主≠監。
RA's blue day
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「僕以外の男の舌でクリトリスを可愛がられて、あんなにキャンキャンと喘ぐなんて、本当……脱帽です。とても興奮しましたよ?本番もまだだというのにこんなに楽しめるなど…」
「ッ……ィ…ド…、……?おこ……ジェイド……」
「いえ……怒ってなど。むしろ……だって貴方はもう既に、僕とトレイさんのものですから」
「……!あ、ぁ……なに…、待っ……?!」
普段どんなに激しい時間を過ごしても、呼吸は数十秒もあれば元に戻せた。
体力だってないわけじゃなかったし、むしろ、それなりに持久力があるからこそ、ジェイドの相手をすることができていた。
その筈の名無しの息がいまだに戻らないのは、二乗に渡るセックスの所為だろうか。
厳密に言ってしまえばまだ愛撫だけの段階でも、同時に二人の雄に抱かれるということがどれだけ過酷か……身体で分からされた気がした。
「……ッ――」
高潮が引き、真っ白になった名無しの脳内に再び色が戻ると、それでもトレイは余韻を楽しむべく、彼女の陰部にキスをする。
ジェイドも同様で、絶頂の瞬間こそ激しく身体を舐っていたけれど、終わったところで舌をすぐに離すことはなかった。
甘いため息に甘い囁き。
ピークが過ぎて、浮かべる恍惚。
そしてまた数十秒が過ぎ、やっと二人の唇が身体から離されたと思った頃には、名無しの目元にはジェイドの手が触れていた。
「ジェイド……?」
「お迎えして差し上げなさい、名無し……。ぐっしょりと濡れた……貴方ので、彼を…」
「ん!……眩…し……ッ―――?!ジェ、イ……!!トレイ……ッ――!」
耳は既に、二人のいやらしいテノールと卑猥な水音で麻痺していた。
だから名無しはいちいち今、どちらがどんな音を立てて何をしようとしているかなど、とろけた気持ちと脳で理解しようとはしなかったし、できなかった。
そんななか唯一、シーツがカサカサと擦れる音だけは普通に聞き取れた。
けれどそれができたところで、彼女には得も損もないのだ。
たとえ似た音が耳元間近で響いたところで、それがまさか、目隠しのネクタイを外されるという前兆の音色でも、名無しは一瞬気付けなかった。
性的興奮に思考を囚われ、鈍感だった名無しにそれを教えてくれたのは、消えた頭の締め付けと、まぶたを閉じたまま感じた、明るさや眩しさたるものだった。
「トレ……ッ――、ア…ぁ……」
「正直……自分でも驚いてるよ…名無し。会ったばかりで、まあ……散々お前の身体で遊んでおいて、俺に言えることでもないんだろうけどな……」
「ッ……―――」
ジェイドに気持ちをめぐらせつつ、眩しさを感じたばかりだった名無しは、まもなく目の前に黒い霧がかった世界を感じていた。
その瞬間、全身に漂っていた絶頂後の余韻が、新たな快楽を求め疼き始める。
ひくつきの静まらない陰部に変わらず居たのは、上肢を起こし、今度こそ欲望の渦に巣食われたトレイの姿だった。
ジェイドは、そんなトレイを彼女に見せるため目隠しを外しており、彼の透けて見えた目論見に名無しが身震いしたのは言うまでもなかった。
挿入の機を狙った視覚の解放は、いつ計画したのだろう……。
そんなことを思う間もなく、熟れた秘部に添えられたトレイの陽物は、溶け合う前から愛液と先走りが絡み合って、とても卑猥だった。
名無しの視線がトレイに移った瞬間、二人の微笑は闇を孕ませたものにかわっていた。
「お前を抱いて……それでお前がもしも傷つくようなら、別に俺が我慢すればいいことだった……あとで勝手に一人で抜くことくらい、いくらでもできるしな。…けど違うよな……」
「トレイ……あ…ッ、ハ…ァ……待」
「ジェイドに気を遣う必要もなさそうだし……――…めちゃくちゃに壊していいよな?お前のコト――」
名無しが感じた眩しさは、長らくジェイドのネクタイによって目元を覆われていれば妥当な反応だろう。
片方ずつゆっくりと開眼してゆくいかにもなリアクションも、ごくごく自然だった。
久しぶりに暗闇から解放されて、真上を向いた名無しがトレイのことよりも先に見たのは、再び自分に膝枕と同等のことをしてくれたジェイドだ。
視線が合うと、目元を細めてそっと微笑まれる……。
ジェイドに与えられる柔和なそれは、彼女にとって、とてもささやかな幸せのひとつだった。
「――待って……っあ、トレイ……ッ」
「待てない」
口では意地悪ばかり。
ベッドではいやらしい言葉をたっぷり使って、耳元で自分の弱いトコロばかりを攻めてくる。
いざというときには女性誰もが抱く、胸ときめくような願望だって容易くぱっと降らせてしまう。
焦らすのも上手ければ与えるのも得手で、非なんて打ちようもなかった。
名無しがジェイドとの関係をやめられないのはこれがあったからだったし、もとより、彼女には解消する気などそもそもなかった。
「!ト……、…ッ――…」
そんな名無しがジェイドに言われるがまま、今はいよいよトレイに抱かれようと、再び下肢を囚われている……。
嫌だと言えなかったのは嫌われたくなかったからだし、何よりジェイドが、それを望んでいた。
連れて来られたのは、偶々トレイという一人の男だったのかもしれない……。
けれど名無しの中で段々と芽生える感情は、自分でもどうしようもないほど堕落しきったものだった。
情が移るとか、そういう話じゃない。
本当に現金で馬鹿な女だと思う。
肌を触れ合わせることで、気持ちに変化があることは決して珍しいわけじゃない、と、その肌で強く感じさせられた気がした――。
「壊したい……お前を…ジェイドの見てる目の前でめちゃくちゃにしたい……名無し」
「――い……ゃ、ッ…あ……」
触れ合ってみて、触れられみて、愛されてみて、実際トレイが来てくれてよかったし、嬉しかった。
そうして声を上げてどんなに嫌がっても、漏れる嬌声でジェイドは名無しのすべてに気付くのだ。
二人に攻められる快楽を知って、三人で淫れることの、悦に溺れる楽園行をただただ望んでいるそれすら、簡単に見抜かれる。
そしてそれらを事実として悟ろうとも、ジェイドは名無しに笑むばかりで、どころか、一緒になって楽しんでくれる。
自分を嬲るトレイにやきもちひとつ妬かないところすら、悩ましいほどに慕情は募った。
「ト、レ……!!…あ……――ぁ……ッ」
「ハ……ぁ…フッ……挿入ったな…こんなあっさりと……ハハ…ッ。いやらしいからだろうな……お前も、お前のココも。――ん…っ締ま……」
「…ト……んァ…、あっ……いや!いや……」
「ハァ……いっぱい突くぞ……?名無し……俺のでお前のナカも、奥も……――お願いされても止めないからな…、あ……ァ…」
「―――、ひ……ッ!!」
こんなとき、とろとろに濡れた陰部を敢えてトレイに譲るあたりもまた、やけに意地らしく感じる。
同時に、そういうところが……とも。
恋慕に似た情を抱くジェイドに、トレイのことを好くようにも奸計をめぐらされ、そして堕とされる。
結局名無しは、その一瞬のうちに両方を、二人を求めるように仕立てられていた。
――――。
「フッ…、どうやら僕は、ここ最近のセックスで一番そそられているようです……いまの貴方のイヤイヤに。ふふ……まったくそうに見えないあたりなんて、どうにも卑猥でたまりません」
「あ……んぁ…ッ……」
「そんなに僕以外の男性に激しく突かれて……次はなんです?おかしくなっちゃう…ッ、……ですか?名無し」
「ッ……ジェ…!!ひぃ、ぁ……っ…」
「おやおや…ダメですよ……?ちゃんとトレイさんに集中して差し上げないと…ふふふ」
上を向き、反った陽物が漏らす先走りが、トレイのそれに艶をかける。
肉欲のまま名無しを攻め穿つと言わんばかりにいきり勃っていた竿は、怒張した本体の先が巧妙に曲線を描き、彼女の挿入欲を無意識に誘っていた。
名無しは再びずれた眼鏡を定位置に戻すトレイを見て、レンズ越しに重ねる視線をもどかしく感じつつ、同時に恐怖を覚える。
