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立春、だなんてとっくに過ぎてるし、だから桜が未開花だろうが3月はれっきとした春!だなんて見くびっていたら痛い目に合う。どうやらそれが若の頭の中の理論らしいのだけれど、それでも女の子っていうのは甘いものにいつだって惹かれちゃう生き物で、今し方通った店のソフトクリームが堪らなく魅力的で若の腕を引っ張った。こんな寒い日に身体を冷やすだろ、なんて悪態をつきつつも、腕にしがみつく力を強めてこうしていれば暖かいでしょ!だなんて言ってみれば、渋々了承してくれる。うーんやっぱり私は寒さなんて忘れて春を満喫したいから桜味かな、若は髪色的にほうじ茶味でいいよね!だなんて勝手に決めておきながら、単にそれはこの後「大きく3口ちょうだい!」と言うための伏線である。(だって一つに絞れないし。)
「…あ。お財布忘れちゃった。」
「…………は?」
「わ、私、とってもイケメンな若くんにソフトクリーム奢ってもらって、すっごく幸せ者だなー!」
「フンッ棒読みの奴がよく言うな。」
チッ何だかんだいつも俺が払ってる気がする、だなんでブツブツ言いながらも若は自分の財布を開けてくれた。丁度良い硬貨がなかったのか、千円札プラス10円硬貨数枚、1円玉数枚。うーんやっぱこんなとこを見てるとさすがA型!って感じ。あ、違ったAB型だ。じゃあ若は自分の血液の50%を使ってこんな事を…?って、あれ、よくわかんなくなってきちゃったんだけど。
「おい、溶けてるぞ。」
時すでに遅し、ドロドロとコーンを伝って急降下するクリームに、驚いて取り乱したのが馬鹿だった。じっとしてれば良かったものの、その数滴は自分の持ち場を勢い良く離れ、お気に入りのワンピースに堂々と着地。大好きな若のことを想って買った、清楚な女の子を装う為の真っ白なそれには、薄ピンクですらよくよく映える。
「うわーん若ー!」
「…ったく、何やってんだ。全部貸せ。」
「え、ワンピースを全部…?やだ若ったらまだお昼だよ…?」
「何言ってんだ、任せろって言ってんだろ。」
同じ過ちを繰り返さぬべく、溶けかかったクリームを優先的に呑気に舐めながら、きょとん、と若を眺めてみた。うん、呆れ顔もまたカッコイイ。ベンチに私を座らせた彼はほうじ茶ソフトを私に預け、鞄からぬれティッシュを取り出して、ポンポン、と押し出すように染みを取っていく。この集中力はまさに職人芸。若の血液の50%のB型くんがせっせとお仕事してる。この道14年の匠のなせる技!どーせ慈雨はまた乾いたティッシュで無闇に擦るだろ、って、当たっているからめちゃくちゃ悔しいけれどもどこか嬉しい。若って私の事めっちゃくちゃ好きなんだな~!だなんて、私なんぞの為にしゃがみこむ彼を見ると不謹慎ながら自然と頬が緩んだ。両手のソフトクリームを若が気付かないうちに交互に食べてみると、2つの味が混ざって変な味がする。ただ、桜とほうじ茶、両者とも和の香り。似たもの同士だから何となくどこか心地よい。無事に手術を終えた若が満足そうな表情を浮かべてゆっくりと立ち上がった。
「若ってさ、お兄ちゃんみたいだね。」
「………は?」
「面倒見いいもん。あーあ、一人っ子ってつまんない。私、若みたいなお兄ちゃん欲しかったなー。」
「俺は慈雨みたいな妹いらな…」
「はあ!?ひっどーい!」
ソフトクリームはこぼすしお金は持ってこないし、電車の定期は忘れるし気分屋だしどんくさいし、こんな手のかかる妹、死んでも欲しくない。どうやらこれが本日2つ目の若の理論らしい。
「それに、あれだ。キス、出来ないだろ?妹だったら。」
わっ…若大好きー!!思いっきりにやけて思わず抱き付いた。妹だとしてもキスくらい出来るけど。ほら、禁断の恋って奴?だなんてからかってみたら、若の顔はみるみるうちに真っ赤に染まった。
「ふふふー!可愛いなあ。若くん!」
「うるさい…ほら、また溶けてきたじゃないか。」
私の右手の桜に、若の赤色の舌がにゅるり、と伸びた。近付いた耳元に、間接キスですか?だなんて息を吹き込んでみれば若の体は飛び上がって。うるさい、良いだろ、慈雨が好きなんだから。と早口で言ってくれた若が愛しくて、私たちは3月寒空の下寄り添いつつ、ソフトクリームを交換しながらペロペロと舐めていたのだった。
