短編なのだ

「あはは、たーのしー!」
 アライさんは一人で楽しそうにしています。今日は相談の日。
「このケーキうまいのだー!」
 誰もいないかふぇに入って、宙から出てきたけえきを食べて、ジャパリコインを支払って。
「たーのしーたーのしーたーのしーのだ!」
 嬉しそうに跳ねながらアライさんは施設に向かいます。
 施設の立っているのは高い崖。
「……」
 見下ろすアライさん。
「……」
 アライさんは何も言わず、施設に入りました。



 施設から出てきたアライさんは巣に帰ります。
「たのし……くないのだ」
 巣の前で立ち止まるアライさん。
「かえりたくないのだ、かえりたく……」
 アライさんの脳裏にあの崖がよぎります。
「たのし……」
 後ろを振り返るアライさん。
「かえりたく……ないのだ……」
 そのとき。
「アライさん! 何をしてるのだ!? 道の真ん中で立ち止まるなんて、頭がおかしいのだ! 早く巣に入るのだ!」
 親イさんです。
「……なのだ」
 アライさんはとぼとぼと巣に入り、そして、たのしい一日は終わりました。
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