入念な愛撫で自身を愛でてくれた、甘い眼差しをしていた筈の彼は今いずこか……そう思うほど欲望に囚われ、上唇を舐めるトレイの仕草は、やけに痛く刺さった。
「トレ……イ…止めて……こんな、続いたら……わたし…ッ」
「ん…?どうなる……?ジェイドの言うとおり、おかしくなっちゃう……か?フッ」
「……ッ、トレイ……!」
「なればいいんじゃないか……なれよ。俺はそんなお前が見たいんだしな……。ほら…見せてみろよ、名無し」
「っ……」
恋人でも抱いていたような胸をトクンと打つ、甘く儚い囁きも、もう口にしてはくれない。
告げられたのは直接的な「抱く」というほぼ一言に、前戯のときよりも淫猥だった言葉ばかりだ。
形容に誤差はあれど、彼の言葉の隅々からは、様々な気持ちが滲み溢れていた。
本当にもう後にも戻れず、トレイが自身の中にあるものをぶちまけたくてどうしようもない……そんな状態であることを強く示唆している。
名無しはそのとき、自分がこれからのち、トレイとの関係を続けたいと淡く思ったように、彼も同様にその意思をかためているのだと感じていた。
「あ……っ――」
もう、ジェイドだけのものではいられなくなる……。
けれどそう思いつつ彼女の胸に走ったのは、どうにもならない歓喜と高揚だった。
「あ……ぁ…ッ……!!ひ…」
ときに挿入の際、受け入れる準備は双方、十二分にできていた。
まあ、相当のことをしておいて、出来ていない方がこの場合は不自然だったのだけれど……。
その筈なのに、名無しは自然とベッドで身体を後退させており、その上肢はジェイドに押さえつけられる形でトレイと繋がりを作っていた。
そして彼がなかに挿入って来てしまえば、名無しは身体に駆ける快楽に、嬌声を響かさずにはいられなかった。
「ひ、ゃ……ッ…」
初めて迎えたトレイとの繋がり、その律動。
彼のことを初見直後、爽やかだと少しでも感じた自分がなんだか馬鹿らしく思えた。
そんな印象などは交わることでいとも簡単に崩れたし、トレイが獰猛な雄であることを、身を以って分からされる。
「――は、ぁ……」
悲鳴を上げつつ、それでも下半身は嫌というほど気持ちが好かった。
名無しは身体と言葉でなじられる度になおもまだ甘露を孕ませ、漏らし、トレイの竿にその粘膜で、自らの意思とは関係なくまとわりついてゆく。
ランダムな蠢きにトレイが上擦った吐息と声を奏でれば、臍の内側の疼きは顕著だったし、膣の奥まで届く快感にも自ずと身悶えた。
「…ふふ……トレイさん、随分持つんですね…?そんなに激しくしたら、僕なんて一瞬かもしれません……久々であれば尚更」
「ッ……フッ…、冗談はよせ……それより、俺はもう遠慮はしてないが……君はいいのか?」
「ええ……とても興奮していますが……今日は貴方のあとでじゅうぶんです。それに……口ならもうひとつありますから」
「!……ハ……その顔。……まるで何処ぞの……悪党のようだな…」
名無しの視界に広がるトレイの自分を犯す姿は、とても艶めかしく、そしてとても淫靡だった。
割れた腹筋の目視できる線に浮かぶ陰影がやけにいやらしくて、滲む汗はひどく甘美な汁に思えた。
そこから感じた既視感は、似て非なるもの……つややかで隆々と自分を屈服させようとする、そのなりが彼女には一瞬、ジェイドのように見えた。
顔も、背格好も、息遣いも。
自分の愛し方もまるで違うというのに。
ただの粒ほどにしか感じなかった恋情が急激に押し寄せて、それが名無しの身体をどこまでも扇情的に仕立ててゆく……。
「あ……んァ…、……!ジェイド……ッ」
「口ならもうひとつ。此処に……ね?名無し……少しだけ僕のを可愛がってあげてください?」
「ッ……!!あ…んぐ……ッ」
ジェイドはいまだ名無しの上肢を拘束し、時々肌を卑猥に撫で回しているだけだった。
ここに本人が居るのというのに……。
トレイをジェイドに見紛うほど、初めて交わるにしては、トレイとのセックスは名無しにとって、あまりにも好みが過ぎていた。
激しい打ち付けも、時々腰をグラインドして、膣の中を捩り弄ぶその仕草も、実際全てジェイドもよくしてくれる。
こんなことをされれば、名無しがトレイを拒む理由なんてなにひとつなかった。
きっと、初めてにして自分が完堕ちすることが確実に分かっていなければ、ジェイドも彼を誘わなかったであろう。
いつまでも踊らされる。
彼の手の内で―――。
自分がジェイドに依存しきっていることすら利用して、溺死寸前まで追いつめられる。
トレイから再びジェイドに目を向けた名無しだったけれど、自分が確かに見た筈の穏和な眼差しを向ける彼は、そこにはもう既に居なかったことを、その目で理解した。
「――ッ……」
そして、そんな強かで鋭い視線、まるで性の奴隷でも見下ろすかの様なジェイドにさえ、相変わらず胸躍らせ恋慕する。
どちらも好きで好きで仕方のない、愛しい彼の表情だったから……。
「ん…ぐ、……ッ――」
名無しは、股を広げていた正常位を四つん這いに改められていた。
ぐちゅぐちゅに潤んだその陰部ではトレイを。
唾液に塗れた熱を持つ咥内では、自ら悦んで、ジェイドを受け入れた。
――――。
「んぐ……は、ぁ……ちゅ…、ッふ、ぅ……」
口いっぱいに含んだジェイドのそれは、名無しが杞憂のひとつ抱く間もなく、強く怒張していた。
この行為で、もしも最後まで与えられなかったらどうしよう……そう一瞬不安が過ぎらなくもなかったのは、あまりにジェイドがトレイのことを尊重していたからだ。
その思惑は本当に計り知れないし、ジェイドの気持ちなんて、一生知ることは名無しには無理かもしれない。
が、こうやって実際触れる度、大丈夫だと納得もしてしまう。
それがどんなに危険なことか分かっていても、与えられれば、心はどこか満たされた。
「っ……君は何手まで先を読めるんだ…?ジェイド……ン…ッ」
「僕が手を……ですか?まさか……アズールじゃああるまいし……、僕は一手先の未来すら読んだことなど……」
「、…ッ……とぼけるのも上手いな…フッ……」
「ふふふ……ああ、でも……トレイさんが描いてらっしゃるものは…何となくわかりますよ?」
「、なに……?」
「ふふ。ん……ですから僕のこれは、本当にほんの少しでいいんですよ……今この瞬間も気持ち好いですし、この続きは、またあとで結構なんです」
「!……食えないヤツだよ……君は本当に…、ン……あ…ッ」
ふと、ジェイドとの会話には思うところがあった。
彼が口淫を望んだことは理解できる。
が、同時にこちらが体位まで無理やり変えると、それに満足そうに目を細め、露骨に口角を上げたことにトレイは驚いていた。
普段から名無しをバックで突くことに楽しみでも見出していたのだろうか……いや、きっとまた別の理由があるのだろう。
ジェイドの性格を思えば名無しのことは相当可愛がっている筈だし、凌辱しながらも彼女を尊重する気があるのなら、あまり自分から四つん這いは強要しないと思った。
「……」
トレイがこのとき、ジェイドと名無しの交わりで想像していたのは、ジェイドが腫れものを扱うかのように名無しを抱き締め、正面から激しく愛でるようなそれだった。
挿入と律動のさなか、手や口を使って身体を愛するなんてきっとざらであろう。
では、ジェイドと差別化し、他に自分が彼女にできることは……。
「!」
「名無し……?トレイさんは、貴方の声を沢山聞きながら出したいそうですよ?僕も聞きたいです……めちゃくちゃに喘ぐ、可愛い貴方の声を」
「ッ……んん、っぐ……」
「ええ。ですから嬉しそうに僕のこれを頬張っているところ、残念ではありますが……。また彼だけに集中してくださいね」
「…っ……チュ…は、…!んむ……」
「ん……?自分から咥えさせておいて……ですか?ふふふ…、そうですね……でも、貴方もご自分で僕を迎えましたよね?嬉しそうに……」
トレイが結果選んでいたのは、家畜のように四肢で身体を支えさせ、ジェイドのものを含ませるそれだった。
