短編なのだ

 何がつらさなのかわからないと思って本を開いてもそこに答えは載っていないのだ。
 だから窓を開けて探したのだ。
 窓の外にはセルリアンがいて、いたはずだったのだが、セルリアンはとても遠い場所に行ってしまったので、外にいたのは■■■だったのだ。
 アライさんは怖くなって窓を閉めたのだ。
 ■■■は窓を叩いたのだ。
 怖くなって鍵を閉めたのだ。
 段ボールを貼り直したのだ。
 それでも音は聞こえるのだ。
 窓なんて開けるんじゃなかったのだ。窓からは■■■が入ってくるのだ。

 セルリアンは遠くに行ったがそれが残したものは大きく、重い病だったのだ。
 アライさんはセルリアンのことが許せなくて、でも、■■■がおこるから許さないといけないのだ。誰にも言えないのだ。誰にも言えないままそれは潰れていくのだ。アライさんの精神自身も。
 ぐずぐずと潰れて、墓標になるのだ。
 本当にそうなってくれればよかったのだが実際は苛むだけなのだ。
 くだらない話なのだ。

 ■■■から逃げられたと思っても心のどこかでは恐れているのかもしれないのだ。
 気に入られたいから。
 褒められたいから。
 アライさんは臆病なのだ。
 臆病だから恐れるのだ。
 何も恐れなくなりたいが、そうなることは■■になるのと同義なのでできないのだ。
 うんざりするのだ。だから空からあれが落ちてきたのだ。
 あれ?
 さあ。
 世界を■にしたものなのだ。
 窓を叩く音が聞こえるのだ。
 アライさんは目を閉じ、耳を塞ぎ、布団にくるまったのだ。
 おわりなのだ。
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    拍手なのだ