短編なのだ

 ぽたん、ぽたんと落ちてくるのだ。
 何が落ちてくるのか、雨粒だといいけど、それはたぶん絶望なのだ。
 絶望は液体なのだ。止め処なく落ちてきて、纏わりついて呼吸を止めるのだ。
 そんな絶望がもう数十年、ずっと落ち続けてアライさんは窒息、とうに窒息しているのに、まだ落ちてくるのは止まらないのだ。
 絶望も分け合えば楽になるってそんな分け合う相手はおらず。
 唯一の拠り所だった憎しみすら薄れそれも絶望に変わるのだ。
 後ろに背負った重たい記憶たちの処理もできず、毎日ただ過ごすだけで過ぎていく。
 絶望の濃度に上限はあるのか、今のところきりがなく、今日の絶望は昨日より深く、明日の絶望は今日よりも深い。
 潜っても潜っても安らぐことはなく。
 そうして今日も終わるのだ。
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    拍手なのだ