仰向け、正常位のまましゃぶらせるより見た目に感じる背徳感は強かったし、何よりジェイドの名無しを見る目は相当嬉しそうに、トレイには感じられた。
四つん這いの女の身体が男に腰を掴まれ、激しく突かれて揺れ動く姿は至極艶めかしく見える。
勿論、それをするトレイから見る景色も最高のものだった。
「!!んん……ッ…、あ……ジェ、イ……、…ンッ…ちゅく……」
「チュ、…普段から貴方を可愛がる僕が我慢をするのは簡単です。……けれど四つん這いでトレイさんに攻められる貴方を、ここから眺めたくなった衝動だけは抑えられませんでした」
そして正面とて、それは同じなのだろう……。
ジェイドから見える名無しは相当に卑猥だっただろうし、トレイは一瞬、自分もそこから彼女を目にしたいとも密やかに思っていた。
「ジェイド……!!は、ぁ…ッ、トレ……トレイ…ッ?!」
「ん……、俺も興奮したよ……俺に突かれながら、ジェイドのを咥えてるお前……、気付いてただろう?ぐっしょり濡れたお前のナカで、これが何度もひくついてたことくらい……」
「ッ……」
ジェイドの言葉に嘘はなかった。
ほんの少し、その余興とばかりに自分のものを咥える名無しをその角度から目に出来れば、一旦は満足できたらしい。
変わらず彼の怒張も体積と強度を誇っていたし、おさまるとすれば、膣にでも放り込んで射精するほかなかっただろう。
が、ジェイドがそれをするのはまだ暫くはあとのことだ。
今はどうしたって、トレイが名無しの陰部を離さなかったのだから。
「ま…っ……いや、…だって激し…、……トレイ!――あ……っ」
背後から突かれていた名無しの髪はまた乱れ、後ろ髪が顔にかかっているように見えた。
ジェイドはそれを今まさに見ていたのだと思うと、トレイの気持ちをほんの僅かに澱ませる。
長い指先をなめらかに動かし、その掃ってやる仕草は、二人の関係性をやけに強く物語っている気がした。
ただのセックスフレンドだろうに……。
もう抱かないと決めた筈の妬ける気持ちが、会ったばかりだというのに、どこまでもトレイの業を深めてゆく。
「や……ッ…」
ジェイドが一寸の口淫と名無しの仕草に一部満たされると、いよいよトレイはまた悋気を殺し、自身の解放に向け、改めて気持ちを切り替えていた。
名残惜しそうに口腔での抽送を絶たれた名無しをジェイドから引き剥がせば、トレイは再び彼女の身体を組み敷いた。
「名無し……――」
「っ……」
自分に出来るジェイドとは違う、彼がしないような抱き方……。
考える間もなく直感で思ったのは、結局似たようなものかもしれない。
が、トレイにも名無しを愛でたいという強い意思はとっくにあった。
欲望に掲げた白旗、ゆえにもう、優しくなんてできそうもない。
それでもただの雄として、獣に成り下がるわけにもいかない。
だから――。
「ト……ッ…!いや…ッ」
「フッ……激しいのが好きでどうしようもないくせに……。お前はそうやって…ずっと嫌がる素振りをして、裏では壊されるのを待って……、はは……言葉もないな」
「!!ひ、ゃ……ああッ…、ット……だめ…ら…!んぁッ」
「そうそう……まだ嫌がれるだろう……ん…?お前の、……一番奥に俺のをぶつけて。…一番深いところをもっと…グチョグチョにしてやるか、ら…ッあ……!んぁ…名無し……」
穢くて、酷い言葉を投げる度に膣全体が何度も窄まる。
まるでひとつの生き物に噛みちぎられるのではないかと、冗談さえ零したくなるほどに陽物を絡めとる名無しの陰部は、トレイが囁く度にぐちゅぐちゅと水音を増していた。
トレイが選んだのは、名無しを再び仰向けに寝かせることではあった。
が、ただの正常位じゃ面白くないと思った。
自分だって彼女のもっと奥……更に奥を犯したかったし、そうするためにはこれが最良だろうと、自然に体勢を整えてみせる。
「いや……お、く……ッ…そこだめ……トレイ…」
「…あたってるんだろう?ハ……ほら、浮いて見えてるぞ……腹のなか。俺のが動いて…ッ……いやらしい…」
「あ…ひ、ぁ……ッ、ゃ……!ああ…」
汗を掻いた身体にべたつくシーツが、上肢を捩じらせたときに少しだけ無理やり引っ張られる。
背中を浮かされると名無しは右足を奪われ、トレイの左肩にそれを乗り上げさせられた。
側面に寄ったその体位は、名無しに通常時よりも開脚を余儀なくさせ、膣中の陽物の存在を大きく意識付ける。
同様に陰部も、その連結をより根深いものとして認識させていた。
「―――…ッ」
グリグリと奥を犯され、同時に突き穿たれる感覚はどうしようもないほどに快感だった。
それを認めるまで名無しは否定的な嬌声で意地を張る。
たとえ一言でも……葛藤に負けて肯定するその瞬間まではひたすら、トレイの心無い言葉で嬲られ続けた。
「ト……レ…も、動かな……こんな…!!アぁ……ふ、…んッ」
「ここの内側かな……ん…?ン……ちょうど俺の先っぽが当たる瞬間、入り口がきゅうきゅうして、めちゃくちゃ気持ち好い……あッ……お前…わざとか?」
「ッ…!!ちがう……そんなのできな、い…あっ……、奥…おくッ……と、れぃ…」
「ジェイドの言うとおりだな……そそられるよ、本当に。……そうやってやめてって拒まれる度に…、ん……ッもっと壊したくなる……名無し…好きだ」
「!いッ……、はぁ……んあ…ッ――」
トレイにとっても、今のその体勢は正常位と殆ど変わりはない……どころか、挿入と律動にも支障はなかったし、むしろやりやすかった。
名無しだけが身を捩ることで奥深くを突けたし、軸が両膝だけだった分、彼の手は自由の身にあった。
律動と同時、唇をあてがえる場所は肩に乗せていた生白い脚部くらいだ。
けれど膝から下にも性感帯があると見ていた分、トレイが少し口付ければ、名無しはきゃんきゃんと啼き喚いていた。
「ふふ……」
そんな一方、ジェイドは強要した口淫を終わらせ、自身にねっとりとまとわりついていた名無しの唾液を指で掬い、いやらしく舐めとっている。
立膝に腕を置きながら、ベッドの端でただ二人を眺めていた。
変わらず口元が歓んでいるように見えたのは、彼にとって、目の前で乱れる二人が相当面白かったのだろう。
自分以外の男に抱かれ、乱れ狂う名無し。
自分の女を犯し、悦の表情と穢い言葉を漏らすトレイ。
愉悦や逸楽以外に形容があるならば、ジェイドは辞書でも引きたい気分だった。
「や……助…す……んっ…!こんな……無理…、ジェイド……ッ」
「!――…最高の景色ですよ、名無し。折角ですし、一度おもいきり壊されてみてはいかがでしょう?心配しなくても、僕ならちゃんと……あとで差し上げますから」
「そんな……ッ…!ひぃ……ッ、あ…、ハ……ぁ…んん!ト…レ……」
細む目の中、それぞれの光彩が煌びやかに明暗を描き、まるでジェイドの心情を表現している。
まさにいま交わっている二人には彼の思考は読めなかった……が、自分たちを見て楽しんでいることだけは不思議と伝わった。
下半身を支配され、身体の中で沸き蠢く刺激にただただ耐える。
そんな名無しが上を見れば、そこにはまだジェイドが居る。
思わず救いを乞えば、彼はまるで見放すような返答を浴びせ、名無しの心を容赦なく打ち砕いた。
もっとも、トレイが終われば、ジェイドもちゃんと彼女を抱く気でいるというのに……。
その事実をはっきりと口にしていようとも楽しみが薄れ、認識を誤るほどトレイの烈は凄惨、強烈で、あまりにも狂気じみているように感じられた。
名無しに絶望を齎すほどの快楽は、ひたすらトレイによって全身を駆け巡っていた。
「あ……んぁ!…、ッお……ぅ……ンン…」
解放して欲しい。
抜いて欲しい。
耐えられなくなって、いよいよ膣が馬鹿になる。
とろけ落ちるなどと言ったような可愛い比喩の域なんて、もうとっくに越えている。
「ト……ッ」
やがて享楽に狂い荒び、絶頂の海に沈む感覚にさえ苛まれる。
秘部を愛されていた名無しはとうとう、涙声で途切れ途切れ、トレイに懇願していた。
