短編なのだ

 夢を見るのだ。
 夢と現の間で親イさんが話しているのだ、アライさんの今後について話しているのだ。
 潜行するのだ。
 夢はぐるぐる、■■でぐるぐる、過去と現在のヒトがたくさん出てきてアライさんを苦しめるのだ。
 アライさんは焦燥感にかられてカラカラ、滑車を回してカラカラ、何も得られはしないのだ。
 けれども「あれ」が出てくることはなくなったのだ。
 「あれ」が何だったのか、アライさん自身にもよくわかっていないのだ。ヒトだったのか、セルリアンだったのか、不幸な偶然だったのか。
 物事の見方は複数あるので、ヒトでも、セルリアンでも、不幸な偶然でもあるのかもしれないけれど、だけど、セルリアンだと思わなければ重たいこの荷物の説明がつかなくなるから、セルリアンだと言うのだ。
 けれども、本当のところはやっぱりわからないのだ。
 わからないというポーズを取ることで、見かけだけでも冷静な中立者を装うのだ。
 当事者である以上、中立者になんてなれっこないのだがな。
 話が逸れたのだ。夢の中で逸れるも逸れぬもないとは思うが、それでは本筋とは何だったのだ?
 夢の中のアライさんは滑車を回し続けているのだ。カラカラ、カラカラ。
 走っても走ってもただ滑車が回るだけで、どこにも辿り着けはしないのだ。わかっているのにどうして走ってしまうのか。わからないのだ。ぼやけている、いや、ぼかしているのか。
 滑車を回すのをやめたいのだ。ただ疲れるだけなのだ。でも、気付くと滑車を回しているのだ。カラカラと。
 疲れて目覚めて気付くのだ、ああ、また滑車を回していたのだ、と。
 今回はそれだけなのだ。
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