短編なのだ

「はやくわすれるのだはやくわすれるのだはやくわすれるのだ」
 アライさんは巣の中。俯き頭を抱えてぶつぶつと呟いています。
「はやくわすれるのだはやくわすれるのだはやくわすれるのだ」
 ぎゅうぎゅうと頭を押さえるその姿は、まるで頭痛を起こしている者のようでした。
「思い出したくないのだ思い出したくないのだ、」
 しゃがみこんだアライさんはそのままこてんと横に倒れます。
「やめるのだ……やめるのだ、来ないでなのだ」
 アライさんは膝を抱えて丸くなります。
「あああ、」
 その輪郭が一瞬ぼやけて、
「……?」
 アライさんはゆっくりと頭を上げました。
 そしてぱちぱちと瞬き。
「今、何を考えていたのだ?」
 床に手をつき、身体を起こします。
「おかしいのだ。どういうことなのだ?」
 そしてゆっくりと立ち上がり。
「まあ、忘れたということは大したことではないのだ。あまり気にしないのだ」
 ぴょんと一回ジャンプ。
「スペシャルマッチャなジャパリまんでも探しに行くのだ~!」
 右手を一度上に上げ、アライさんは飛び跳ねながら巣の外に出て行きました。
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    拍手なのだ