主≠監。
RA's blue day
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――――。
耳に響く、聞き慣れない急いた呼吸は多分自分のものだ。
心臓はばくばく、ドクドクといまも震えている。
恐ろしく速まった脈に、全身は少し熱で赤らんでいた。
「はぁ……ア…、はぁ……名無し――」
烈烈たる抽送の末に吐き出した体液。
その後トレイがきつく抱き締めたままだった名無しの足をようやく解放した時には、彼は起き上がり、片足跪いた中腰の状態をとっていた。
背丈があるぶん、それなりに鍛えていた身体も今は、腿から下が、初めて大地を蹴る仔鹿のように痙攣している。
握り締めた竿からはゼリー状にも喩えられよう残滓がたらりと滲み、名無しの顔にもまだ、ぽたぽたと落ちていた。
「、は……ト…!!んぐ……ッ」
「ん……約束したろう?またあとでしゃぶってくれって……。全部舐めてくれ…搾って、カリ吸って……いやらしく…、そうだ…ッんあ、ァ……ああ……」
「!ん……ふ、んぅ……っじゅぶ……チュ…ハァっ……はぁ…ッ……と、れ…」
トレイはぎりぎりまで名無しのなかに居た。
けれど、自分の陽物が被膜状態ではないことをよく理解していた。
生の挿入はそれはそれは気持ちが好い……が、どんなに激しく乱れても、あくまでひと筋の理性は棄て去ってはいなかったということだろう。
やることはやっておきながら、こういうところだけ浮き彫りになる無駄な優等生っぷりが、トレイは自分で皮肉に思った。
「んく……っ」
その瞬間は、抱き締めていた名無しの足を横へと倒し、すぐに顔の近くへ移動した。
髪を掃って見えた、頬の染まったいやらしい彼女の横顔にめがけ、トレイは射精をきめていた。
白線で描いた弧。
びゅるびゅると勢いの凄まじかった、三度ほどの放出。
のちに先端の道筋からはスローダウンした白濁が垂れ、名無しの顔を汚していた。
「……――」
名無しの唇にかかる白濁は、唾液と違って露骨に濃密で、まさに欲望のかたまりという雰囲気をたった数滴で連想させている。
トレイと比べて全身が震えていた名無しは、顔にかけられた精液を手で拭う元気がないほど疲弊しており、儚げ、けれどいやらしい虚ろな目がとても印象的だった。
「ハァ……はぁ…――お前……いつもこんなことしてるのか…ジェイドと、……!ジェイド…?」
「?ッ…はぁ…、……ジェイド………?」
そんな顔をしないで欲しい……。
また、出しきった膿が改まって生まれてしまうから。
また、名無しを壊したい欲に駆られてしまうから。
黒ずんだ気持ちが浄化されたばかりだったというのに、その意味もなくなって、またふりだしに戻ってしまうから。
「ジェ……イ…」
「名無し……?」
トレイはすべてを吐き出したのち、元々口淫を強要していたときに囁いていた、些細な口約束の振りをそこで回収した。
白濁を拭い損ねる名無しに構わず、押し付けた自身。
射精後もしばらく形を保っていた怒張を咥えさせて、最後の仕上げとばかりに、おもいきり竿全体は根元まで吸わせた。
トレイはその掃除をする名無しの仕草や、事後の気怠い雰囲気にじゅうぶん満足感を得ている。
が、果ててなお漲ろうとする自身の強欲を抑えるのに、内心では必死だった。
「ジェイ…ド……」
満たされた筈なのに、一度抱いただけで病みつきになっている事実が、トレイの背筋をぞわりと冷やす。
こういう遊びは今日限りで金輪際……。
そんな戯言をぬかした数十分前の自分が、あまりにも馬鹿に思えるほどに―――。
「気持ち好かったですか?名無し……こんなに…汗も掻いて。ふふふ、とてもいやらしいですよ」
