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※生存院、26才くらい
「『選考結果のご通知…残念ながら、採用を見送ることとなりました』……………」
都内の公園のベンチで、リクルートスーツ姿で大きな溜息をつき、項垂れる。
生まれつきの能力があるせいで、私はいつもどこかで孤独を感じていた。
友達や両親とは良好な関係だけど、彼らは普通の人間だ。
「普通」の人たちは、私のこの能力を見ることもできないし、幼い頃に理解をしてもらおうと必死で説明しても、誰にも理解されなかった。
誰にも理解してもらえないことが続き、私は自分以外の人間に対して壁を作るようになった。
他者と深く関わることを拒んだ私は、就活なんて上手くいくわけがなかった。
結局私は普通の人間にはなれない出来損ないだと否定されているような気持ちになる。
自分の孤独で哀れな人生を思うと、ひどく感傷的な気分となり、涙が溢れてきた。
下を向くとリクルートスーツのスカートに涙が落ちる。
しばらくぽたぽたと涙を落とし、涙の跡ができたスカートを見ていると、目の前にスッとハンカチを差し出された。
何かと思って顔を上げると、どこか中性的な容姿をした美形の男の人が私にハンカチを差し出していた。
「これ、もしよかったら使ってください」
と言うと、お兄さんは私の隣に腰掛けた。
彼とは初めて会ったとは思えないような、奇妙な感覚がした。
上手く言えないが、すべてを理解してくれるような…そんな感じだ。
しかしいくら優しくしてくれたって、この人も所詮他人だ。
私の気持ちは永遠に理解してくれないだろう
。
そう思うと、また涙が溢れてくる。
また涙を流す私を見たお兄さんは少し慌てたような顔をして、メロンのような柄で囲まれたハンカチを広げる。
突然広げられたハンカチを、なんだろうと思って見つめた。
ハンカチにはでかでかと『泣き止んでください 花京院典明』と手書きで書かれていた。
しかもご丁寧に、お名前の上には読み仮名が書いてあった。
あまりのシュールさに吹き出してしまい、そのままゴホゴホとむせた。
お兄さん…花京院さんは私の背中を優しくさすると、その意味のわからないハンカチで私の涙をそっと拭ってくれた。
いつ文字を書いたんだろう。あとフルネームと読み仮名まで書いてあったのが面白すぎる。
美しい容姿からは想像できないシュールな面白さが私のツボに入ってしまい、途中から引き笑いになってしまった私を見て、花京院さんは「やっと笑ってくれた」と満足そうに笑う。
なんとか落ち着いて、「えっと…かきょういん、のりあきさん、ありがとうございます」とお礼を言うと、
「よかった。君は泣いているよりも笑っている顔の方が似合う」
とチェリーのようなピアスを揺らしながら私の顔を覗きこんだ。
長い前髪から覗くアメジスト色の瞳が神秘的で美しく、彼から目が離せなくなる。
私の視線に気づいたのか、その美しい瞳が細められたのを見て、慌てて顔を背ける。
「名前を教えてくれませんか?」
「なまえ、です…」
「なまえ、か……君とは何か縁を感じるな…またいつか、君と会えるような気がする」
と言うと、ベンチから腰を上げ、「ハンカチは返さなくていいよ」と言うと何処かへ去ってしまった。
あの人はなんだったんだろう。
人と話していてこんなに気持ちが明るくなったのは本当に久しぶりだった。
新手のナンパ?と思いつつも、真剣な瞳に見つめられて意味深な言葉を言われ、ドキドキしてしまっていたのも事実だ。
私はその後、彼のことで頭がいっぱいになってしまった。
ある日、デパートのお菓子コーナーを見ていると、さくらんぼを使ったお菓子が目に入った。
さくらんぼを見て、すぐに彼のことを思い浮かべる。
そういえば、花京院さんは男の人には珍しく、さくらんぼのピアスをしていたな。
好物なんだろうか。と思い、次に会える保証もないのに彼のためにそのお菓子を購入してしまっていた。
花京院さんと出会ったあの日と同じ公園の同じベンチに座ると、また会えるような気がする、という彼の言葉を思い出す。
