイドにとっては小事に過ぎないらしい。
自分の部屋からトレイのそこへと場所を移すことなど、彼にはなんの差し支えもなかった。
むしろ、いつもと雰囲気も変わってより楽しめるだろう。
名無しも、そして自分たちも……。
そう表情に俄かな高揚を織り交ぜて説くジェイドは、メインストリートを共に歩いていたトレイをどこまでも驚かせていた。
「――………お前はずっと、ジェイドに…」
「ッ……、……?」
「……いや…。――ハハッ…、さあ……おいで」
「!わ……ッ、トレ……」
誰に見られることもなく、自室まで名無しを連れ込んで胸を撫で下ろす。
小さく息を吐いたトレイは、敢えて張り詰めていた緊張の糸を自ら断ちきった。
部屋の中から施錠をし、滅多なことでは使わない合い鍵は、既にジェイドに渡してある。
平気で差し出せたあたり、自らの歪みももはや僅かなものから、顕著な見てくれへととっくに変貌しているのだろう。
密室、名無しと二人きり。
そういう図式が出来上がって、今まさにそれを目の当たりにしているのだと思うと、トレイの身体には急激に帯びる熱があった。
「ッ……ト…」
「……お前さ…、少しマゾッ気あるだろ」
「っ………」
「やっぱりな……フッ。――あの日……お前を抱いてから今日まで、ずっと考えてたんだ……思わない日なんてなかったよ。会いたかった」
「ト…レイ……」
「、ああ……勿論、レンアイめいた意味じゃないぞ……?そうだな……たとえば次はどうすれば、お前をもっと悦ばせられるか…とか」
自室に連れ込んですぐ、施錠とほぼ同時に名無しを抱き締めた。
確かなぬくもりに安堵して気持ちが落ち着けば、ひと月前の出来事も夢じゃなかったのだと、自然と改まれる。
トレイが少し屈んでキスをしたとき、名無しはそれを避けなかった。
けれど、それは全体的に彼女がぎくしゃくしていたからだ。
初めて訪れる寮、トレイの部屋。
失礼にあたるなと思いながらも、キョロキョロと泳いでしまう両の目。
名無しの視界に入った彼のベッドは、部屋の面積もさることながら、ジェイドのそれより大きく見えていた。
「今日はこの前よりも、もっともっと……ちゃんとお前を知りたい。教えてくれるな……?」
「ト…、……、なに…を……教えることなんてもう…」
「ん……?ふふ……お前が…いつもジェイドとどんなセックスをしてるか。…他にどうされれば、この前以上にいっぱい濡れるのか……」
「そんな……っ!あ……」
「まあ……そういうことばかり考えて毎日過ごしてたよ、俺は。……引いたか?」
「ッ……そんな、ことは…」
「ハハ……だろうな。………――お前に引く資格はないよな。逆に俺が引くようなことをいつもしていれば、尚更だ」
「!」
待ち合わせはジェイドと同じやり方だった。
数分前、その現場に彼ではなくトレイがやってきた瞬間、あのとき作った関係は現実だったのだと、名無しも思い知らされていた。
他人を欺き、掻い潜り、周囲から疑われる余地もなく、容易にトレイの部屋まで来て、その扉を閉ざされる。
トレイとのキスは名無しにとっても当然ひと月ぶりに交わすそれであり、見上げた彼の前回とは違う雰囲気に、自然と頬は赤らんだ。
「ッ……トレイ…やっ……おろして…重いから……っ」
「はは……何処が?別に重くないさ……運ばせろよ、ベッドまで」
「…ッ……」
「?……なんだ、今日はやけに純情ぶるんだな。……まあこんなものか、女の子は…。初めて会ったとき、服だって既に着てなかったわけだしな、お前」
「…っ……あ、あれは…ジェイドに脱がされて……あの格好で、待ってろって言われて……ぅ…」
「……フッ、……そうか…。何だか俺も新鮮だよ……チュ……ん」
「ッ……」
