短編なのだ

「のだだ……遅刻遅刻」
 こんげつはアライさんこの個体のたんじょうび! でもアライさんはさぎょうしょに遅刻してしまいました。
「のだ」
 遅刻するというのがどういうことか、アライさんはいつも滔々とうとうと叱られますがわかりません。
 少し時間に遅れたぐらいで皆怒るのがなぜか、アライさんにはわかりませんでした。
「のだだ……遅刻なのだ」
 アライさんは眠気の多いフレンズ。ヒトより多く眠らなければ日中活動もできません。
 でも、夜眠れないアライさんはつい夜更かしをしてしまいます。
 ジコセキニン! と飛んでいる鳥が鳴きました。
「のだだ…遅刻、なのだ」
 0じ。いつもアライさんのねるじかんです。
 アライさんはふと思います。
 このまま眠って目覚めなければ。
「どうなるのだ?」
 ふと、黒い影が心によぎります。
 あのさむいくにで布団に丸まって震えていたときのような、そんな。
 けれども。
 どうもなりはしない、アライさんはアライさんとして生きるだけ。
 アライさんはそう、思います。
 そして。
「おやすみなさいなのだ」
 明日もきっと、遅刻です。
 意識が落ちるときだけはしあわせでした。
 
 おわり。
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