なんだか私も、花京院さんとまた会えるような気がして、しばらくベンチに座っていることにした。
ベンチに座ったまま、膝にノートパソコンを置いて大学のレポートを書いていると、
「なまえ……?驚いたな。本当にまた会えた」
と頭の上から、待ちわびていた声が聞こえ、顔を上げた。
この前と違い、眼鏡をかけた花京院さんが私の前に立っていた。
眼鏡を掛けている方が、知的な彼な雰囲気に合っているような気がする。
かっこいいなあ、と頰が緩んでしまう。
「隣、座ってもいいかな」と私の隣を指を差すので、慌てて緩んだ頬を引き締め、「どうぞ」と隣の空間を叩いた。
「元気出た?顔色がこの前よりも良くなったね」と言って私の頬に手の甲を当てると、優しく微笑んだ。
距離が近くて恥ずかしくなり、赤くなっているであろう顔を隠すように鞄をゴソゴソと漁る。
「花京院さんのおかげです…あの、これ、もしよかったら…」
と先程買ったさくらんぼのお菓子を差し出すと、目を丸くしていた。
「僕の好物までわかるなんて、君はすごいな」
と言うと嬉しそうにお礼を言ってくれた。
花京院さんは不思議な人だ。
この前会ったばかりだとは思えないくらい、彼といると安心して落ち着ける。
知的な印象なのに、結構面白いことを言って、私を笑わせてくれる。
今まで人を拒絶して生きていたのに、彼と話していると自然と笑顔になれた。
どうしてなんだろう、こんな気持ちになるのは……
花京院さんとの会話を楽しみ、ふと前を見てみると、ボールを道路に蹴飛ばしてしまった子供が、ボールを追って道路に出てしまっている姿が見えた。
その先には、スピードを出して走るトラックの姿があり、ぞっとする。
すぐに立ち上がり、今まで極力出さないようにしていた能力を解放する。
子供を私の人型の能力で触れば、安全な場所へ瞬間移動できるはずだ。
しかし、私の能力の射程圏外だったらしく、子供のいる場所へはギリギリで届かなかった。
走って射程距離を縮めようとすると、緑色に光る何かが私を追い越した。
私を追い越した緑色の触手は、子供とボールを絡めとり、歩道までそっと下ろす。
頭が混乱し、何が起きたのか状況を理解できなかったが、とりあえず子供が無事だったことに安堵する。
その後すぐ、私と同じような「能力」を出すことができる人間がいたことに驚く。
子供を助けた触手を目線で辿っていくと、私の後ろへと繋がっているようだった。
まさか、と思い後ろを振り向くと、花京院さんの隣には緑色の、私と同じような能力が佇んでいた。
「これ、スタンド能力って言うんですよ」
花京院さんは私を再びベンチに座らせ、色々説明してくれた後に、エメラルド色に光る彼の能力を私に見せてくれた。
私はハイエロファントグリーンという名前の、彼のスタンドをまじまじと見る。
20数年間生きてきて、生まれて初めて私以外でスタンド能力と呼ばれるものを持っている人と出会った。
私はハッとあることに気がつく。
「もしかして、花京院さんと出会う予感がしたり、一緒にいると落ち着くのはこの能力のおかげなんですか?」
と聞くと、彼は少し驚いたような顔をした後、困ったように眉尻を下げて微笑んだ。
「僕は結構な人数のスタンド使いと出会っているが…今までそのようなことはなかったな」
正体を知らなくても引き合うことはあるけどね、と花京院さんは付け加える。
スタンド能力でないとしたら、どうして花京院さんとこんなに縁を感じるんだろう。
どうして彼のことがこんなに頭から離れないんだろう。
不思議に思って花京院さんの方をちらりと見ると、花京院さんは私の顔を真っ直ぐに見つめていた。
彼のアメジスト色の瞳から目を離せなくなる。
「僕が思うに、君と僕はーー……」
花京院さんは私の耳元に唇を寄せ、
「惹かれあっているんじゃないかな、お互いに」
と言って美しい顔でにっこりと微笑んだ。
**************
眼鏡院はただの私の趣味です。
肉の芽院がキャンバスやらハンカチやら操り人形を一生懸命準備してる姿を想像すると面白いし、彼かなりギャグ線高いですよね。
