主≠監。
RA's blue day
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――――。
「ハ…ッ……まったく…、無理な話だったな。……これが今日だけだと?……、ははは…!……――ありえない」
「!」
事後にお決まりのように目を閉じる女の寝顔を、男がただただ見つめ、頭に触れる。
そんなありがちな展開でも、そうならざるを得ない理由が、直前までのセックスには大いにあった。
指に走った、頬を撫でるその感触は、また別の意味で恍惚を思わせてくれる……。
「君でも息を切らすんだな」
「……嫌味ではないのでしょうが…僕の飛行術の授業をご覧になったうえでのお言葉ですか?それは」
「、……フッ」
静まり返った部屋の中に流す音楽なども特になく、ジェイドとトレイの声が、ただゆっくりと交互に発せられる。
三人居たのだからもう一人……本来ならば、名無しの声もそこに響くべきだろう。
が、彼女の意識は、既に夢の世界にあった。
「!……はは…いや…、他意はないさ。――……なあジェイド…、……おっと」
「っ……」
身体の内側に解き放たれたジェイドの白濁を筒のなかで泳がせながら、名無しはそのときには既に夢心地、強烈な睡魔とたたかっていた。
ジェイドに紡ぐ告白は、快感と眠気まじりに呆けていたゆえに囁いた言葉だ。
度重なった激しい律動に、全身に駆ける悦。
夢中になって悶えて、同じ言葉を何度も繰り返し口にしてしまった。
まあ、それくらいの戯言は、二人にとっても今更驚くまでもない、理解の範疇だ。
セックスに耽っている最中くらい、誰しも甘い夢は見ていたいものなのだから。
『ジェイド……すき……すき――』
『……ええ…僕も…、名無しがすきですよ』
『ん……―――』
もたれこんだまま数分が過ぎ、呼吸の乱れが戻った頃合を見計らい、ジェイドは名無しにキスをする。
その唇が既に幾度と欲望の受け皿になっていたとしても、彼がキスを躊躇うことはやはりなかった。
優しい口吸いに安心感が芽生え、名無しはそこで、解かれて自由になった両腕をジェイドの首へと静かにまわし、また耳元で愛を唱える。
返事なんて必要ない……伝える気持ちが、彼女には大事なことだった。
が、ジェイドはふっと微笑み呼応して、名無しに同じ言葉を返していた。
それが真実かどうか……偽りかどうかは、彼にしか分からないけれど―――。
「、スマホ……フロイドか?それともアズール……、まさか……」
揺れるピアスの傍で名無しの寝息が小さく聞こえると、相変わらず眠ってしまって……とひとり囁き、ジェイドは彼女の耳をそっと撫でた。
性感帯でもあるそこに触れてもぴくりとしなかったのは、本当に寝落ちていたいい証拠だ。
繋がりを解き、生白い太腿にゆっくりと伝うジェイドの白濁は、無防備な寝姿にもどうしてかよく映え、彼を一瞬高まらせる。
それは、射精後の一部始終を見続けていた、トレイとて同じだった。
「いえ……この音は通知でしょう、マジカメの、……!トレイさん、シャワーは…」
トレイも二人の行為が終わって、ようやく一点に向いていた視線を逸らし、本当の自由を得ていた。
最中、違う方向を見るのは実に難儀だった……それだけ彼も夢中だったということだろう。
あまりに乱れた自身の制服には苦笑いを浮かべ、ジェイドのベッドから久々に降りると、その場で身嗜みを整え、喉を鳴らして伸びをする。
ふと、目線を下げたそこに見えたのは、名無しの下着だ。
拾い上げたときにいまだ感じた、匂い立ついやらしい彼女の香り……。
目には見えない、気持ちを高揚させる淡い気配に再び下半身が起きあがろうとすることさえ、今は面白かった。
「ああ…汗はもうじゅうぶん引いた……といっても尋常じゃないくらい掻いたけどな……。少し我慢して、シャワーは向こうの寮に戻ってから浴びるよ。ここに長居は無用すぎる」