勿論、それをトレイが聞くかどうかは、また別の話だ―――。
「いや…イヤ……イヤら…って、ば……、トレイ……抜いて…っ!も…むり……おねがいします…」
「……フゥン…?いいさ……じゃあ抜くぞ?ん…」
「!!あ……ッ、あ…」
「フッ……。お前……いま俺のにじっとりとまとわりついて……ひょっとして中イキしかけてたんじゃないのか?」
「…ッ……」
「それをみすみす逃すんだな……?自分から。ハハ……」
それは決死とも言えよう懇願が、塵芥に消えた瞬間だった。
トレイもまた、ジェイドのように違う形で名無しを突き放す……。
眼鏡の奥では澱みに拍車がかかっており、歪んだ片眉と口角に一瞬見せた舌先が、彼の表情をただの悪に染めていた。
突如として降らされた言葉に名無しがそれを失って、丸めた目でトレイを見上げれば、自分のすべてを見透かされているように感じるのも当然だろう。
そこに抱くは、再び既視感である。
まるでいつものジェイドのような……欲望に圧され更に豹変した、トレイの強かな姿があった。
「!………ッ、…」
「ほーら……黙ってちゃ分からないな……。まあどっちでもいいか…これは全部抜いて、俺はひとり自分の部屋に帰って、オナニーでもすればいいしな……チュ、…フフ」
「ッ……、……いや…!抜くの、らめ……だ、め…――」
「――……じゃあどうして欲しいんだ?そのお口でちゃーんと聞かせろ。おれ……、…俺たち二人に分かるように。……な?名無し…」
「…っ……あ…」
悪に塗り潰される。
欲望に屈す。
たったその一言で馬鹿みたく踊らされる。
嫌なのに、本当に苦しいのに、抗えない身体が最後に欲しがるのは、結局快楽ということだ。
トレイが意地悪く漏らした言葉は、名無しの数秒先の未来をいとも簡単に右往左往とさせた。
「…は、ぁ……ッ」
「名無し」
限界が近いのはお互いさま……むしろ自分以上であろう、トレイが実際抜くなんて事実はきっとありえない筈だ。
それでも名無しは、その一瞬で万が一を怖がった。
今という時間、刹那の判断ミスによって、快楽をもう味わえなくなるかもしれない。
そういう考えが過ぎったことの方が、彼女にはどうしても耐え難かった。
「ッ……」
「名無し」
「ふ…ッ……、抜か…ないで…もっと……。さっきの、もっとして…?トレイ……ッ」
「ん…ッ……」
「!!ア…あ……ッ」
「は……いい子だ……きっとジェイドの躾がいいんだろうな…随分素直じゃないか」
どこまで見抜かれても。
恥じらっても。
陰部はだらだらと涎を垂らして咽び悦ぶように、ただトレイの肉を欲しがっている。
太ましい怒張にからみつき、離さないと言わんばかりに蠢くのは、自身のやわらかなメスの筒。
名無しはか細い声音を紡ぎ不抜を訴えながら、トレイのそれを食み続けた。
同時に彼女が儚く伸ばした手は、トレイの同じ部位によって、宙で打ち落とされていた。
「あ…っ……ふ、ぁ…」
「そんなに気持ち好くなくなるのがイヤなんてな……なぁ、素直なお利口さん?フッ、はは……」
「ト……もっと…おく……おくきて…!とんとんッ、……って…ずん、ずん…ッて……ハァ…」
「んッ……は…おいおい…。奥はダメなんじゃなかったのか?ん……?」
「いやじゃない……好い、の…ッほんとは………!ん、トレイの……きもちいい…おおきくて、すき……」
どんなに激しい打ち付けでも、伸ばした手を繋ぎ合うことくらいは許されると思った。
快感にまみれて、頭のなかに花が咲いてしまっていた名無しに浮かんだトレイへの愛情表現が、唯一それだったからだ。
自分の傍、少し目を向ければそこにはジェイドがいる……。
楽しそうに交わりを見ている彼が今更、他の男に腕を伸ばす所作ひとつで不機嫌になるなんてありえないと思ったし、だから意を決して、手の中のぬくもりを求めてみたのだ。
が、そんなトレイにただ愛されたいという麻痺した気持ちは、目前の本人には届かなかった。
腕を弾かれ、浮かばれずに残った虚しさにどうすればいいか戸惑っていたけれど、その瞬間に名無しの想いを持ち直させたのもまた、奇しくもそれを拒んだトレイだった。
「すき……トレイ…と、……れ…ッ」
「!――ハハ……そう…――じゃあ…もう達っていいか…?お前の顔に出したい……名無し…」
彼が名無しの手を掃ったのは、繋ぐことを避けたかったからというわけではなかった。
射精欲に対し、限界を迎えていた自分にとってのいま、一番に優先すべきもの……。
ほどよく肉厚な彼女の足を強く抱き締め、ピークまで最奥に居続けながら攻め抜くという、確かに見定めたひとつの目的。
原因は、それらがトレイの胸中に孕んだことがすべてだった。
「…!!ひ……んっ、ン……それ!トレ、…ィあ……ッ」
「――、あ…ッは……んあ…っ」
勿論、そんなことをわざわざ口にはしないし、言っていられる余裕なんてない。
ただ汗を散らし、無心に腰を振るうまでだ。
ぎちぎち、ねちねちと唸る自分たちの交わる部位に、トレイは卑猥な言葉を織り交ぜる。
その裏で終着に向け、彼女への気持ちを作るだけだった。
自分も、そして名無しも、一番望む至高のものを共に味わうために――。
「ひ、ぃ……ァ…おく……!あたる…クリ……も…イイ、っ……トレイのかたい……ッ!アっ、ぁ……」
「ああ分かるよ……先がお前のナカで引っ掛か、っ…て……、やば…っ気持ち好い…ッ、くそ……ァ、擦れて…気持ち好い……ッ名無し…!名無し……ッ」
「ッ……トレ…ッ、ぃ――」
「はぁ……出したい…出したい名無しッ…!ほらジェイドが見てるぞ……お前のコト、いやらしい目で……俺もッ…イク…ん……あァ出る…名無しっ――」
撥ね退けられた名無しの手は、その勢いと重力のまま、シーツにぽふりと音を立て落ちていた。
広がった両手はトレイから見える、腋の陰に滲む汗と窪みがまたいやらしい。
射精の段階をピークに向け、より押し上げていた。
名無しが拒まれたとそう一瞬感じるも、それならトレイは自分を抱かないという見解で、都合よく胸のざわつきはおさまった。
秒の如く誤解がすぐに晴れたのは、トレイの獣のような強くいやらしい視線に、肩に担ぐ自身の足を、愛おしそうにぎゅっと抱き締めてくれたのも手伝っていたからだろう。
腿に五指を喰い込まされ、何度も何度も、轟々と律動を意識させられる。
引き寄せられた感触も夢心地、ダイレクトに互いの性感帯を扇り合った。
「―――……!あ…ッ……」
「……ふふふ…」
「ッ……――」
名無しがその後つかもうとしたのは、同じく寝かせていたシーツの生地だ。
が、激しさのあまり持ち損じたのち、そのときふと手中に感じたのは、ジェイドのぬくもりだった。
二人の様子を舐めるように見つめていた彼が、名無しの膣中の絶頂も読んでいた結果だろう。
何かにつかまって喉を枯らすほど啼き乱れる姿だって、ジェイドはもう、何度と見てきているのだから……。
彼に今この瞬間、介入する気はまったくなかった。
けれど思わず手を伸ばしていたジェイドもまた、その淫らな名無しの様子に微笑んでいた。
「!イク……ッ、トレイ……んぁ……そこ…、そ……ッ!!あ…いくイく……――ッ」
「っぐ……あ、ん…ぐ!あァ……名無し…ァ、あ…―――ッ」
そしてトレイの前後する腰の動きが速さを増して、体液が宙に弾ける。
互いの肌がぶつかる卑猥な音が、ベッドの軋みと折り重なる。
脹脛にじっとりキスをして、踝や足指にもしゃぶりつき、指間に舌をあてがいながら乱す彼の呼吸は、その部屋に着いてから群を抜いていやらしかった。
名無しも兆しを感じて、来る、来る……と、焦慮や快感に身を火照らせる。
トレイの先端が最奥を弄ぶ事実に耐えられなくなれば、名無しはジェイドの手を強く握り締め、再び左右に首を振って、「それ」を迎えていた。
やがて膣中でぶるぶると震えたトレイの肉は、名無しの脳内が真っ白になったと同時、漸く抜かれた。
「――ん……ッ…ハぁ…ッ……」
自分が巣のうちに溜めていたものは、膿か何かだろうか。