「うん……、んっ…よか…った……ッ、は……ぁ、!!あ…ジェイド……ッ」
「そうですか…それはよかったです。――で……?僕とトレイさん……どちらが貴方のお好みでしたか…?」
ある程度搾り取らせると、トレイは漸く名無しから一歩離れ、ベッドに尻をつき大きく息を吐いた。
様々な体液でどろどろになった陽物が落ち着きを取り戻しつつ、けれど何かの弾みで、またいつでも膨張しそうな兆しだけは小さく感じながら……。
「――りょ、ほう……どっちも…すき……」
そして名無しもまた、唇を窄めさせられたことで体力と勘を取り戻し、顔の精液を指でしっかりと拭っていた。
小指の側面全体に纏わりついたトレイの白濁を、呆けながらも色香ある表情で口含むと、無意識に喉をしっかりと上下させる。
まあ、髪にまで飛んでいたものはどうしようもなかったのだけれど……。
「どっちもおっき、くて……きもち…くて……だいすき…」
「、っ……」
トレイはそんな名無しを見て、間接的に自分の精液を飲み込んだという事実に再び下肢を疼かせ、それに気付かないふりをすることができなかった。
「―――……だそうですよ?トレイさん……復活しました?」
「!ッ…、な……ッ」
満足したはずのトレイが疼きと同時に抱いたのは、二人に辱められ、特に射精を終えてからというもの、雰囲気が異なるように見えた名無しに対する違和感だった。
文字通り雰囲気が違うのだ。
意志薄弱のもと、自我が保てていないように見えてしまったのは、それだけ自分とのセックスが激しく、本当に壊れてしまった所為か、それとも……。
トレイに沸き起こるは、ここでも三度び。
学習できないのかと言わんばかりにどうしようもなく、彼はジェイドに悋気していた。
「ジェイド……、ッ…!名無し……お前…」
「ン……ちゅ、…っは……ァ……もっと…ちゅ、して…んん……ジェイド…」
トレイが引いたあと、その過程を見守っていたジェイドも漸く腰を浮かせ、気怠く寝ころぶ名無しの背に腕を回していた。
抱き起こした名無しは既にふらふらとしており、享楽に脳まで侵され、口はきちんと閉じられていなかった。
ジェイドはベッドの上で座ったまま、向かい合わせで自分に名無しを跨らせる。
きつく抱き締めて身体にたまった熱を感じると、優しく言葉をかけてやりながら、抱擁ののち躊躇なくキスをした。
トレイが驚いていたのは、その口吸いについて、だ……。
「ふ、……ぁ…んん」
「ン……ふふ、口のなかがとても熱くなって……ああ。そういえば久しぶりですね…貴方とこうするのは……チュ」
「っ、もっと……ジェイド…はむ、んん…ん」
「!んッ……ちゅ…、……そんなにねだって……まるで甘えん坊な稚魚のようです。……たった今トレイさんとの激しい激しいセックスが終わって、もう満足したのでは?」
「、でも…ジェイドも……ジェイドの、まだッ…はやく挿れ…て……?おねがいします……」
「フ……なんて素直な……いいですよ。それじゃあ貴方が動いて、トレイさんにも見せて差し上げなさい」
「ッ……―――」
対面座位で名無しを迎えたジェイドが、彼女の髪を何度も何度も優しく撫でている。
手に付いたであろうトレイの白濁が指間や甲を汚しても、何ら動じていないあたりは軽く度肝を抜かれた。
他の男に汚された自分の女を嬉しそうに抱き締める様子は正気の沙汰とは思えなかったし、そのあたりが、ジェイドたちが恋仲ではないことをよく表しているようにもトレイは感じた。
名無しも相当溺れているのだろう。
そして、幾度となくそんな彼女を可愛がるジェイドも……。
ジェイドのように割って入る隙がなかったトレイは淡く疎外感を抱き、それでも興奮する下半身を黙らせる為に、そこは敢えて悋気を持ち続ける選択をしていた。
