短編なのだ

「……ここはどこなのだ」
 アライさんは一人、誰もいない大地に立っています。
「どこなのだ」
 首を傾げます。
 遠く、誰かの声たちが耳に聞こえてはいるのですが、周囲を見ても誰もいません。
「……ふぇねっく」
 一縷の望みをかけて呼んでみても、誰もいないことに変わりはなく。
「……さん」
 自分の名前を呼んでみます。
「………」
 やはり、誰もいません。
「誰も」
 一昔前までは賑わっていたちほーでしたが、今は閑散として、何のけものも見当たりません。
「みんな、しあわせになってしまったのだ」
 自分のものではない言葉が口から零れ落ちます。
 アライさんは口を押さえました。
「どこにいったのだ? アライさんは寂しいのだ」
 押さえた口から言葉がまた、漏れ落ちます。
「ふぇねっく、ふぇねっく、どこに行ったのだ? アライさんは一匹で寂しいのだ」
 寂しい。それがアライさんの本音だったのでしょうか。
 アライさんはうずくまって、丸くなりました。
 生えている草がアライさんの身体を覆って布団になります。
 ジャパリまんはまた今度のことでした。
6/76ページ
    拍手なのだ