溶けてしまえば溢れるだけ
(溢れ来る想いは君だけのものだよ)
*****
First Draft: 20090226
Second Draft: 20200308
「…あ。お財布忘れちゃった。」
「…………は?」
「わ、私、とってもイケメンな若くんにソフトクリーム奢ってもらって、すっごく幸せ者だなー!」
「フンッ棒読みの奴がよく言うな。」
チッ何だかんだいつも俺が払ってる気がする、だなんでブツブツ言いながらも若は自分の財布を開けてくれた。丁度良い硬貨がなかったのか、千円札プラス10円硬貨数枚、1円玉数枚。うーんやっぱこんなとこを見てるとさすがA型!って感じ。あ、違ったAB型だ。じゃあ若は自分の血液の50%を使ってこんな事を…?って、あれ、よくわかんなくなってきちゃったんだけど。
「おい、溶けてるぞ。」
時すでに遅し、ドロドロとコーンを伝って急降下するクリームに、驚いて取り乱したのが馬鹿だった。じっとしてれば良かったものの、その数滴は自分の持ち場を勢い良く離れ、お気に入りのワンピースに堂々と着地。大好きな若のことを想って買った、清楚な女の子を装う為の真っ白なそれには、薄ピンクですらよくよく映える。
「うわーん若ー!」
「…ったく、何やってんだ。全部貸せ。」
「え、ワンピースを全部…?やだ若ったらまだお昼だよ…?」
「何言ってんだ、任せろって言ってんだろ。」
同じ過ちを繰り返さぬべく、溶けかかったクリームを優先的に呑気に舐めながら、きょとん、と若を眺めてみた。うん、呆れ顔もまたカッコイイ。ベンチに私を座らせた彼はほうじ茶ソフトを私に預け、鞄からぬれティッシュを取り出して、ポンポン、と押し出すように染みを取っていく。この集中力はまさに職人芸。若の血液の50%のB型くんがせっせとお仕事してる。この道14年の匠のなせる技!どーせ慈雨はまた乾いたティッシュで無闇に擦るだろ、って、当たっているからめちゃくちゃ悔しいけれどもどこか嬉しい。若って私の事めっちゃくちゃ好きなんだな~!だなんて、私なんぞの為にしゃがみこむ彼を見ると不謹慎ながら自然と頬が緩んだ。両手のソフトクリームを若が気付かないうちに交互に食べてみると、2つの味が混ざって変な味がする。ただ、桜とほうじ茶、両者とも和の香り。似たもの同士だから何となくどこか心地よい。無事に手術を終えた若が満足そうな表情を浮かべてゆっくりと立ち上がった。
「若ってさ、お兄ちゃんみたいだね。」
「………は?」
「面倒見いいもん。あーあ、一人っ子ってつまんない。私、若みたいなお兄ちゃん欲しかったなー。」
「俺は慈雨みたいな妹いらな…」
「はあ!?ひっどーい!」
ソフトクリームはこぼすしお金は持ってこないし、電車の定期は忘れるし気分屋だしどんくさいし、こんな手のかかる妹、死んでも欲しくない。どうやらこれが本日2つ目の若の理論らしい。
「それに、あれだ。キス、出来ないだろ?妹だったら。」
わっ…若大好きー!!思いっきりにやけて思わず抱き付いた。妹だとしてもキスくらい出来るけど。ほら、禁断の恋って奴?だなんてからかってみたら、若の顔はみるみるうちに真っ赤に染まった。
「ふふふー!可愛いなあ。若くん!」
「うるさい…ほら、また溶けてきたじゃないか。」
私の右手の桜に、若の赤色の舌がにゅるり、と伸びた。近付いた耳元に、間接キスですか?だなんて息を吹き込んでみれば若の体は飛び上がって。うるさい、良いだろ、慈雨が好きなんだから。と早口で言ってくれた若が愛しくて、私たちは3月寒空の下寄り添いつつ、ソフトクリームを交換しながらペロペロと舐めていたのだった。
溶けてしまえば溢れるだけ
(溢れ来る想いは君だけのものだよ)
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First Draft: 20090226
Second Draft: 20200308
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