「ん……ジェ、イ…ッ」
「僕が欲しいのでしょう?名無しの、この内側の……いちばん奥…―――……是非ご自分で腰を乱して、それを僕に見せてください?」
「ッ……は、ぁ…」
トレイが二人の関係性の他に驚愕を見せたのは、この機でようやく、久々に二人がキスをしていたことだった。
自分が散々咥えさせて、顔射後も、苦くどろくさいそれを舐めさせ、喉の奥にまで感触を残させた。
唇は拭っていても蛋白めいた色の名残はなんとなくあったし、そんな汚れた名無しを、ジェイドが躊躇なく受け入れる。
挙句自らも貪るなど、まさかまさか思いもしなかった。
かくいう名無しは幸せそうに虚ろだった目を輝かせ、脳内では、きっと新たな花を咲かせながら舌を絡ませ合っているのだろう。
まるで今更セックスの始まりを思わせるかの……小鳥の囀りのような優しい口吸いから、順を追って激しくなってゆくそれは、とても扇情的、情熱的な行為に見えた。
「―――あ!…っは、ァ……」
「ッ……ようやく、ですね…ふふふ……ンッ」
「ジェ……、待ってて…くれた……?ジェイド…」
「ええ……もちろんです。いくら耐えられはしても、待っていない筈などないでしょう…?僕が、貴方とこうなることを……」
「…っ……すき…、ジェイド……!あ…」
「………、僕もですよ…。トレイさんに散々犯されておきながら、こうやって……ん、僕の上に乗って激しく腰を振るところなんて……今日は特に最高です…、っン……」
このときのトレイは既にベッドの端まで移り、ぐったりと壁にもたれかかっている。
息を整えながら、同時に身嗜みもなんとかしたかった。
が、その筈なのに、名無しとジェイドに目を奪われて、まったく手が進まないでいた。
「っ……」
仄かな嫉妬心を持つことで耐えていたつもりだった。
けれど下を向かずとも分かったのは、いつの間にかむくむくと再び成長していた、自身の陽物だ。
座して向き合って、絡み合う二人の情景に感化されているなどと……。
トレイの胸のなかに広がる気持ちはまたも真っ黒く、くすんだ色へと染まっていた。
「…ッや……舐め…や、ァ……」
「おや……ご自分でしがみついて、僕の唇に耳を寄せておきながらイヤ……ですか?では残念ですが、このまま下りていただきましょうか……離れてください?名無し」
「!!いや……ッ、もっと…ぺろって……いっぱ、ぃ…ア……ッ」
「……ふふふ…、ああ……なんて可愛い…トレイさんにも見られていることですし、僕も何だかついつい、甘やかしてしまいます。ほら…名無し……ン、……チュ…」
「ッ…!ひゃ、んあ……ん…」
元々背の高い自分たちではあったけれど、特別ジェイドもそうだと改めて感じたのは、その座高や背筋の伸びにあった。
鍛え過ぎず、華奢過ぎず……。
自分と近い体型だなとは思っていたものの、よく見てみれば似て非なる、そもそもの所作の違いにトレイはふと息をのんでいた。
どう喩えようものか……恐らくは、自分はジェイドよりは、どちらかと言えばフロイドに似ているのかもしれない。
名無しを乱暴に抱くことなんてありえないし、まあ……フロイドの認識がそれとイコールというのも、トレイは少し申し訳ないなと思いつつ……。
「…名無し……ッ」
ジェイドはどんなに愛撫が激しくても、どんなに彼女に喰らい付いても、静を感じさせるそれに徹しているような気がした。
おそらく、トレイ自身にも、己は動だという自覚があるゆえに――。
「ッ…、名無し……っくそ…ハァ……」
両方よかった、なんてこたえはきっと建前だ。
比較されて澱んだ気持ちが少し薄くなったのは、根底から自分とジェイドは違うのだと、トレイが確信したからだろう。
