短編なのだ

 それは遠くあったのだ。
 何一つ許されることがないからアライさんは墓を建てずに毎日毎日。
 誰を悼んでいるのかもはやわからない長い長い喪は■年続き。
 朝も喪。
 昼も喪。
 夜も喪。
 おかしいのだ。どうなっているのだ。アライさんは誰を悼んでいるのだ?
 実体のない誰か。
 いなくなった誰か。
 それはいったい誰なのだ?
 考えてもわからなくて、ただただ毎日起きて、食べて、寝るの繰り返し。
 なんとなく心がずっしりと重くて、何度も同じ日を繰り返すのだ。
 前には進んでいるのに繰り返しているかのような。
 重たくて、苦しくて、でも何も明らかにならず。
 日記を書くのだ、今日も何もなく平和だったのだ、と。
 平和なのだ。
 誰も■んではいないのだ。
 認めることは許されないから。
 過ごしたのだ。過ごしたのだ。
 日々が過ぎる中、ふと立ち止まって考えるのだ。
 それなら誰を悼んでいるのだ?

 そうしてやっと気付いたのだ。
 自分は悲しかったのだと。
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    拍手なのだ