「可愛い服。よく似合ってる……下着も可愛いのかな……ん?」
「ト……ッ、あ……」
「もう脱がせるぞ?見せてくれ……お前の身体」
前回とは違う……。
扉に背をつけ、逃げられないまま唇を塞がれたとき、名無しはトレイに小さな既視感を覚えていた。
それは顔や背格好、キスの仕方等についてではなく、もっと単純なジェイドとの共通点に対してだ。
決して頻度は多くはなかった……けれど、寮の部屋で会うときは、制服以外では大体がそこに準じた装いにあたる。
ジェイドも寮服姿を名無しに見せていたし、きっちりと締めたボウタイを解き、帽子を脱ぎ髪を揺らす瞬間が、口には出せずとも名無しは大好きだった。
「名無し」
「…ッ……」
そしてトレイも今、名無しに初めて寮服姿で会っていた。
勿論その姿は、彼女にとっても初見である。
制服時よりもきっちりとして見え、けれどどこかラフさも兼ね備えている砕けた雰囲気が、名無しの胸を擽っていた。
「……あ…」
羽織るだけのファニーなジャケットに、前を留めない黒のベストが、トレイにはよく似合うと思った。
白いインナーは爽やかさを演出しているように見えるのに、自分の知る彼は、そんな文字とは程遠い濁った黒さも持ち合わせている。
キスのあとすぐに抱き上げられ、ベッドに向かうまでの数歩数十秒のあいだ、名無しはトレイの胸元でも彼を見上げた。
短髪に帽子もとても好きだ……。
が、その組み合わせこそが、どことなくジェイドに似ている。
――なんて口にしようものなら、トレイはきっといい気はしないだろう。
分かっていたから、名無しは横抱きにされた彼の腕の中で純情ぶり、必要以上の抵抗はしなかった。
「…ッ……んん…」
名無しが頬を染める理由が自分の格好にあるとはつゆ知らず、トレイは彼女をベッドへ寝かせ、それを着崩してゆく。
とはいえ、上はその必要も今はまだあまりない。
腹部のロゼットに手をかけ、黄色と黒の腰布をしゅるりと掃うだけだった。
ジャケットは暑苦しく感じれば脱げばよかったし、何より、自分がそうする以前に、名無しを先に脱がしたいとトレイは思った。
「トレ……あ…」
「フ……やっぱり可愛いな…。……キスマーク、何処に付いてるものも薄くなって…もう殆ど消えかけてる」
「…っ……だって…」
「?お前……ひょっとしてジェイドと会うのもあの時以来なのか?」
「…ッ……ん…」
「!」
トレイは広々としたベッドの真ん中に名無しを下ろすと、想像どおり逃げ惑う彼女の所作に興奮を覚えた。
あまりの愛らしさに、一刻も早く汚したい……。
そういう気持ちに駆られるも、グッと堪えるのは、まだまだ見たい姿がトレイにはあったからだ。
スカートの裾が捲れた傍に指を添えれば、色の白い彼女の太腿はびくびくと震えている。
天蓋付ゆえ、自身のベッドが影っていても、その表面は浮いた鳥肌がよく見えた。
「そうか……てっきり何度か会ってると思ってたよ」
「ッ……約束…だからって……ジェイドが。…次はトレイの部屋って、決めてたから……」
「!……フッ…、嬉しいよ。ん……ちゅ…」
「ふッ…!んん……ちゅく…チュ……」
少し触れるだけで敏感に反応してくれる。
到底演技にも見えない名無しの扇情的な仕草は、ことごとくトレイの性欲を波立たせた。
ふと、焦れた指撫でが辛そうにも思えたのは、名無しにとっても此処へ来るのがひと月ぶりだったからだ。
キスだけじゃなく、セックスまでも……。
驚いたトレイは相変わらず眼鏡のずれを直しながら、律儀な性格を垣間見せる、今はまだいないジェイドに苦笑いを浮かべた。
「じゃあ……お前ももう、したくてしたくてたまらないんじゃないのか?名無し……」
「っ……そんなこと…っ、恥ずかしい……から、訊かないで…」