そんな想像するに堪えない稚拙な形容が浮かぶほど馬鹿になった頭……。
射精した瞬間は文字通り、トレイもまた、ひどい放心状態にあった―――。
「ッ……ィ…ド…、……?おこ……ジェイド……」
「いえ……怒ってなど。むしろ……だって貴方はもう既に、僕とトレイさんのものですから」
「……!あ、ぁ……なに…、待っ……?!」
普段どんなに激しい時間を過ごしても、呼吸は数十秒もあれば元に戻せた。
体力だってないわけじゃなかったし、むしろ、それなりに持久力があるからこそ、ジェイドの相手をすることができていた。
その筈の名無しの息がいまだに戻らないのは、二乗に渡るセックスの所為だろうか。
厳密に言ってしまえばまだ愛撫だけの段階でも、同時に二人の雄に抱かれるということがどれだけ過酷か……身体で分からされた気がした。
「……ッ――」
高潮が引き、真っ白になった名無しの脳内に再び色が戻ると、それでもトレイは余韻を楽しむべく、彼女の陰部にキスをする。
ジェイドも同様で、絶頂の瞬間こそ激しく身体を舐っていたけれど、終わったところで舌をすぐに離すことはなかった。
甘いため息に甘い囁き。
ピークが過ぎて、浮かべる恍惚。
そしてまた数十秒が過ぎ、やっと二人の唇が身体から離されたと思った頃には、名無しの目元にはジェイドの手が触れていた。
「ジェイド……?」
「お迎えして差し上げなさい、名無し……。ぐっしょりと濡れた……貴方ので、彼を…」
「ん!……眩…し……ッ―――?!ジェ、イ……!!トレイ……ッ――!」
耳は既に、二人のいやらしいテノールと卑猥な水音で麻痺していた。
だから名無しはいちいち今、どちらがどんな音を立てて何をしようとしているかなど、とろけた気持ちと脳で理解しようとはしなかったし、できなかった。
そんななか唯一、シーツがカサカサと擦れる音だけは普通に聞き取れた。
けれどそれができたところで、彼女には得も損もないのだ。
たとえ似た音が耳元間近で響いたところで、それがまさか、目隠しのネクタイを外されるという前兆の音色でも、名無しは一瞬気付けなかった。
性的興奮に思考を囚われ、鈍感だった名無しにそれを教えてくれたのは、消えた頭の締め付けと、まぶたを閉じたまま感じた、明るさや眩しさたるものだった。
「トレ……ッ――、ア…ぁ……」
「正直……自分でも驚いてるよ…名無し。会ったばかりで、まあ……散々お前の身体で遊んでおいて、俺に言えることでもないんだろうけどな……」
「ッ……―――」
ジェイドに気持ちをめぐらせつつ、眩しさを感じたばかりだった名無しは、まもなく目の前に黒い霧がかった世界を感じていた。
その瞬間、全身に漂っていた絶頂後の余韻が、新たな快楽を求め疼き始める。
ひくつきの静まらない陰部に変わらず居たのは、上肢を起こし、今度こそ欲望の渦に巣食われたトレイの姿だった。
ジェイドは、そんなトレイを彼女に見せるため目隠しを外しており、彼の透けて見えた目論見に名無しが身震いしたのは言うまでもなかった。
挿入の機を狙った視覚の解放は、いつ計画したのだろう……。
そんなことを思う間もなく、熟れた秘部に添えられたトレイの陽物は、溶け合う前から愛液と先走りが絡み合って、とても卑猥だった。
名無しの視線がトレイに移った瞬間、二人の微笑は闇を孕ませたものにかわっていた。
「お前を抱いて……それでお前がもしも傷つくようなら、別に俺が我慢すればいいことだった……あとで勝手に一人で抜くことくらい、いくらでもできるしな。…けど違うよな……」
「トレイ……あ…ッ、ハ…ァ……待」
「ジェイドに気を遣う必要もなさそうだし……――…めちゃくちゃに壊していいよな?お前のコト――」
名無しが感じた眩しさは、長らくジェイドのネクタイによって目元を覆われていれば妥当な反応だろう。
片方ずつゆっくりと開眼してゆくいかにもなリアクションも、ごくごく自然だった。
久しぶりに暗闇から解放されて、真上を向いた名無しがトレイのことよりも先に見たのは、再び自分に膝枕と同等のことをしてくれたジェイドだ。
視線が合うと、目元を細めてそっと微笑まれる……。
ジェイドに与えられる柔和なそれは、彼女にとって、とてもささやかな幸せのひとつだった。
「――待って……っあ、トレイ……ッ」
「待てない」
口では意地悪ばかり。
ベッドではいやらしい言葉をたっぷり使って、耳元で自分の弱いトコロばかりを攻めてくる。
いざというときには女性誰もが抱く、胸ときめくような願望だって容易くぱっと降らせてしまう。
焦らすのも上手ければ与えるのも得手で、非なんて打ちようもなかった。
名無しがジェイドとの関係をやめられないのはこれがあったからだったし、もとより、彼女には解消する気などそもそもなかった。
「!ト……、…ッ――…」
そんな名無しがジェイドに言われるがまま、今はいよいよトレイに抱かれようと、再び下肢を囚われている……。
嫌だと言えなかったのは嫌われたくなかったからだし、何よりジェイドが、それを望んでいた。
連れて来られたのは、偶々トレイという一人の男だったのかもしれない……。
けれど名無しの中で段々と芽生える感情は、自分でもどうしようもないほど堕落しきったものだった。
情が移るとか、そういう話じゃない。
本当に現金で馬鹿な女だと思う。
肌を触れ合わせることで、気持ちに変化があることは決して珍しいわけじゃない、と、その肌で強く感じさせられた気がした――。
「壊したい……お前を…ジェイドの見てる目の前でめちゃくちゃにしたい……名無し」
「――い……ゃ、ッ…あ……」
触れ合ってみて、触れられみて、愛されてみて、実際トレイが来てくれてよかったし、嬉しかった。
そうして声を上げてどんなに嫌がっても、漏れる嬌声でジェイドは名無しのすべてに気付くのだ。
二人に攻められる快楽を知って、三人で淫れることの、悦に溺れる楽園行をただただ望んでいるそれすら、簡単に見抜かれる。
そしてそれらを事実として悟ろうとも、ジェイドは名無しに笑むばかりで、どころか、一緒になって楽しんでくれる。
自分を嬲るトレイにやきもちひとつ妬かないところすら、悩ましいほどに慕情は募った。
「ト、レ……!!…あ……――ぁ……ッ」
「ハ……ぁ…フッ……挿入ったな…こんなあっさりと……ハハ…ッ。いやらしいからだろうな……お前も、お前のココも。――ん…っ締ま……」
「…ト……んァ…、あっ……いや!いや……」
「ハァ……いっぱい突くぞ……?名無し……俺のでお前のナカも、奥も……――お願いされても止めないからな…、あ……ァ…」
「―――、ひ……ッ!!」
こんなとき、とろとろに濡れた陰部を敢えてトレイに譲るあたりもまた、やけに意地らしく感じる。
同時に、そういうところが……とも。
恋慕に似た情を抱くジェイドに、トレイのことを好くようにも奸計をめぐらされ、そして堕とされる。
結局名無しは、その一瞬のうちに両方を、二人を求めるように仕立てられていた。
――――。
「フッ…、どうやら僕は、ここ最近のセックスで一番そそられているようです……いまの貴方のイヤイヤに。ふふ……まったくそうに見えないあたりなんて、どうにも卑猥でたまりません」
「あ……んぁ…ッ……」
「そんなに僕以外の男性に激しく突かれて……次はなんです?おかしくなっちゃう…ッ、……ですか?名無し」
「ッ……ジェ…!!ひぃ、ぁ……っ…」
「おやおや…ダメですよ……?ちゃんとトレイさんに集中して差し上げないと…ふふふ」
上を向き、反った陽物が漏らす先走りが、トレイのそれに艶をかける。
肉欲のまま名無しを攻め穿つと言わんばかりにいきり勃っていた竿は、怒張した本体の先が巧妙に曲線を描き、彼女の挿入欲を無意識に誘っていた。
名無しは再びずれた眼鏡を定位置に戻すトレイを見て、レンズ越しに重ねる視線をもどかしく感じつつ、同時に恐怖を覚える。
入念な愛撫で自身を愛でてくれた、甘い眼差しをしていた筈の彼は今いずこか……そう思うほど欲望に囚われ、上唇を舐めるトレイの仕草は、やけに痛く刺さった。
