短編なのだ

 雪まみれの部屋にいて、ここからどこにも行けないのだ。
 ■■■さんはずっとこの部屋にいるのだ、とても寒いこの部屋の中に。
 雪はいつまでも溶けず、冷え凍った頭の中はぐるぐると回っていて、アライさんの目もぐるぐる。
 毎日めまいがやってくるのだ。あの日、あの時、あの時刻。あんなことをしなければよかったのだ。
 そう思うのだ?
 そう思うのだ。
 いつまで経ってもアライさんは部屋の中、いつになったら外に出られるのかなんて、外には出たくないのだから出られないのだ。おわりなのだ。おわってしまうのだ。
 世界は終わっているのだ、アライさんを受け入れる世界はないのだ。
 排斥されてしまったのだから物語はそこで終わり。幽閉されて永久に過ごすのだ。
 言ってはいけないことを言い、してはいけないことをしたのだ。
 だからおわりなのだ、おわってしまったのだ。
 誰もいないのだ。いなくなったのだ。

 とても寒いのだ。凍った窓には段ボールが貼られているのだ。その段ボールの上にも霜が張って、凍っているのだ。
 全身が凍り付いて落ちていくのだ。眠い眠いのだ。ずっと寝ているのだ。死んでいるのと同じなのだ。
 思い出したくなかったのだ。でも、思い出してしまったのだ。許されなかったのだ。許さないのだ。おわりだと思っているのにおわらせてくれないのだ。
 どうして生きているのだ? どうして? ■■■は■■だのにどうして?
 セルリアンが見ているのだ。透明な身体で見ているのだ。大きな目がぐるりと回るのだ。ゼリーのようなのだ、と。
 それを見て思い出すのだ。思い出したくはなかったのだ。
 おわりなのだ、おわってほしいのだ。どうして?
 ずるずると引きずって生きているのだ。思い出したくはなかったのだ。だけど本当は生きたかったのだ。
 なんて。
 それで。
 おわりなのだと。
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    拍手なのだ