「――……ああ…名無し……可愛い。……ん」
「!!んぁ……ッ」
それはジェイドなりの筋の通し方だろうか。
今となっては、名無しは互いに共有する私物に値する。
が、別にトレイは、ジェイドが裏で彼女と会っていようと気にはならなかったし、てっきり今日までにもう何度も肌を重ねていると思っていた。
まあ、仮にそうだとしたら、多少は得意の悋気を沸かせていたのかもしれないけれど……。
それでもこの部屋で名無しを可愛がると決めていた以上、ジェイド自身も己を律していたのは、意外だった。
「………」
自分に合わせる必要など……まるで情けでもかけられているような気分だ。
その反動か、逆にトレイの中にあった名無しへの想いはより強まり、目下の彼女へ抱く熱情は、数分前の比ではなくなっていた。
「今日も沢山……めちゃくちゃにしてやるからな…。お前のこと暴いて……溺れさせて…何度でも…――」
「や……!!ん…っく、……ちゅ、んん…ッ」
「…ン……ハァ…、名無し……犯したい――」
「ッ……、ト…!いや……」
そのとき、トレイの目にも火が灯ったと分かったのは、その声音が極端に下がり、甘い感情がフッと消え伏せていたからだ。
視線を合わせなくてもじゅうぶん伝わっていた。
耳元に迸る感情が、自分を欲し、汚したいと唸っているように聞こえる。
待ち合わせをしたときからここへ来るまで。
そして入室して、少しのあいだに言葉を交わしたトレイは、既に居なくなっていた。
「あ……ッ」
直接的な行為を匂わせるそれを紡がれれば、身体がびくんと疼いた。
名無しも本当はそれを望んでいる。
けれど尊厳のためにあくまで拒む。
そういう流れを仕掛けてくるあたりもまた、実にジェイドに似たものを感じてしまうのだ。
トレイは自身の性癖を既に理解して、大いに楽しんでいる……。
上手く泳げずに、スプリングの軋む初めて寝かされたベッドの上。
逃げ惑う名無しがトレイの手から離れる術など、ある筈もなかった。
「ん、ぁ……ッ、や…、トレイ……」
「チュ……んん…はぁ……、ん…可愛いよ、お前」
「っ…あ……」
「フ……。下着もこんなに可愛いのに、なんだろうな……?この前つけてたやつよりいやらしくて――……スケベだ」
「ッ……ん!!あ…ァ……」
「…ン……どうせ汚れるし、さっさと脱がせるつもりだったが……もう少しつけてろ」
「トレ……ぃ、あ…ッッ」
瞬く間にトレイに服や靴を脱がされた名無しは、露わとなった自身の下着姿をまじまじと見下ろされ、視姦にひとり下腹部のむず痒さを感じていた。
恥ずかしげにありがちなポーズは両手で胸を覆い、膝同士も典型的にこすり合わせる。
ブラジャーのなかに仕込まれた胸は窮屈そうに肉感漂い、下半身に食い込む下着のラインは、その食い込みが欲情を掻き立てる。
部屋の明かりがじゅうぶんに届かないその場所だからこそ、卑猥さには拍車がかかっていた。
「あ……ぁ…」
「んー……チュ、……ちゅる……ンッ」
トレイはグローブを外すと、それを隣の机上へと勢いよく投げ捨てた。
そして素手になった途端に手のひら全体を使い、久々の名無しの感触に息巻く姿は、雄を思わせるにじゅうぶん相応していた。
ブラジャーの上から揉みしだいても、まるで撥ねかえるような肉厚な胸に熱く高揚する。
生地から溢れたハリのある肌色に舌を這わせながら、それを捲られることを実は望んでいるであろう名無しの裏をかき、据わった目つきでただただ彼女を煽る。
掴んだ細腕を頭上に運べば、トレイは胸から唇へ再びキスをして、何度も何度も舌を絡ませた。
「ん、……トレイ…あッ」
「……ハァ…、……フッ…もう汗掻いてるのか……?ちょっと滲んでるぞ」
「!……や、だ…ッ……あ」
「はぁ……、汗の味がするよ……全部舐めてやる。ン……」