「トレ……イ…止めて……こんな、続いたら……わたし…ッ」
「ん…?どうなる……?ジェイドの言うとおり、おかしくなっちゃう……か?フッ」
「……ッ、トレイ……!」
「なればいいんじゃないか……なれよ。俺はそんなお前が見たいんだしな……。ほら…見せてみろよ、名無し」
「っ……」
恋人でも抱いていたような胸をトクンと打つ、甘く儚い囁きも、もう口にしてはくれない。
告げられたのは直接的な「抱く」というほぼ一言に、前戯のときよりも淫猥だった言葉ばかりだ。
形容に誤差はあれど、彼の言葉の隅々からは、様々な気持ちが滲み溢れていた。
本当にもう後にも戻れず、トレイが自身の中にあるものをぶちまけたくてどうしようもない……そんな状態であることを強く示唆している。
名無しはそのとき、自分がこれからのち、トレイとの関係を続けたいと淡く思ったように、彼も同様にその意思をかためているのだと感じていた。
「あ……っ――」
もう、ジェイドだけのものではいられなくなる……。
けれどそう思いつつ彼女の胸に走ったのは、どうにもならない歓喜と高揚だった。
「あ……ぁ…ッ……!!ひ…」
ときに挿入の際、受け入れる準備は双方、十二分にできていた。
まあ、相当のことをしておいて、出来ていない方がこの場合は不自然だったのだけれど……。
その筈なのに、名無しは自然とベッドで身体を後退させており、その上肢はジェイドに押さえつけられる形でトレイと繋がりを作っていた。
そして彼がなかに挿入って来てしまえば、名無しは身体に駆ける快楽に、嬌声を響かさずにはいられなかった。
「ひ、ゃ……ッ…」
初めて迎えたトレイとの繋がり、その律動。
彼のことを初見直後、爽やかだと少しでも感じた自分がなんだか馬鹿らしく思えた。
そんな印象などは交わることでいとも簡単に崩れたし、トレイが獰猛な雄であることを、身を以って分からされる。
「――は、ぁ……」
悲鳴を上げつつ、それでも下半身は嫌というほど気持ちが好かった。
名無しは身体と言葉でなじられる度になおもまだ甘露を孕ませ、漏らし、トレイの竿にその粘膜で、自らの意思とは関係なくまとわりついてゆく。
ランダムな蠢きにトレイが上擦った吐息と声を奏でれば、臍の内側の疼きは顕著だったし、膣の奥まで届く快感にも自ずと身悶えた。
「…ふふ……トレイさん、随分持つんですね…?そんなに激しくしたら、僕なんて一瞬かもしれません……久々であれば尚更」
「ッ……フッ…、冗談はよせ……それより、俺はもう遠慮はしてないが……君はいいのか?」
「ええ……とても興奮していますが……今日は貴方のあとでじゅうぶんです。それに……口ならもうひとつありますから」
「!……ハ……その顔。……まるで何処ぞの……悪党のようだな…」
名無しの視界に広がるトレイの自分を犯す姿は、とても艶めかしく、そしてとても淫靡だった。
割れた腹筋の目視できる線に浮かぶ陰影がやけにいやらしくて、滲む汗はひどく甘美な汁に思えた。
そこから感じた既視感は、似て非なるもの……つややかで隆々と自分を屈服させようとする、そのなりが彼女には一瞬、ジェイドのように見えた。
顔も、背格好も、息遣いも。
自分の愛し方もまるで違うというのに。
ただの粒ほどにしか感じなかった恋情が急激に押し寄せて、それが名無しの身体をどこまでも扇情的に仕立ててゆく……。
「あ……んァ…、……!ジェイド……ッ」
「口ならもうひとつ。此処に……ね?名無し……少しだけ僕のを可愛がってあげてください?」
「ッ……!!あ…んぐ……ッ」
ジェイドはいまだ名無しの上肢を拘束し、時々肌を卑猥に撫で回しているだけだった。
ここに本人が居るのというのに……。
トレイをジェイドに見紛うほど、初めて交わるにしては、トレイとのセックスは名無しにとって、あまりにも好みが過ぎていた。
激しい打ち付けも、時々腰をグラインドして、膣の中を捩り弄ぶその仕草も、実際全てジェイドもよくしてくれる。
こんなことをされれば、名無しがトレイを拒む理由なんてなにひとつなかった。
きっと、初めてにして自分が完堕ちすることが確実に分かっていなければ、ジェイドも彼を誘わなかったであろう。
いつまでも踊らされる。
彼の手の内で―――。
自分がジェイドに依存しきっていることすら利用して、溺死寸前まで追いつめられる。
トレイから再びジェイドに目を向けた名無しだったけれど、自分が確かに見た筈の穏和な眼差しを向ける彼は、そこにはもう既に居なかったことを、その目で理解した。
「――ッ……」
そして、そんな強かで鋭い視線、まるで性の奴隷でも見下ろすかの様なジェイドにさえ、相変わらず胸躍らせ恋慕する。
どちらも好きで好きで仕方のない、愛しい彼の表情だったから……。
「ん…ぐ、……ッ――」
名無しは、股を広げていた正常位を四つん這いに改められていた。
ぐちゅぐちゅに潤んだその陰部ではトレイを。
唾液に塗れた熱を持つ咥内では、自ら悦んで、ジェイドを受け入れた。
――――。
「んぐ……は、ぁ……ちゅ…、ッふ、ぅ……」
口いっぱいに含んだジェイドのそれは、名無しが杞憂のひとつ抱く間もなく、強く怒張していた。
この行為で、もしも最後まで与えられなかったらどうしよう……そう一瞬不安が過ぎらなくもなかったのは、あまりにジェイドがトレイのことを尊重していたからだ。
その思惑は本当に計り知れないし、ジェイドの気持ちなんて、一生知ることは名無しには無理かもしれない。
が、こうやって実際触れる度、大丈夫だと納得もしてしまう。
それがどんなに危険なことか分かっていても、与えられれば、心はどこか満たされた。
「っ……君は何手まで先を読めるんだ…?ジェイド……ン…ッ」
「僕が手を……ですか?まさか……アズールじゃああるまいし……、僕は一手先の未来すら読んだことなど……」
「、…ッ……とぼけるのも上手いな…フッ……」
「ふふふ……ああ、でも……トレイさんが描いてらっしゃるものは…何となくわかりますよ?」
「、なに……?」
「ふふ。ん……ですから僕のこれは、本当にほんの少しでいいんですよ……今この瞬間も気持ち好いですし、この続きは、またあとで結構なんです」
「!……食えないヤツだよ……君は本当に…、ン……あ…ッ」
ふと、ジェイドとの会話には思うところがあった。
彼が口淫を望んだことは理解できる。
が、同時にこちらが体位まで無理やり変えると、それに満足そうに目を細め、露骨に口角を上げたことにトレイは驚いていた。
普段から名無しをバックで突くことに楽しみでも見出していたのだろうか……いや、きっとまた別の理由があるのだろう。
ジェイドの性格を思えば名無しのことは相当可愛がっている筈だし、凌辱しながらも彼女を尊重する気があるのなら、あまり自分から四つん這いは強要しないと思った。
「……」
トレイがこのとき、ジェイドと名無しの交わりで想像していたのは、ジェイドが腫れものを扱うかのように名無しを抱き締め、正面から激しく愛でるようなそれだった。
挿入と律動のさなか、手や口を使って身体を愛するなんてきっとざらであろう。
では、ジェイドと差別化し、他に自分が彼女にできることは……。
「!」
「名無し……?トレイさんは、貴方の声を沢山聞きながら出したいそうですよ?僕も聞きたいです……めちゃくちゃに喘ぐ、可愛い貴方の声を」
「ッ……んん、っぐ……」
「ええ。ですから嬉しそうに僕のこれを頬張っているところ、残念ではありますが……。また彼だけに集中してくださいね」
「…っ……チュ…は、…!んむ……」
「ん……?自分から咥えさせておいて……ですか?ふふふ…、そうですね……でも、貴方もご自分で僕を迎えましたよね?嬉しそうに……」
トレイが結果選んでいたのは、家畜のように四肢で身体を支えさせ、ジェイドのものを含ませるそれだった。
仰向け、正常位のまましゃぶらせるより見た目に感じる背徳感は強かったし、何よりジェイドの名無しを見る目は相当嬉しそうに、トレイには感じられた。
