短編なのだ

 落ちているのだ。
 たくさん落ちているのだ。
 歩いていくとそれが見つかるのだ。
 アライさんはそれを見ないようにして歩くのだ。
 けれどだんだんそれが増えてきて、足の踏み場がなくなって、アライさんはその先に行きたかったのだけれど諦めて引き返すのだ。
 だけど後ろを振り向いてもそれが落ちているのだ。たくさん落ちているのだ。来たときよりもたくさん。
 どうすればいいのかわからなくなって、けれどそれを踏まなければ巣には帰れないので恐る恐る踏む、と、世界が回って変わるのだ。
 アライさんの世界が変わっても「世界」が変わることはなく、アライさんは嫌々それを踏みながら帰るけどだんだん何も感じなくなって。
 巣に帰ると足が■■■いて、あらうのだ、あらうのだ、落ちないのだ、あらうのだ。
 あらってもあらっても■■が消えないのであらってあらってあらって、
 足を上げるとまた踏んでしまうような気がして、地面から足が離せなくなって、一晩中立って過ごしたのだ。
 それでおわりなのだ。
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    拍手なのだ