短編なのだ

『それ、は悪なのだ。放置すると嫌われるのだ』
『罰を受けるべきことなのだ、受けるのだ。祈るのだ。そうすれば許されるのだ』
 もう一人、のアライさん、よりももっと高次のものがそう言うのだ。
 もう一人のアライさんは死んだ、死んで、そうして、高次のものになったのだ?
 真実はわからないのだ。
 高次のものが住んでいるのだ。もうずっと住んでいるのだ。アライさんのやることなすこと全てを審判にかけて判決を下すのだ。
 うるさい、うるさいのだ。黙っていてほしいのだ。アライさんは勝手にやるのだ、勝手にやらせてほしいのだ。解放してくれなのだ、自由にしてくれなのだ。
 けれども高次のものは黙らずに、ずっとずっと口を出すのだ。
 じんじゃに行ったら切れるのか?
 おそらくそれは自分自身をもころすことになってしまうので、いけないのだ、いけないのだ。
 それならアライさんはどうすればいいのか?
 わからないのだ。わからないままこうして一匹糸を編むのだ。
 編んで、編んで、その先にあるものが何かなんてわからずに、ただ編んで、
 いつか辿り着ける日を夢見ているのだ。
 そこは、自由、なのかもしれないし、他のものなのかもしれないのだ。
 わからないけれど、きっと悪くはならないだろうと。
 無根拠に思いながら、ジャッジの声に耐えながら、編み続けているのだ。
 それが、■■なのだ。
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