四つん這いの女の身体が男に腰を掴まれ、激しく突かれて揺れ動く姿は至極艶めかしく見える。
勿論、それをするトレイから見る景色も最高のものだった。
「!!んん……ッ…、あ……ジェ、イ……、…ンッ…ちゅく……」
「チュ、…普段から貴方を可愛がる僕が我慢をするのは簡単です。……けれど四つん這いでトレイさんに攻められる貴方を、ここから眺めたくなった衝動だけは抑えられませんでした」
そして正面とて、それは同じなのだろう……。
ジェイドから見える名無しは相当に卑猥だっただろうし、トレイは一瞬、自分もそこから彼女を目にしたいとも密やかに思っていた。
「ジェイド……!!は、ぁ…ッ、トレ……トレイ…ッ?!」
「ん……、俺も興奮したよ……俺に突かれながら、ジェイドのを咥えてるお前……、気付いてただろう?ぐっしょり濡れたお前のナカで、これが何度もひくついてたことくらい……」
「ッ……」
ジェイドの言葉に嘘はなかった。
ほんの少し、その余興とばかりに自分のものを咥える名無しをその角度から目に出来れば、一旦は満足できたらしい。
変わらず彼の怒張も体積と強度を誇っていたし、おさまるとすれば、膣にでも放り込んで射精するほかなかっただろう。
が、ジェイドがそれをするのはまだ暫くはあとのことだ。
今はどうしたって、トレイが名無しの陰部を離さなかったのだから。
「ま…っ……いや、…だって激し…、……トレイ!――あ……っ」
背後から突かれていた名無しの髪はまた乱れ、後ろ髪が顔にかかっているように見えた。
ジェイドはそれを今まさに見ていたのだと思うと、トレイの気持ちをほんの僅かに澱ませる。
長い指先をなめらかに動かし、その掃ってやる仕草は、二人の関係性をやけに強く物語っている気がした。
ただのセックスフレンドだろうに……。
もう抱かないと決めた筈の妬ける気持ちが、会ったばかりだというのに、どこまでもトレイの業を深めてゆく。
「や……ッ…」
ジェイドが一寸の口淫と名無しの仕草に一部満たされると、いよいよトレイはまた悋気を殺し、自身の解放に向け、改めて気持ちを切り替えていた。
名残惜しそうに口腔での抽送を絶たれた名無しをジェイドから引き剥がせば、トレイは再び彼女の身体を組み敷いた。
「名無し……――」
「っ……」
自分に出来るジェイドとは違う、彼がしないような抱き方……。
考える間もなく直感で思ったのは、結局似たようなものかもしれない。
が、トレイにも名無しを愛でたいという強い意思はとっくにあった。
欲望に掲げた白旗、ゆえにもう、優しくなんてできそうもない。
それでもただの雄として、獣に成り下がるわけにもいかない。
だから――。
「ト……ッ…!いや…ッ」
「フッ……激しいのが好きでどうしようもないくせに……。お前はそうやって…ずっと嫌がる素振りをして、裏では壊されるのを待って……、はは……言葉もないな」
「!!ひ、ゃ……ああッ…、ット……だめ…ら…!んぁッ」
「そうそう……まだ嫌がれるだろう……ん…?お前の、……一番奥に俺のをぶつけて。…一番深いところをもっと…グチョグチョにしてやるか、ら…ッあ……!んぁ…名無し……」
穢くて、酷い言葉を投げる度に膣全体が何度も窄まる。
まるでひとつの生き物に噛みちぎられるのではないかと、冗談さえ零したくなるほどに陽物を絡めとる名無しの陰部は、トレイが囁く度にぐちゅぐちゅと水音を増していた。
トレイが選んだのは、名無しを再び仰向けに寝かせることではあった。
が、ただの正常位じゃ面白くないと思った。
自分だって彼女のもっと奥……更に奥を犯したかったし、そうするためにはこれが最良だろうと、自然に体勢を整えてみせる。
「いや……お、く……ッ…そこだめ……トレイ…」
「…あたってるんだろう?ハ……ほら、浮いて見えてるぞ……腹のなか。俺のが動いて…ッ……いやらしい…」
「あ…ひ、ぁ……ッ、ゃ……!ああ…」
汗を掻いた身体にべたつくシーツが、上肢を捩じらせたときに少しだけ無理やり引っ張られる。
背中を浮かされると名無しは右足を奪われ、トレイの左肩にそれを乗り上げさせられた。
側面に寄ったその体位は、名無しに通常時よりも開脚を余儀なくさせ、膣中の陽物の存在を大きく意識付ける。
同様に陰部も、その連結をより根深いものとして認識させていた。
「―――…ッ」
グリグリと奥を犯され、同時に突き穿たれる感覚はどうしようもないほどに快感だった。
それを認めるまで名無しは否定的な嬌声で意地を張る。
たとえ一言でも……葛藤に負けて肯定するその瞬間まではひたすら、トレイの心無い言葉で嬲られ続けた。
「ト……レ…も、動かな……こんな…!!アぁ……ふ、…んッ」
「ここの内側かな……ん…?ン……ちょうど俺の先っぽが当たる瞬間、入り口がきゅうきゅうして、めちゃくちゃ気持ち好い……あッ……お前…わざとか?」
「ッ…!!ちがう……そんなのできな、い…あっ……、奥…おくッ……と、れぃ…」
「ジェイドの言うとおりだな……そそられるよ、本当に。……そうやってやめてって拒まれる度に…、ん……ッもっと壊したくなる……名無し…好きだ」
「!いッ……、はぁ……んあ…ッ――」
トレイにとっても、今のその体勢は正常位と殆ど変わりはない……どころか、挿入と律動にも支障はなかったし、むしろやりやすかった。
名無しだけが身を捩ることで奥深くを突けたし、軸が両膝だけだった分、彼の手は自由の身にあった。
律動と同時、唇をあてがえる場所は肩に乗せていた生白い脚部くらいだ。
けれど膝から下にも性感帯があると見ていた分、トレイが少し口付ければ、名無しはきゃんきゃんと啼き喚いていた。
「ふふ……」
そんな一方、ジェイドは強要した口淫を終わらせ、自身にねっとりとまとわりついていた名無しの唾液を指で掬い、いやらしく舐めとっている。
立膝に腕を置きながら、ベッドの端でただ二人を眺めていた。
変わらず口元が歓んでいるように見えたのは、彼にとって、目の前で乱れる二人が相当面白かったのだろう。
自分以外の男に抱かれ、乱れ狂う名無し。
自分の女を犯し、悦の表情と穢い言葉を漏らすトレイ。
愉悦や逸楽以外に形容があるならば、ジェイドは辞書でも引きたい気分だった。
「や……助…す……んっ…!こんな……無理…、ジェイド……ッ」
「!――…最高の景色ですよ、名無し。折角ですし、一度おもいきり壊されてみてはいかがでしょう?心配しなくても、僕ならちゃんと……あとで差し上げますから」
「そんな……ッ…!ひぃ……ッ、あ…、ハ……ぁ…んん!ト…レ……」
細む目の中、それぞれの光彩が煌びやかに明暗を描き、まるでジェイドの心情を表現している。
まさにいま交わっている二人には彼の思考は読めなかった……が、自分たちを見て楽しんでいることだけは不思議と伝わった。
下半身を支配され、身体の中で沸き蠢く刺激にただただ耐える。
そんな名無しが上を見れば、そこにはまだジェイドが居る。
思わず救いを乞えば、彼はまるで見放すような返答を浴びせ、名無しの心を容赦なく打ち砕いた。
もっとも、トレイが終われば、ジェイドもちゃんと彼女を抱く気でいるというのに……。
その事実をはっきりと口にしていようとも楽しみが薄れ、認識を誤るほどトレイの烈は凄惨、強烈で、あまりにも狂気じみているように感じられた。
名無しに絶望を齎すほどの快楽は、ひたすらトレイによって全身を駆け巡っていた。
「あ……んぁ!…、ッお……ぅ……ンン…」
解放して欲しい。
抜いて欲しい。
耐えられなくなって、いよいよ膣が馬鹿になる。
とろけ落ちるなどと言ったような可愛い比喩の域なんて、もうとっくに越えている。
「ト……ッ」
やがて享楽に狂い荒び、絶頂の海に沈む感覚にさえ苛まれる。
秘部を愛されていた名無しはとうとう、涙声で途切れ途切れ、トレイに懇願していた。
勿論、それをトレイが聞くかどうかは、また別の話だ―――。
「いや…イヤ……イヤら…って、ば……、トレイ……抜いて…っ!も…むり……おねがいします…」