「いや……ッふ、ぁぁ……」
トレイの匂いがするベッドとトレイ自身に挟まれて、寮服ごし身体をきゅっと擦り付けられる。
肌恋しさゆえ、トレイにも早く脱衣してほしいと思う傍ら、蕩けた目で見上げる彼の姿にも名無しは胸が高鳴った。
気持ち激しめだったキスは、何度も角度を交互にかえて交わした。
けれどトレイの帽子はまだ彼の頭上にあり、時々つばが頬に触れても落ちる気配がなく、それが名無しをもどかしく感じさせた。
「あん……ッ!ら、…トレイ……」
「んー…?ン……フフッ……、チュ…」
そんなもどかしさを悟るように、トレイは目が合う度、邪魔なら取ってもいいんだぞ?と視線で訴えかけてくる。
ニヒルな笑みを黙って降らされれば、名無しは彼の頭に手を伸ばすほかなかった。
「っ……」
これで好きだったキスがなに不自由なく出来る……。
これから齎されるであろう愛撫にも、きっと大きく影響が及ぶ。
名無しが震えた手でトレイの帽子のつばを掴めば、彼は二度ほど頭を左右に振り、再びフッと微笑むだけだった。
その仕草がジェイドと似ていれば、名無しがこの場でトレイを心から拒める理由など、なにひとつなかった――。
「あ…ぁ……」
「ちゅ……ん、……ちゅ…ッ」
「ト……!いや…恥ずか…し……」
「ん……何処がだ?俺はただ……お前の身体に触れて……ちゅ…、舐めてるだけだぞ?」
「、ッ……それが恥ず……!ぃ…ア……」
トレイの帽子を持った手は、ほどなくしてトレイ本人に奪われた。
手首を掴まれた反動で、名無しはそれを床に落下させてしまったけれど、彼は関係ないと言わんばかりにキスを続けた。
拾い上げる素振りのひとつも見せなかったのは、名無しに組み伏せ、彼女の全身を愛でることで既に頭がいっぱいだからだろう。
ゆえに、自分の装飾品に気を遣っている余裕など皆無だった。
「ん、ぁ……」
「はぁ……」
それはベッドにきてまだほんの僅かのことである……。
早くも名無しの皮膚にじわじわと滲むのは、彼女自身の汗だった。
その匂いにトレイがわざと鼻をスンスンさせれば、名無しはセオリー通り恥じらってトレイを拒む。
が、抗いは虚しさを生むだけだということを思い知らされる。
首筋を伝って、舌が行きついたトレイのそれが名無しの腋に触れれば、名無しは脱力を余儀なくされ、彼に屈する道を辿るまでだ――。
「ひ、…ぁ……」
「感じるんだな……ン…、こっちもちゃんと腕上げてみろ……両方舐めてやる」
「!!いや……だめ…、とれ…い……ああ…」
「ハ、ァ……んむ、……チュ」
「ト……やだ…、ぁ……っ」
トレイの舌遣いはとても巧妙だった。
腋の曲線に馴染む感触に、ゾクゾクとした気持ちをどこまでも感じさせられる。
部位から離れればねっとりと銀糸が伸び、切れる前に再びそこを窄められれば、吸引する卑猥な擬音が耳に入った。
名無しは顔を横に向けており、殆ど目の前でトレイの愛撫を見ていたのだけれど、時々キスをされる度に腰は揺れ、ベッドからもいくらか浮いた。
性的興奮に閉じていた脚が自ずと開けば、閉じれないようにトレイにすかさず介入される。
そうしてはしたなく股を広げてもベッドにはまだまだ余裕があり、名無しはひとり、本当に今日はここで溺れさせられるのだなという想いに駆られていた。
「ん……トレ…」
「はぁ……、ん?どうした……他も舐めて欲しそうに……さては焦れたな…?」
「ッ……ちが…う…もん」
左右の腋を交互に舐めつつ、トレイはブラジャーのホックにようやく手を伸ばしていた。
名無しの背中に彼の腕が滑り込み、そんなことでびくびくとしてしまうのは、既に敏感になりすぎていた証だろう。
