『雪の下』シリーズ

 スライドの処理は終わらず、あれから流行り病が流行って、今も流行り続けているのだ。
 世界は急には終わらず、急に終わらないならいつ終わるのか、いつかは終わるのか、わからないまま生きているのだ。
 さいしょに設定していた期限まではあと三ヶ月。最後にスライドを処理してからどれくらい経ったのか、ノートの日付を見たら、四ヶ月ほど経っていたのだ。
『言葉の使い方が間違っている』
『■■失格』
『努力が足りない』
『努力が足りない』
『努力が』
 アライさんは努力が嫌いなのだ。
 頑張っても頑張っても何一つ良くはならず、直らず、治らず、冬がずっとずっと続いて、夏はうるさく息苦しく、いつになれば楽になれるのか、そう思ってばかり。
 我に返れるのは一瞬。
 あれから四ヶ月、今日がたまたまその日だったというだけなのだ。
 今日という日は長くは続かず、明日になれば終わるのだ。
 アライさんはきっとスライドを処理できないまま、秋になってしまうのだ。
 ひょっとするとそれまでに流行り病でしんでしまうかもしれないけど、そのときはそのときなのだ。
 しんでしまったものは蘇ることはないのだ。
 今も昔もそれは同じで。
 ずるずる引きずり続けるのだ。
 残した虚無を見ているのだ。
 あのセルリアンはしなず、冬はまだまだ続くのだ。
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拍手なのだ