「……フゥン…?いいさ……じゃあ抜くぞ?ん…」
「!!あ……ッ、あ…」
「フッ……。お前……いま俺のにじっとりとまとわりついて……ひょっとして中イキしかけてたんじゃないのか?」
「…ッ……」
「それをみすみす逃すんだな……?自分から。ハハ……」
それは決死とも言えよう懇願が、塵芥に消えた瞬間だった。
トレイもまた、ジェイドのように違う形で名無しを突き放す……。
眼鏡の奥では澱みに拍車がかかっており、歪んだ片眉と口角に一瞬見せた舌先が、彼の表情をただの悪に染めていた。
突如として降らされた言葉に名無しがそれを失って、丸めた目でトレイを見上げれば、自分のすべてを見透かされているように感じるのも当然だろう。
そこに抱くは、再び既視感である。
まるでいつものジェイドのような……欲望に圧され更に豹変した、トレイの強かな姿があった。
「!………ッ、…」
「ほーら……黙ってちゃ分からないな……。まあどっちでもいいか…これは全部抜いて、俺はひとり自分の部屋に帰って、オナニーでもすればいいしな……チュ、…フフ」
「ッ……、……いや…!抜くの、らめ……だ、め…――」
「――……じゃあどうして欲しいんだ?そのお口でちゃーんと聞かせろ。おれ……、…俺たち二人に分かるように。……な?名無し…」
「…っ……あ…」
悪に塗り潰される。
欲望に屈す。
たったその一言で馬鹿みたく踊らされる。
嫌なのに、本当に苦しいのに、抗えない身体が最後に欲しがるのは、結局快楽ということだ。
トレイが意地悪く漏らした言葉は、名無しの数秒先の未来をいとも簡単に右往左往とさせた。
「…は、ぁ……ッ」
「名無し」
限界が近いのはお互いさま……むしろ自分以上であろう、トレイが実際抜くなんて事実はきっとありえない筈だ。
それでも名無しは、その一瞬で万が一を怖がった。
今という時間、刹那の判断ミスによって、快楽をもう味わえなくなるかもしれない。
そういう考えが過ぎったことの方が、彼女にはどうしても耐え難かった。
「ッ……」
「名無し」
「ふ…ッ……、抜か…ないで…もっと……。さっきの、もっとして…?トレイ……ッ」
「ん…ッ……」
「!!ア…あ……ッ」
「は……いい子だ……きっとジェイドの躾がいいんだろうな…随分素直じゃないか」
どこまで見抜かれても。
恥じらっても。
陰部はだらだらと涎を垂らして咽び悦ぶように、ただトレイの肉を欲しがっている。
太ましい怒張にからみつき、離さないと言わんばかりに蠢くのは、自身のやわらかなメスの筒。
名無しはか細い声音を紡ぎ不抜を訴えながら、トレイのそれを食み続けた。
同時に彼女が儚く伸ばした手は、トレイの同じ部位によって、宙で打ち落とされていた。
「あ…っ……ふ、ぁ…」
「そんなに気持ち好くなくなるのがイヤなんてな……なぁ、素直なお利口さん?フッ、はは……」
「ト……もっと…おく……おくきて…!とんとんッ、……って…ずん、ずん…ッて……ハァ…」
「んッ……は…おいおい…。奥はダメなんじゃなかったのか?ん……?」
「いやじゃない……好い、の…ッほんとは………!ん、トレイの……きもちいい…おおきくて、すき……」
どんなに激しい打ち付けでも、伸ばした手を繋ぎ合うことくらいは許されると思った。
快感にまみれて、頭のなかに花が咲いてしまっていた名無しに浮かんだトレイへの愛情表現が、唯一それだったからだ。
自分の傍、少し目を向ければそこにはジェイドがいる……。
楽しそうに交わりを見ている彼が今更、他の男に腕を伸ばす所作ひとつで不機嫌になるなんてありえないと思ったし、だから意を決して、手の中のぬくもりを求めてみたのだ。
が、そんなトレイにただ愛されたいという麻痺した気持ちは、目前の本人には届かなかった。
腕を弾かれ、浮かばれずに残った虚しさにどうすればいいか戸惑っていたけれど、その瞬間に名無しの想いを持ち直させたのもまた、奇しくもそれを拒んだトレイだった。
「すき……トレイ…と、……れ…ッ」
「!――ハハ……そう…――じゃあ…もう達っていいか…?お前の顔に出したい……名無し…」
彼が名無しの手を掃ったのは、繋ぐことを避けたかったからというわけではなかった。
射精欲に対し、限界を迎えていた自分にとってのいま、一番に優先すべきもの……。
ほどよく肉厚な彼女の足を強く抱き締め、ピークまで最奥に居続けながら攻め抜くという、確かに見定めたひとつの目的。
原因は、それらがトレイの胸中に孕んだことがすべてだった。
「…!!ひ……んっ、ン……それ!トレ、…ィあ……ッ」
「――、あ…ッは……んあ…っ」
勿論、そんなことをわざわざ口にはしないし、言っていられる余裕なんてない。
ただ汗を散らし、無心に腰を振るうまでだ。
ぎちぎち、ねちねちと唸る自分たちの交わる部位に、トレイは卑猥な言葉を織り交ぜる。
その裏で終着に向け、彼女への気持ちを作るだけだった。
自分も、そして名無しも、一番望む至高のものを共に味わうために――。
「ひ、ぃ……ァ…おく……!あたる…クリ……も…イイ、っ……トレイのかたい……ッ!アっ、ぁ……」
「ああ分かるよ……先がお前のナカで引っ掛か、っ…て……、やば…っ気持ち好い…ッ、くそ……ァ、擦れて…気持ち好い……ッ名無し…!名無し……ッ」
「ッ……トレ…ッ、ぃ――」
「はぁ……出したい…出したい名無しッ…!ほらジェイドが見てるぞ……お前のコト、いやらしい目で……俺もッ…イク…ん……あァ出る…名無しっ――」
撥ね退けられた名無しの手は、その勢いと重力のまま、シーツにぽふりと音を立て落ちていた。
広がった両手はトレイから見える、腋の陰に滲む汗と窪みがまたいやらしい。
射精の段階をピークに向け、より押し上げていた。
名無しが拒まれたとそう一瞬感じるも、それならトレイは自分を抱かないという見解で、都合よく胸のざわつきはおさまった。
秒の如く誤解がすぐに晴れたのは、トレイの獣のような強くいやらしい視線に、肩に担ぐ自身の足を、愛おしそうにぎゅっと抱き締めてくれたのも手伝っていたからだろう。
腿に五指を喰い込まされ、何度も何度も、轟々と律動を意識させられる。
引き寄せられた感触も夢心地、ダイレクトに互いの性感帯を扇り合った。
「―――……!あ…ッ……」
「……ふふふ…」
「ッ……――」
名無しがその後つかもうとしたのは、同じく寝かせていたシーツの生地だ。
が、激しさのあまり持ち損じたのち、そのときふと手中に感じたのは、ジェイドのぬくもりだった。
二人の様子を舐めるように見つめていた彼が、名無しの膣中の絶頂も読んでいた結果だろう。
何かにつかまって喉を枯らすほど啼き乱れる姿だって、ジェイドはもう、何度と見てきているのだから……。
彼に今この瞬間、介入する気はまったくなかった。
けれど思わず手を伸ばしていたジェイドもまた、その淫らな名無しの様子に微笑んでいた。
「!イク……ッ、トレイ……んぁ……そこ…、そ……ッ!!あ…いくイく……――ッ」
「っぐ……あ、ん…ぐ!あァ……名無し…ァ、あ…―――ッ」
そしてトレイの前後する腰の動きが速さを増して、体液が宙に弾ける。
互いの肌がぶつかる卑猥な音が、ベッドの軋みと折り重なる。
脹脛にじっとりキスをして、踝や足指にもしゃぶりつき、指間に舌をあてがいながら乱す彼の呼吸は、その部屋に着いてから群を抜いていやらしかった。
名無しも兆しを感じて、来る、来る……と、焦慮や快感に身を火照らせる。
トレイの先端が最奥を弄ぶ事実に耐えられなくなれば、名無しはジェイドの手を強く握り締め、再び左右に首を振って、「それ」を迎えていた。
やがて膣中でぶるぶると震えたトレイの肉は、名無しの脳内が真っ白になったと同時、漸く抜かれた。
「――ん……ッ…ハぁ…ッ……」
自分が巣のうちに溜めていたものは、膿か何かだろうか。
そんな想像するに堪えない稚拙な形容が浮かぶほど馬鹿になった頭……。
射精した瞬間は文字通り、トレイもまた、ひどい放心状態にあった―――。