目の前の二人の行為に昂ぶる気持ちも相まって、だから再び、あれだけ激しく乱れても陽物は名無しを求めているのだと思う。
ジェイドにしがみつき、縋り付く名無しは本当にいやらしかった。
自ら腰を浮かし、腰部は背骨中心の窪みに汗を滲ませる。
陰部を広げて、ジェイドを受け入れる瞬間に見せた彼女の表情は、それはそれは艶やかなるものだった。
グラインドさせる勢いも、上下に揺れ動く強かさも、腿が震えているのが目に見えていても、すべてはジェイドの為……そして自分の為。
健気な姿はトレイを煽る以外にはなく、彼がかけ直した眼鏡は、こめかみに滲んだ汗で何度目とずれていた。
「ふふ……それじゃあ、今日はこのまま貴方が上で……僕は下から。それでいいですね?」
「い…なんでも、……ジェイドが…きもちいいなら……あ…ア、ァ!!んぁ……」
「ッん……ちゅ…、貴方の、……いちばん好きなところを愛して差し上げます。ちゃんと僕だけを感じてくださいね?――僕だけを…ですよ?名無し……」
「!!あ、あ……ッ…」
ジェイドの顔はトレイからは見えなかった。
が、相当な表情をしているであろうことだけは面白いほど伝わってくる。
太めの甘い声音の筈なのに、芯に感じるのはその闇色と、演技ではなさそうな、ジェイドには珍しい卑猥な息遣い。
リップ音のボリュームが上がったということは、名無しの左耳あたりを容赦なく犯しているのだろう。
軟骨を噛み、耳朶を啄ばみながらそこを引っ張ったような、そこまで聞き慣れてはいない甘美な擬音がこれでもかと響く。
そして耳の中が好きだと言っていたことを思い出せば、そこも今、まさに執拗に舐め尽されているに違いない。
こちら側に角度がついて丸見えだった名無しの幸せそうな顔は、トレイにも再び彼女を攻めたいという想いを、どこまでも自然と込み上げさせた。
もっとも、だからこそ自分のターンが終わっていたトレイにとっては、今はただただ歯痒い瞬間だったであろう……。
「ん……チュ…んっ……」
「や、ン……みみ……きもちいい…ジェイドの舌いっぱい這入っ……んぁ…」
名無しがジェイドに耳食みをさせるべく、直前まで自ら彼の左耳を舐めていたことも、トレイにとってはとても印象的だった。
とろけた表情の傍ら、無意識に伸ばした舌は彼女なりの快楽を得る為の策とでも言おうか……ジェイドが長らく育てた存在なのだなという事実を、酷く突き付けられたような気がした。
「あ…ァ……ッ」
律動の度、ジェイドのピアスがゆらゆらと揺れている……。
三連の飾りがつややかに光っていたのは、名無しの唾液がじっとりと垂れていた何よりの証拠だった。
「耳、だけですか?……ん…ン……ちゅく…ちゅる……」
「は…ァ……!おく…ジェイドだめ……ジェイドは動かな……で…ッ……あたる…っ」
「あてているんですよ……ふふ…、ほら…また濡れているようです…聞こえますか?クチュクチュ……って。ふふふ…こんなひどい音……フッ」
「――……ッあ…、ッんぉ、…ああ…ッッ!」
耳元で水音を再現するジェイドは、本当にどこまでも意地が悪くみえた。
舌や唾液でのそれではなく、わざわざ言葉にして表現するその卑猥さに、名無しはびくびくと震えている。
彼女が手近な未来に夢見る享楽の果てを、トレイはひとり、むずむずと物想うことしかできなかった。
「名無し……あぁ…名無し……」
自分ももう限界かもしれない……。
目の前で、決して激烈とした動きは見せないのに、自分の時よりも艶めかしく淫らに狂い咲く名無しに、亀頭の先は潤みを孕んでいる。
身支度を……と考えておきながら、それを下着におさめることすら失念し、従順に勃起と維持を並行する様子など、もう笑い話だ。
