短編なのだ

 ぐるぐる。ぐるぐる。ぐるぐる。ぐるぐる。アライさんの思考が回っています。
「ぐるぐるなのだ!」
 ぐるぐる。ぐるぐる。アライさんの目も回っています。
「くわんくわんするのだ!」
 アライさんは巣の中、一人立ち尽くしていましたがその重心はおぼつかず、前へ後ろへふらふらしています。
「アライさんが嫌いとかアライさんなんかどうでもいいとかいてもいなくても同じとか」
 アライさんは地面をじっと見つめます。
「そんなことを気にするなんて、フレンズらしからぬのだ。アライさんは、」
 どうなってしまったのだ? とアライさん。
「いつからかおかしいのだ。何もかもが変なのだ。でも、いつからなのかアライさんにはわからないのだ……ずっとこうだった気もするし、つい最近こうなったような気もするのだ、わかんないのだ、わかんないのだ……フェネック、フェネックにはわかるのだ?」
 アライさんは巣の壁を見、一瞬固まってから、ああ、と言いました。
「フェネック、いなかったのだ。いつからいないのだ?」
 いないのだ、いないのだ、とアライさん。
「おかしいのだ。いつからなのだ?」
 わからないのだ、と首を横に振ります。
「わからないのだ……こんなこといつまで続くのだ?」
 フレンズらしからぬのだ、と繰り返し、アライさんはぱたりと倒れました。
「次に起きたら、フレンズに戻っているといいのだ」
 アライさんは目を瞑ります。
 静かになったアライさん。だけど思考はぐるぐると回っていて、
「……」
 規則正しい呼吸だけが響いておりました。
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