短編なのだ

「さむーいのだ、さむいのだ、でも元気! 元気! なのだ!」
 アライさんはとても元気なアライグマ。今日もフレンズと一緒にそうげんに遊びに出掛けます。
「元気! 元気! けものは風の子、毛皮があるからさむくないのだ!」
 アライさんははつらつと駆け、競争なのだ! と叫びます。
 走り、走り、そうげんの中央に一本だけ立っている木の下で、
「かくれんぼするのだ! アライさんが鬼なのだ!」
 言うが早いかアライさんは数を数え始めます。
「いち、にい……」
 百まで数え終わって、アライさんは顔を上げ、さがすのだ! と叫びました。
 てててと走ってアライさんは繁みの陰を探し回ります。
「フェネックみっけなのだ! ヒグマもみっけなのだ! みんな隠れるのへたくそなのだ~!」
 嬉しそうに笑うアライさん。
「一番最初に見つかったフェネックが、今度は鬼なのだ!」
 アライさんは駆け、隠れる場所を探します。
「アライさんは隠れるのがうまいのだ、フェネックきっと見つけられなくて泣いちゃうのだ!」
 そうげんの端の繁みに潜り込み、アライさんはにししと笑いました。
「たのしーのだ、毎日たのしーのだ! こんな楽しくていいのだ? アライさんはフレンズでよかっ、」
 そのとき、太陽が天頂を過ぎました。
「た……?」
 アライさんの動きがゆっくりになりました。
「たーのしー……?」
 ぼんやりした表情で空を見上げるアライさん。
「……かえるのだ」
 アライさんはのろのろと立ち上がり、曇り始めた空の下、巣への道を歩きます。
「……」
 雨が降ってきました。
「あめ……」
 パークに春はまだ来ません。
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    拍手なのだ