万が一萎えてくれれでもすれば、それでよかったのに――。
そのとき、トレイの下半身はもうどうしようもなく、名無しとの二度目を求めていた。
既に彼女の甘い味を知ってしまったぶん、最初に抱いたときよりも明らかに耐え兼ねていたのだ。
「……名無しッ…」
そしてもう何度目のことだったか。
そんな彼の願望、欲求すらきっと、ジェイドはまた―――。
「……それで?片手ならお貸しできますよ?名無しの……ふふふ」
「!な……ッ…、ジェイド……」
揺れるベッドに止むことのない律動。
上半身を抱き合って絡みつく、心底いやらしいセックス。
壁にもたれていたトレイは、唾液まみれの舌を出してジェイドに溺れる名無しの表情を肴に、下肢へと手を伸ばそうとしていた。
自らの漏らす吐息にも抗えず、興奮でおそらくシャツの中は、乳首も勃っている。
男として情けない半面、いやらしい名無しを目にすれば、たとえ射精後でもこうもなるのは当然だと開き直るもう半面。
再び見えた陽物はやはり猛々しく、そして確かに粘り気のある体液を垂らしていた。
「貴方にとってお気に入りのひとつになった名無しは、既に貴方の玩具でもある……目の前に居るんですから、ご自分で抜く必要なんて今はないでしょう……ね?トレイさん」
「ッ……、っ……名無し…」
「ふふ……」
トレイが利き手で竿に触れた瞬間、彼は感じた視線に肩を二度ほどびくりと上下させた。
名無しの耳への愛撫を一旦やめたジェイドが、熱と冷ややかさを孕ませながら自分を見ていたのが原因だ。
ジェイドは名無しへの律動を強要しておきながら、なおも時々自ら腰を動かし、彼女の内側をがんがんと攻めていた。
ふとした瞬間に最奥にあたる感触が名無しを悶えさせ、ジェイドの気持ちも高揚させているのならば、動きを止められない理由も理解に容易い。
華奢な背に両腕をまわし続け、当然ながら主導権を持つ本人に、名無しを離す気はどうやらないらしい。
が、その腕が少し下……くびれあたりにずらされれば、長らく濃厚だった二人の密着は自然と解けていた。
「?ジェ…、ィ……み……もっと…みみ……!…ッ、トレイ…――」
「名無し……?事情が変わってしまいました……。さあ、ほら……あとで達くときに、ちゃんと耳は舐め回して差し上げますから……たっぷりと、また貴方がイヤだと叫ぶまで」
「?!ッ……トレイ…、あ……!!んむ…」
「僕が今まで約束を破ったことがありましたか……?…ッ!……ふふ、随分せっかちですね…名無しも、……トレイさん、貴方も」
僅かに自由の出来た名無しの上肢。
名無しがジェイド同様に彼の首にまわしていた細腕を離せば、発言どおり、彼女の片腕は空くのだろう。
そのフリーになるまでの星の瞬きほどのあいだも、トレイには我慢できなかった。
気持ちと勢いでベッドの後方から起き上がると、名無しが自分の歩み寄りに気付く前に、その顔前まで向かう。
下げっぱなしだったファスナーの……ずらした制服と下着の隙間から、再びフルに怒張した陽物を彼女に咥えさせるまでの言動は、トレイが殆ど無意識に行ったことだった。
「んむ……ッ…ん!んん……っ」
「ふふ……こんな状況でも、予想外なことは起きるものですね……面白い」
「は、……んん!む、ぅ……んぐッ…ぐ……」
「僕は、名無しの片手なら……と言ったのですが…。現にわざわざ腕を解かせたところを……ふふふ」
トレイはジェイドの言葉を頭のなかに入れていた様子はあったものの、それを理解するまでにはどうにも至れていないようだった。
きっと分かっていても、衝動がトレイの思考能力と判断力を奪っていたのだとジェイドは思う。
普段からほどよく手を抜き、あくまで聡明である筈の彼の理性がここまで狂うほどだった、ということだろう……。
