セノの部下。任されたことは何でもそつなくこなす。誰に対しても臆さずセノに対してもフランク。
セノ
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「資料持ってきましたー」
「ありがとう!助かる!」
「これ運ぶの手伝え!」
「了解っすー」
「ごめん!後でこれに書いてる資料探してきて!」
「はーい」
ラエルは自分のことを下っ端と自称することが多い。その原因は明らかにこれだろう。何を頼んでもちゃんとこなすせいか頼まれ過ぎて、仕事と言うよりは使いっ走りのような扱いだ。本人も嫌な顔ひとつせず快く引き受けるから尚更。
マハマトラに配属されたばかりなら解らなくもないが、数年は経っているのにこの扱い。ラエルに甘え過ぎじゃないかと思うが、仕事が円滑に回っているのに注意するのは各々の意欲を削ぐことにもなる。ラエルが困っているわけでもない。
「お、大マハマトラ。今日はちゃんと昼飯食べましたー?」
「ああ。お前は食べたのか」
「ん?もしかしてあたしが忙しくしてるってんで心配してくれてんすか?」
「食べたのか」
「こっわ。食べましたよー。人にあんなこと言っといて自分が食べてなかったんじゃ本末転倒ってやつっすよー」
顔こわいっすよー、なんて軽口を叩きながら頼まれていた資料を持って歩くラエルがいきなり振り返ろうとした。何かを言おうとしたんだろうが、振り返りざまに資料のバランスを崩して見事に転けた。
「あーあー…………膝ぶつけて痛い……」
「大丈夫か?」
支えてやるよりも転けるほうが早かった。オレから少し離れていたせいもあるが。本人を支える代わりにこっちに飛んできた資料をいくつか受け止めはしたが、それ以外は散乱してしまった。
「これはあれっすね」
「?」
「大マハマトラをからかい過ぎた罰っすね」
「そういう自覚はあったんだな」
「そりゃもう!」
別に褒めたわけでもないのに誇らしげなのは何なんだ?
飛散した資料を拾って、頼んだやつのところへ持っていくためにオレも少し持ってやることにした。このまま行かせてもかまわないが、何か言いたいことがあるように感じられたことと、また転けて散らかす恐れもあるからな。
「せんぱーい資料持ってきましたよー」
「わあ、ありがと、う……!!だ、大マハマトラ!?どうして大マハマトラが資料を持っているんですか!!」
「いやー、先輩すいません。さっき見事に転けちまって大マハマトラが資料を一緒に拾ってくれたんすよ」
「転けた!?え、大丈夫なの?」
「膝ぶつけただけなんで平気っすー」
緩い表情で笑って見せるラエルに相手は言い募ることができず謝っていた。明らかに一人で運ぶには大変な量だったから、流石に反省はしただろう。
その後すぐに二人から礼を言われたが、目の前であんなにも盛大に転けたところを見て手伝わないのはオレでも良心が痛む。気にしなくていいと伝えてからラエルを呼んで二人で話をするため廊下に出る。
「さっき何か言いかけただろう」
「んん?」
「お前が転ける前だ」
「ん、ん~~……………んん~〜〜………」
「忘れたのか」
「忘れたみたいっす」
「ハァ………」
仕方がないか。あの時のラエルの様子からして大事なことのように感じたんだが。本人が忘れたのならどうしようもない。思い出すのを待つ以外に知る方法はないだろう。
「申し訳ねぇっす」
「いや、気にするな。それより、膝をぶつけたんだろう?ちゃんと手当てしておけ」
「りょーかい。それにしても大マハマトラってやさしいっすねー」
優しい?オレが?厳しいの間違いじゃないのか。
「咄嗟に支えてくれようとしてくれて、資料拾うの手伝ってくれただけでなく、すぐに立てなかったあたしに手貸してくれて。大マハマトラのやさしさを感じましたよー」
「…………お前が言うと胡散臭いな」
「え、ふつーにひど。褒めたのに」
「からかうの間違いじゃなくてか」
「半々っす!」
堂々と本人を前にして言うことじゃないだろう。胡散臭いと感じたのも納得だ。
「やーでも、大マハマトラの手、大っきいすねー」
「…………」
「一見して細っこいのに筋力もちゃんとあって」
「…………」
「ちゃーんと男なんすねー」
「当たり前だろう。男なんだから」
「お?その反応は慣れちまったんすか」
わざとらしい言い方をしていれば大抵の者は気付く。過剰な反応を示すからこいつは調子に乗るんだ。
「あ、言っときますけど何でもからかい混じりにとか冗談で言ってるわけじゃないんすからね。8割はマジなんで」
「割合逆だろう」
「合ってますよー。大マハマトラが頼りがいのある男ってことは身に沁みて理解したんでー」
「言ってろ」
「推します!」
「要らん」
見回り行ってきまーす。
いつもの調子でそう言ってラエルは走り去っていった。
「一人で騒がしいな」
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