「『選考結果のご通知…残念ながら、採用を見送ることとなりました』……………」
都内の公園のベンチで、リクルートスーツ姿で大きな溜息をつき、項垂れる。
生まれつきの能力があるせいで、私はいつもどこかで孤独を感じていた。
友達や両親とは良好な関係だけど、彼らは普通の人間だ。
「普通」の人たちは、私のこの能力を見ることもできないし、幼い頃に理解をしてもらおうと必死で説明しても、誰にも理解されなかった。
誰にも理解してもらえないことが続き、私は自分以外の人間に対して壁を作るようになった。
他者と深く関わることを拒んだ私は、就活なんて上手くいくわけがなかった。
結局私は普通の人間にはなれない出来損ないだと否定されているような気持ちになる。
自分の孤独で哀れな人生を思うと、ひどく感傷的な気分となり、涙が溢れてきた。
下を向くとリクルートスーツのスカートに涙が落ちる。
しばらくぽたぽたと涙を落とし、涙の跡ができたスカートを見ていると、目の前にスッとハンカチを差し出された。
何かと思って顔を上げると、どこか中性的な容姿をした美形の男の人が私にハンカチを差し出していた。
「これ、もしよかったら使ってください」
と言うと、お兄さんは私の隣に腰掛けた。
彼とは初めて会ったとは思えないような、奇妙な感覚がした。
上手く言えないが、すべてを理解してくれるような…そんな感じだ。
しかしいくら優しくしてくれたって、この人も所詮他人だ。
私の気持ちは永遠に理解してくれないだろう
。
そう思うと、また涙が溢れてくる。
また涙を流す私を見たお兄さんは少し慌てたような顔をして、メロンのような柄で囲まれたハンカチを広げる。
突然広げられたハンカチを、なんだろうと思って見つめた。
ハンカチにはでかでかと『泣き止んでください 花京院典明』と手書きで書かれていた。
しかもご丁寧に、お名前の上には読み仮名が書いてあった。
あまりのシュールさに吹き出してしまい、そのままゴホゴホとむせた。
お兄さん…花京院さんは私の背中を優しくさすると、その意味のわからないハンカチで私の涙をそっと拭ってくれた。
いつ文字を書いたんだろう。あとフルネームと読み仮名まで書いてあったのが面白すぎる。
美しい容姿からは想像できないシュールな面白さが私のツボに入ってしまい、途中から引き笑いになってしまった私を見て、花京院さんは「やっと笑ってくれた」と満足そうに笑う。
なんとか落ち着いて、「えっと…かきょういん、のりあきさん、ありがとうございます」とお礼を言うと、
「よかった。君は泣いているよりも笑っている顔の方が似合う」
とチェリーのようなピアスを揺らしながら私の顔を覗きこんだ。
長い前髪から覗くアメジスト色の瞳が神秘的で美しく、彼から目が離せなくなる。
私の視線に気づいたのか、その美しい瞳が細められたのを見て、慌てて顔を背ける。
「名前を教えてくれませんか?」
「なまえ、です…」
「なまえ、か……君とは何か縁を感じるな…またいつか、君と会えるような気がする」
と言うと、ベンチから腰を上げ、「ハンカチは返さなくていいよ」と言うと何処かへ去ってしまった。
あの人はなんだったんだろう。
人と話していてこんなに気持ちが明るくなったのは本当に久しぶりだった。
新手のナンパ?と思いつつも、真剣な瞳に見つめられて意味深な言葉を言われ、ドキドキしてしまっていたのも事実だ。
私はその後、彼のことで頭がいっぱいになってしまった。
ある日、デパートのお菓子コーナーを見ていると、さくらんぼを使ったお菓子が目に入った。
さくらんぼを見て、すぐに彼のことを思い浮かべる。
そういえば、花京院さんは男の人には珍しく、さくらんぼのピアスをしていたな。
好物なんだろうか。と思い、次に会える保証もないのに彼のためにそのお菓子を購入してしまっていた。
花京院さんと出会ったあの日と同じ公園の同じベンチに座ると、また会えるような気がする、という彼の言葉を思い出す。
なんだか私も、花京院さんとまた会えるような気がして、しばらくベンチに座っていることにした。
