『雪の下』シリーズ

 積むのだ。
 積めずに転げ落ちるのだ。
 積むのだ。
 積めずに転げ落ちるのだ。
 そんなことを繰り返してはや数十。
 先の見えぬ荒野は広々と、雪に埋もれて広がっているのだ。
 スライドの処理は一向に進まず、ただ時が過ぎるだけ。
 本当はもう処理なんてしなくてもいいのかもしれないと思ったけれど、スライドは時折蘇るし悪夢にもうなされたまま。
 何日ぶりかに雪の下、記憶と向き合おうとして、気持ちが悪くなって、やめるのだ。
 その繰り返しなのだ。
 結果を伴わぬ繰り返しは無為だと誰かが言ったけど、アライさんにはそうするしか方法がないのだ。結果が出せなくても、苦しくても、繰り返すしか。
 反復の中の停滞。前に進まない努力は努力と言えるのか。
 議論を呼ぶところなのだ。そうである、と言うヒトもいれば、そうでない、と言うヒトもいる。
 前に進まぬ努力だって努力と言う、そういう考えもあっていいのだと……最近、覚えたのだ。
 アライさんも少しは「治って」きたのか、それとも違うのか、わからないけれど……
 明滅するスライドの中で大の字になって、天井を見上げると、雪の下は今日も冷たく、
「ああ、このまま何も起きなければいいのに」
 なんて思ったのだ。

 けれど10月はやってきてしまうのだ。
 いずれ、また。
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拍手なのだ