セノの部下。任されたことは何でもそつなくこなす。誰に対しても臆さずセノに対してもフランク。
セノ
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ラエルは基本的に誰かしらの頼まれ事に走り回っていることが圧倒的に多い。だからといってそれ以外の仕事が無いわけではないし、やらなければならない仕事もちゃんとある。日頃走り回っているからこそ、彼女は手の空いた時には必ず自分の仕事をやっているし、提出しなければならない報告書などの書類も期限を守って提出している。
とは言え、ラエルはマハマトラの中でも目立って動き回っているやつだという印象が強いのは確かだろう。
「ラエル、手が空いてたら………」
いつものように手を借りようとラエルに声をかけた女性は初めて見る彼女の様子に思わず言葉を切って観察する。ラエルは本を読み込んでいた。単に読んでいるのではなく、見落としがないようにじっくりと真剣に読み込んでいるのだ。
いつも軽い調子で話している姿はそこになく、本当にラエルなのかと疑うほどに彼女は本を読むのに集中していた。
「…………あれ、先輩じゃねーすか。何か手伝うことがあるんなら遠慮せず声かけてくださいよー」
「え?あ、うん……」
「?」
「いや、あまりにも集中してたからびっくりしちゃって……」
戸惑っている様子に理由を聞いて納得したのか、それでもラエルはいつもの軽い調子で気にしなくて良いんすよー、と返した。
「でも、ラエルにだってやらなきゃならない仕事はあるわけでしょ。いつも手伝ってくれるから当たり前になってたわ、ごめんなさい」
「いやっすねぇ。先輩を手伝えるってことはそれだけ下っ端を頼りにしてくれてるんだって自惚れてるんすから、謝ったり遠慮せずこれからも使ってくださいよー」
「何バカなこと言ってんの……でも、そう言ってくれてありがたいわ。だけど、自分の仕事を優先しなきゃならないときはちゃんとそう言って。負担とか迷惑をかけたいわけじゃないんだから」
「りょーかいっす!で、何をお手伝いすりゃいいっすか?」
「ソレ、終わってからでいいわ。急ぎじゃないし、終わったらまた声掛けて」
「………先輩やさし……感動したっす」
「あんたチョロいんだか道化なんだかわからないわ」
呆れ混じりに戻っていった先輩を見送ると、読みかけの本に視線を落とし、小さく息を吐く。
使いっ走りは嫌いじゃないし、同僚や先輩後輩とコミュニケーションも取れるのでさっき言ったことに嘘はない。時々とんでもなく傲慢な先輩の手伝いをしてムカつくことはあるが今のように何かしら調べ物に没頭するよりは、手伝いに走っている方が良い。自分の知らないことを知る機会も多いので尚更だ。
「こういう仕事も嫌いじゃねーけど………体が鈍るなぁ……」
「だったら早く済ませるんだな」
「っ!?………大マハマトラはさー、神出鬼没なんすか?」
直ぐ側で声がして驚きながら振り向けばセノの姿が。
「気付かなかったのはお前だろう」
「そうなんすけどー………てか、ご覧の通りまだ終わってねえんすよ」
「ああ。期限は明日だ」
「うーす………ほんと、仕事の鬼だわ」
「聞こえてるぞ」
「地獄耳かよ」
「もうしばらく資料の読み込みが必要な仕事を回してやろう」
「うわームカつく。仕事って言われりゃやるしかねーんすけどー………」
「仕事だからな」
しれっと返されてはそれ以上言い募る気力も沸かず、了解っす、とだけ返して読み込みに戻った。そんな彼女の机に小さな包が置かれて再び顔を上げれば以前の礼だと告げて立ち去るセノ。思いがけない出来事にチョロいラエルは感動のあまり大声でこう言った。
「大マハマトラ!一生ついていきます!」
と。見事に黙殺された挙句、周りにいた者たちから大笑いされたが、それを気にしないのがラエルなのである。
因みに黙殺した本人はいつも通り呆れていた。
「大声でバカなことを…………」
口ではそう言いつつ、渡した物が嬉しくての発言だと考えるとバカも許せるものだと不覚にも思ってしまったとか。
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