「それは確かに」
「………」
ジェイドが自身のベッドに名無しをそっと寝かせると、彼は左耳のピアスを外しながら、それを向かった勉強机の上に置いた。
短いながらも乱れを正す青みがかった髪に、腕にかけていた自身のネクタイは、傍にあったランドリーバスケットのなかへそっと放り込む。
時同じく机上にあったスマホが音を上げれば、ジェイドは小さく息を吐き、サイドボタンに触れ、耳障りに思う音を消していた。
よく聞けば、誰かが更新したときのマジカメの通知音だということくらい、トレイにも分かることだ。
それなのにわざわざ問うてしまうほどには、互いに満たされ、流石に気持ちもふわふわしていた。
「……」
ベッドからは名無しの寝息が聞こえる。
それらしい役割をようやく果たそうとしている寝具に、ジェイドのとった、ピアスを外すという言動。
このとき、トレイにはふと思うことがあった。
そして近く見た未来は、当たりか、はずれか―――。
「……君は、名無しと浴びるのか?これから」
「!……ふふ…なるほど」
ジェイドは、トレイが制服の皺を伸ばしている様子を見ながら、同じ機に耳たぶをフリーにしていた。
手に取ったキャッチをピアスに挿しなおす細かい仕草には視線を送らず、トレイを見ながら……だ。
勿論、散々汗を掻いておきながらどうして身嗜みをそこまで揃えるのか?という素朴な疑問から、入浴の有無を兼ね素直に声をかけていたことくらいは理解できる。
それでもトレイが帰る素振りを見せたからこそ、きっとジェイドはピアスを外したのだ。
「……?」
ジェイドには多分、関係なかったのだろう。
トレイがいつどこでシャワーを浴びようと、自分はひと眠りさせた名無しともう一度、その後また浴室で……――。
「、……なんだ…?」
「ふふふ……でしたら次は、トレイさんのお部屋で是非……如何です?そのときにはどうぞお二人で、遠慮せずシャワーもご一緒に」
「ッ……、…」
ほうら、やっぱり……。
そういう言葉が、思わず喉を突き破りかけた。
ジェイドの耳に届けるには、あまりにも今は不相応な汚らしい気持ちだ。
彼は予定調和を嫌い、予想外を好む。
とはいえ、他人のことは手に取るように掌握し、そのなかでトレイも読み通り動いてしまっている。
ジェイドの思い浮かべる大きな盤上では、誰もがみな、駒に過ぎないのだ。
恐らくはジェイド本人だって例外ではないだろうし、それでも現状を楽しむ様子は、彼の表情を見れば歴然だった。
「……――」
自分が帰ったあと、どうせまた名無しを抱くのだろう。
純粋に思ってしまった「ずるい」という稚拙な気持ち。
それを読まれたトレイは、そんな自分に気遣い、この場で次の機会を確約させるジェイドのことを、彼は本当の策士であると改めて痛感した。
そして、相当の才子でもあるのだろうことも……。
自分が絶対的な秘密を共有することになった、これがジェイドだ――。
「名無しはお風呂が大好きです。それにああいう場所は、彼女の可愛い声がよく響くので……好いですよ?シャワールーム。おすすめいたします」
「!ッ……ハ、~……まったく……」
「おや?悪い話ではないかと……ふふ。ではいつにしましょうか……確か次の寮長ミーティングは……」
帰る手筈でいたトレイの足を止めるかのように、ジェイドはスマホを持ち、画面の中を覗いていた。
この会話が口だけのものにならないための、早速彼が見ていたのはカレンダーアプリだ。
投げ槍にしないあたりは、その律儀な性格のおかげか……トレイは眼鏡を外しながら目元を指で一度擦り、その所作のあいだに、自身の幼稚めいた気持ちを吹き飛ばした。
「ハァ……はは…まったく――」
かけ直した眼鏡のレンズ越し、改めて目にするのは、普段タイをきっちり締めていたジェイドが、制服をラフに着ているその姿だ。