どこまでもジェイドを驚かせ、尚且つ楽しませている。
名無しがトレイの存在を再び気にしたのは、ジェイドの頭にもたれながらも、耳への愛撫が中断されたときとほぼ同じときだった。
疑問に思い、視線をジェイドやあさっての方向からトレイに向けたときにはもう、数分前まで自分の体内で暴れていたそれが目前にあった。
え、という声を出す間もなく咥えさせられたそれは殆ど強制だ。
急に大口を開けさせられ、静まっていた筈の再び火照る肉をしゃぶらされた名無しに響いた衝撃は、なかなかのものだった。
「名無し……あ……んぁ…好いよ……お前のフェラ、本当…上手くて……ア…ッ」
「んぐ!!……ん…ッ」
「!……ハハ…吃驚しておきながら、イヤってわけでもなさそうなんだよな……お前」
「ン…っむ……んん!…っは……」
「……どうした?頼んでないのに、手まで添えてくれるのか……ッ、ふふ…こら、そんな扱くなよ……ッ、ン…あァ……っ」
高揚で滲む汗、興奮による息遣いで俄かに白む視界。
いっそ眼鏡を外すかどうか、トレイはそのとき少し悩んでいた。
ちょうど壁にはジェイドの趣味らしいテラリウムの飾られた棚があったから、そこに一時的に置けば傷もつかないだろうと思ったのだ。
けれど名無しの卑猥な姿を前に、それを霞み目に映すのはどう考えても勿体ないだろう。
ずれる眼鏡をいちいち定位置にかけ直す手間を選んででも、この網膜に焼き付けたい……。
そう願うほどには、彼が見下ろすそこには絶景が広がっていた。
「はぁ…んっ……んむ…!!ん……ッ」
「!……フッ…大変だな…上も下も……、お前めちゃくちゃいやらしい……なあ、今度は口に出したい…またイカせてくれるか……?名無し」
「、ッ……ん、…ぅ、……んぁ!ぁ…ふ……」
「ん……?ダメか?…顔にかかったモノじゃない……俺のを直接……お前に……――!ン…ぁ……飲んでくれ、名無し……っ」
「…ッ……んん…」
ジェイドの上に跨る名無しの頭の高さは、絶妙にトレイの股下にも近く、それがトレイに好機を齎していたのだろう。
ベッドの上で立位を保つ体勢は苦しそうではなかったし、名無しの後頭部を掴み、咥内での出し挿れによる快楽を味わう眼鏡の奥は、幸せそうな表情で満ちていた。
名無しが見上げれば、同様に自分を見下ろすトレイと必然的に視線が合う。
男が抱く、女に対する征服感を味わわされた瞬間だと思った……。
そのゾクゾクとした気持ちが下半身にも影響を及ぼせば、陰部を窄められて快感に浸るのは、うねりを離さないジェイドだった。
「ッ……、ハ…ぁ……」
少し上を向いて目を細めるジェイドは、出張る喉仏がやけに色香を匂わせ、締め付けられた感触にひとり吐息を零している。
トレイを煽る余裕はまだまだあるように見えても、陽物が名無しの肉と擦れる極上の悦だけは、素直に受け入れていた。
「なァ……名無しの手だけで、俺が満足できると思ったか……?ジェイド」
「!ふふ……確かに。これはらしくもなく見誤りましたね、……ん…っ!……それに、トレイさんのおかげで…名無しが僕の思う以上に悶えています…ン……」
「っ……ああ……そうだな。…それに、俺は君に、礼も言わなくちゃならない」
「?」
「こんなどうしようもない……下手をすりゃあ持て余し兼ねない。……けど…俺にとってもこいつはたまらない。最高の玩具だよ……名無しは」
「ッ……フ、それはよかったです……、…――」
ベッドの上で粘膜を絡みつかせ、漏れる水音と息遣いが、湿った空気に乗り部屋中に漂っているような気がする。
男二人と女一人の交わる光景が、卑猥でない理由などひとつもなかった。