三段ホックが一度にスムーズに解かれる……そんな感触が走れば、生地に包み込まれていた彼女の豊満な胸がそこからぽろりと零れ、トレイの目に映った。
「っ……」
既に浮き立つ鳥肌に、桜色をした綺麗な乳輪。
その中心はぴんと主張を見せている。
肩紐を下ろしてブラジャーそのものを外してやれば、名無しはより恥ずかしそうに頬を染めていた。
「フッ……可愛いな、バレバレだぞ?――……そら、どうして欲しいんだ?そのカオは……んー、……ココか?」
「!は、ぅ……んんッ」
「はは……アタリだよな。顔に書いてあるとホントに分かりやすいよ……けど、まだだ。俺は先にお前の……ん」
「!!や……んぁ、ぁ……ッ」
抵抗を織り交ぜつつ、男を受け入れる身体にじっくりと仕立てられてゆく……。
名無しの中で身体と心、気持ちの乖離がなくなりかけていても、あくまでトレイは低音の囁きで彼女を翻弄した。
意地の悪い耳傍での呟きに腰が震え、捩る度に下着が陰部に食い込んでゆく。
興奮ゆえにその中の実は既に充血していたし、だからこそ下着の締め付けは全身に影響を及ぼし、名無しに淫猥な表情を作らせていた。
「あ……!だ…め…ッ、トレ……イ…そこ……」
「ダメじゃないだろう?この前……ジェイドに散々舐められて、おねだりまでして……アンアン啼いてたのは誰だったかな」
「!!ひ、ン……ぁ、ぁ…」
「全身感じても、ここは一際群を抜いてるな……腰が浮きまくって、つま先もピンとなって……本当にいやらしい…」
「あ…ぁ……ッ!!」
「ちゅ……んく…、はぁ……もっとしてやる……んっ」
名無しが焦れを覚え、ブラジャーを剥がされたことで露わになった彼女の胸は、あたかも刺激欲しさに乳首が勃起していた。
勿論トレイの目にもそれははっきりと見えていたし、やわらかな乳房に貪り付けば、どんなに美味いだろう。
どんなにはしたなく喘いで、どの機に虚ろな瞳をして、自分に縋り付いてくるだろう。
様々な思惑を浮かべつつ、けれどそれをよそに、トレイが彼女の身体を弄ぶのに選んだ次の部位は、腋から胸元へではなく、耳だった。
すべては焼き付いて離れなかったゆえだ……。
ひと月前、ジェイドに跨って淫らに悶える名無しの姿は、今日までの夜毎、トレイを誘惑し続けていたのだから。
「あ…ん、……あッ…ぃ、や……」
「ん……チュ…」
「と、れ……そんなに、らめ……感じ…ちゃ……」
「ああ……そうだな…どうした?もっと喘いでみろよ……ん?」
「!ひ、ぃ……んぅ…」
「たったこれだけで……あとでお前の下着を脱がすのが楽しみだよ、名無し……どんなグチョグチョになってるだろうな?フフ……」
「ッ……あ――」
双房に浮いた鳥肌を撫で、そこにだって舌をあてがいたい想いは当然あった。
が、それを後回しにしてでも、耳を食んで感じる名無しを一刻も早く見たいと思った。
実際トレイが腋から耳を攻めると、もう今が交わった状態にでもあるのかと思うほど名無しはベッドの上で身悶え、嬌声をトレイに響かせた。
「あ、んぁ……あン…ッ、あ――」
耳たぶを噛めば肩がびくつく。
耳輪に吸い付けば、それに比例するかのように乳首がまたピンと勃ち、変わらず甲高い声が鳴る。
舌をドリルのように押し込んで内部を刺激すれば、何に形容するにも難しい反応で全身を打ち震わせ、絶頂さながらに感じる名無しの姿がトレイに映った。
「名無し……――」
ただの愛撫ひとつでここまで……ふと、寮服のボトムスが苦しく感じれば、それはトレイ自身も興奮に満ちている証だった。
刺激を撒くのに躍起だったところ、もう片方の耳を愛でる為に体勢を変えたときに感じた、その怒張力。
それは思わず、ファスナーに手を伸ばすほどだ。
彼もまた昂り、欲望を肉で体現していた事実は、誰にも覆せないものだった。