まるでフロイドのよう……たとえ身嗜みを整えていても、着崩れた様子で真剣にスマホを見る姿は何だかおかしくて、愉快だった。
自分の気持ちを読まれていても、今のそういう懸隔が、トレイにジェイドを憎ませずにいる。
そしてそれすら数多の手のうちのひとつかも知れずとも、もうどうでもよくなるほどには、トレイも次が待ち切れずにいた。
それが、胸中にあるいちばんの本音だ。
また早く名無しを抱きたいと、強く強く思った――。
「は……俺はおそらく…、君とはチェスの類では勝負できないな……一生。……ハハッ…」
「!……ふふふ」
ジェイドがカレンダーを見ていたのは、好都合な日程をピンポイントに見定める為だった。
互い肩書きを持つ者同士、上手く利用してこその満たされる条件……。
今日だって元をたどれば、寮長が皆集合していた日なのだ。
リスクも低い、急な呼び出しも避けられる。
だからトレイには今日、自由な時間があった。
「―――また抱かせろよ…名無し……、お前の大好きなジェイドと……三人で……」
やがて次の日取りを決め、トレイはいよいよジェイドの部屋を出ようとしていた。
けれど、彼は無性にもう一度だけ名無しに触れたいと思い、身体をその場で半回転させ、ジェイドのベッドへと近付いた。
すやすやと眠る名無しの頬に触れ、その手中に彼女のぬくもりを覚えさせる。
暫くは会えない……けれど会うまでのその暫くを乗り切るために、愛らしい寝顔すら目に焼き付けながら……。
「…ん……ト…、―――…すき……」
「!」
少し前まで、激しく乱れていたとは到底思えない。
儚く見えるその表情は、清廉さにも思わず息をのむ。
ふと、名残惜しげにトレイが手を離すと、機を同じくして名無しは口と目を一緒に開いていた。
どうやら深すぎたわけでもなかったらしいその眠り……。
確かに意識は夢のなかにあったものの、些細なことで目が覚めてしまうのもまた、激しい行為のあとならではなのかもしれない。
擦れた声音でトレイの名を呼ぶ名無しに、彼が高揚感を抱かない理由はなかった。
「お前……起きたのか……?辛いならまだ寝てろ……――ジェイドが送ってくれるんだろう?」
「!―――ん…、でもトレイ……も、……すき。だからまた……いっしょに―――」
「ッ……―――フッ…、ああ……わかった……お前可愛いな。……また一緒にな?名無し……チュ」
「ん……」
名無しが声を奏でたとき、トレイが横目に見たジェイドは机にもたれかかり、スマホを片手にフッと微笑していた。
どこぞの既視感は忘れもしない……今日のはじまりのそれと同じだった。
自分はこのあとも彼女を抱くのだから、そういう余裕面もできたのだろう……が、トレイはもう、嫉妬の二文字を引き寄せてはいなかった。
名無しの囁きに込められた気持ちと、辱められたうえで顕示する、彼女なりの自分への気遣い。
一度目にして溺れてくれたらしいその想いを感じ、素直に嬉々としていられたのだから……。
起き上がろうとした名無しを自ら止め、再び彼女を寝かせたトレイは、その汗ばんだ白い額にキスをした。
唇を選ばなかったのは、次までの楽しみだと……そう、自らに縛りをかけた為だった。
「帰り道、お気を付けくださいね……特に鏡舎までは。そろそろ集まっていた寮長が解散する時間でしょうから。ふふ……」
「!…っ……やっぱり君は……ハッ……いや。……本当に悪党だな…君も。……俺も―――」
同じクラスではあるけれど、出来れば深く関わるのは避けたいとリドルが言っていたことが、今になってとてもとてもよく分かる。
まあ、だからといって自分にそれを強く主張できる資格など、本当にもうどこにもなかった……―――。
RA blue day
20200513UP.
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