トレイは名無しの後頭部を掴んだまま、手首のスナップを上手く利かせ、延々と同じ動きを繰り返させた。
膣中とは違う快感が齎される咥内は、似たような温度でも全く同じではなかったし、一度目の口淫ともまるで味わい深さは異なっていた。
「っ……」
ジェイドとの甘い時間を分断されて戸惑いつつも、苦しそうに赤い頬を拵え、トレイのそれをひたすら愛でさせられている……。
そんな名無しは、今何を考えているのだろう。
トレイがジェイドと織りなしていた会話については、どう思ったのだろう。
初めての体験に脳が認識する異次元の享楽は、このあと彼女をどう狂わせてゆくのだろう……。
一度満たされたはずのトレイに再度渦巻くその欲望は、ただただ黒い気持ちとともに増すばかりだった。
同時に、高み昇りたさゆえに加速もつけながら。
そして自らも突く強かな腰遣いに、いよいよ名無しの目元には、再び涙が浮かんだ。
「む……んんッ…、んぐ……ッ」
陰部をジェイドに奪われながら、捩る上半身がトレイにより彼の側へと傾倒してゆく……。
その姿はなんだか、彼女もまた貪欲に快楽を求めているように見えて、トレイはそれが少し嬉しかった。
「ん……も、っと…トレイ……のも、……!ひぃ、ァ……ジェイド…突いちゃや……んぁッ」
「ハァ……はは…!まるで底なしか……飲んでくれるんだな?名無し……なあ、おねだりできるか?」
「!……ッ…、トレイの…ッふ、…うぅ……」
「ん……?」
「、ッ……――トレイの、…ッお口に……。飲ませて…ください……ッ」
「ッ……――」
そのときトレイは、自身の手のひらにも熱がこもっている感触を覚えていた。
掴む名無しの後頭部は、きっと頭皮に汗が滲んでいたのだろう。
髪を巻き込んだゆえの温度上昇もあったのかもしれないけれど、ずっとジェイドにねだられて、腰を振るい続けている彼女の体温が低い筈はなかった。
よく見れば首筋や鎖骨ももう随分としっとりしていたし、ひとしずくとなっていたものは重力に従い、その艶めかしい身体をずるずると滑り降りていた。
そこまで火照って、上下を二人同時に犯され嫌がりながら、どちらも蛭のように決して離そうとはしない。
言葉で否定的に訴えてもそれが心底からの本音ではなく、もっと先を求める反動形成ゆえのいじらしさ。
「は、ぁ……ッ」
全部が愛おしく思えた。
それ以外になかった。
トレイには名無しを征服したい気持ちや、屈させたい感情ばかりがふつふつと募る。
改めて、もしもこれが最初で最後の接触だったかもしれないと思うと、ありえないという一言しか最早浮かばなかった。
「ン……っ…あ!は…んぐ、ぅ……ンン――」
「上手に言えたな……ッ、ん…飲めよ……全部だ。お前のクチのなか…今よりもっと……ア…っぐ、ぁ…出る……イク…名無し――ッはァ……ッ!!」
二度目を吐き出す為、揺るがした腰が息をのむ速さに達した時、トレイは我慢できずに男ながらの嬌声を漏らした。
激しさと吐息によりまた眼鏡がずれ、レンズがほんのり曇っても、そんなことに構っていられる余裕などもないままに……。
根元に添えてくれていた名無しの手をとったのは、彼女の口だけに拘ったためだ。
より辱めているという感触も味わうべく、あてがっていた後頭部へ今度は自分の手を両方差し出し、がっしりと掴み直した。
声にならない声を上げる甘い音色が、耳を通し、絶頂まで何処までもアシストしてくれる。
たまらず名無しが、トレイの腕に撥ね退けられた手を伸ばして嫌そうに抵抗すれば、それは彼の射精欲を一気に押し上げるだけだった。
そんな名無しに出したい、飲ませたい……。
抗いながら目が合ったその瞬間、トレイは彼女の喉奥に二陣を放ち、そこでようやく激しい律動に終止符を打っていた―――。