「トレイ……舌…も、だめ……今はもう…ほんとに、感じちゃうから……らめなの…」
「ん……やめていいのか?本当に……?」
「ッ……」
「こんな……アンアン喘いで、何度もヤダって拒んで……それでも舐め回されて濡らすのが気持ち好いんだろうって、俺は思ってたんだが……アテが外れたか?」
「…や……」
「まあ……全身感じるなら何処だっていいか…。キスひとつでだって、お前はアソコをグショグショにする女だしな……そのうち俺が見てるだけでイクんじゃないか……?フッ」
「ト……ッ」
ファスナーを下ろしてずらしたボトムスは、下腹部もいくらか楽になった。
ゆえに出来たゆとりが心のそれとも繋がって、まだまだトレイに名無しを煽らせる。
言葉で詰れば名無しは簡単に踊り、ベッドシーツがつま先に触れる音さえ、今は心地好いと思えた。
「名無し……」
甘い言葉も、囁きも……。
何処かまた彷彿とさせるのはジェイドの面影だろう。
そんなつもりがなくとも自然と所作が近付いてしまうのは、名無しが嬲られることを好いていたのを分かっていたからだし、トレイも、それがクセになりつつあった。
「ッ……」
「ん……?」
「…っ……続けて…ほし……でも…ほか、も……して?」
「!―――……ハッ、お前は本当……チュ…」
「ン……んく、…チュ、ぅ……」
「――いっぱいしてやる。だから……ちゃんと声出せよ……?名無し……我慢は俺が許さない」
「ッ……―――」
ずれたボトムスから覗いたボクサーが名無しの下着に触れ、布地の擦れる感触が焦れと恍惚を思わせる。
間接的に伝う互いの熱は、殊のほか心地よかった。
名無しはトレイの蠱惑的な囁きに負け、結局自ら前言撤回して、彼に屈した。
耳を食むために髪を撫でてくれるその仕草さえ愛しくて、同じことばかりを……更にはその先を求め、猫撫で声で縋りつく。
涙目にも見える名無しの好色めいた表情はトレイを焚き付け、少しのことで軋みそうもなかった彼のベッドは、直後ぎしぎしと唸声を上げていた―――。
――――。
「これはいけませんね……予定よりかなり遅れてしまいました。……まあ、僕が居ない方がトレイさんは嬉しいかもしれませんが」
ラウンジの出入り口を抜け、別の寮へ移動するために鏡舎へと向かう。
夕方からの寮長ミーティング。
フロイドに任せた給仕の仕事。
条件をすべてクリアした上でジェイドが向かっていたのは勿論、ハーツラビュルのトレイの部屋だ。
「……ふふふ」
大体の想像はついている。
ひと月ぶりの名無しの身体に貪り付くトレイ。
名無しもまた、ひと月ぶりにその身を弄ばれ、今頃は悦びに満ちた顔を漏らしていることだろう。
ジェイドは彼女が、まだ姿を見せない自分のことを少しでも恋しがってくれていれば、それでよかったのだ。
もっとも、恋慕していない筈がないことを分かっていたからこそ、余裕の微笑も零せるのだけれど……。
「一ヶ月はなかなか長かったですね……人間の遠距離恋愛……恋人同士は、こんな気持ちなのでしょうか」
肩でもたついたストールの皺を伸ばしながら、颯爽と前を歩いてゆく。
もの思いに口漏らした言葉に意味などない。
けれどジェイドもまた、鏡舎に近付くにつれ昂ぶっていた想いがあったことを自覚していた。
「――そう思うと、それ以上に溜まっていたトレイさんが不憫ですね……ふふ。紹介して正解でした」
早く名無しに会いたい、抱きたい。
トレイと二人で、彼女の悶絶する表情を目下に自分も多幸感を味わいたい。
電源を切ったスマホを上着の物入れにしまいながらその後、ジェイドはひとり、トレイの部屋へと急いだ―――。
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