ベンチに座ったまま、膝にノートパソコンを置いて大学のレポートを書いていると、
「なまえ……?驚いたな。本当にまた会えた」
と頭の上から、待ちわびていた声が聞こえ、顔を上げた。
この前と違い、眼鏡をかけた花京院さんが私の前に立っていた。
眼鏡を掛けている方が、知的な彼な雰囲気に合っているような気がする。
かっこいいなあ、と頰が緩んでしまう。
「隣、座ってもいいかな」と私の隣を指を差すので、慌てて緩んだ頬を引き締め、「どうぞ」と隣の空間を叩いた。
「元気出た?顔色がこの前よりも良くなったね」と言って私の頬に手の甲を当てると、優しく微笑んだ。
距離が近くて恥ずかしくなり、赤くなっているであろう顔を隠すように鞄をゴソゴソと漁る。
「花京院さんのおかげです…あの、これ、もしよかったら…」
と先程買ったさくらんぼのお菓子を差し出すと、目を丸くしていた。
「僕の好物までわかるなんて、君はすごいな」
と言うと嬉しそうにお礼を言ってくれた。
花京院さんは不思議な人だ。
この前会ったばかりだとは思えないくらい、彼といると安心して落ち着ける。
知的な印象なのに、結構面白いことを言って、私を笑わせてくれる。
今まで人を拒絶して生きていたのに、彼と話していると自然と笑顔になれた。
どうしてなんだろう、こんな気持ちになるのは……
花京院さんとの会話を楽しみ、ふと前を見てみると、ボールを道路に蹴飛ばしてしまった子供が、ボールを追って道路に出てしまっている姿が見えた。
その先には、スピードを出して走るトラックの姿があり、ぞっとする。
すぐに立ち上がり、今まで極力出さないようにしていた能力を解放する。
子供を私の人型の能力で触れば、安全な場所へ瞬間移動できるはずだ。
しかし、私の能力の射程圏外だったらしく、子供のいる場所へはギリギリで届かなかった。
走って射程距離を縮めようとすると、緑色に光る何かが私を追い越した。
私を追い越した緑色の触手は、子供とボールを絡めとり、歩道までそっと下ろす。
頭が混乱し、何が起きたのか状況を理解できなかったが、とりあえず子供が無事だったことに安堵する。
その後すぐ、私と同じような「能力」を出すことができる人間がいたことに驚く。
子供を助けた触手を目線で辿っていくと、私の後ろへと繋がっているようだった。
まさか、と思い後ろを振り向くと、花京院さんの隣には緑色の、私と同じような能力が佇んでいた。
「これ、スタンド能力って言うんですよ」
花京院さんは私を再びベンチに座らせ、色々説明してくれた後に、エメラルド色に光る彼の能力を私に見せてくれた。
私はハイエロファントグリーンという名前の、彼のスタンドをまじまじと見る。
20数年間生きてきて、生まれて初めて私以外でスタンド能力と呼ばれるものを持っている人と出会った。
私はハッとあることに気がつく。
「もしかして、花京院さんと出会う予感がしたり、一緒にいると落ち着くのはこの能力のおかげなんですか?」
と聞くと、彼は少し驚いたような顔をした後、困ったように眉尻を下げて微笑んだ。
「僕は結構な人数のスタンド使いと出会っているが…今までそのようなことはなかったな」
正体を知らなくても引き合うことはあるけどね、と花京院さんは付け加える。
スタンド能力でないとしたら、どうして花京院さんとこんなに縁を感じるんだろう。
どうして彼のことがこんなに頭から離れないんだろう。
不思議に思って花京院さんの方をちらりと見ると、花京院さんは私の顔を真っ直ぐに見つめていた。
彼のアメジスト色の瞳から目を離せなくなる。
「僕が思うに、君と僕はーー……」
花京院さんは私の耳元に唇を寄せ、
「惹かれあっているんじゃないかな、お互いに」
と言って美しい顔でにっこりと微笑んだ。
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眼鏡院はただの私の趣味です。
肉の芽院がキャンバスやらハンカチやら操り人形を一生懸命準備してる姿を想像すると面白いし、彼かなりギャグ線高いですよね。