短編なのだ

 惑うのだ。
 申し訳ないと思ったときには遅いのだ。
 罪悪感はいつも後からで、大波のような後悔が自分を押し潰してから謝ればよかったと気付くのだ。
 謝っても遅いのだ。そのときに謝っていてもアライさんはただの変なアライグマ、許されたかどうかさえわからないのだ。
 だから黙るのだ。黙ってぐるぐる後悔して、おわりなのだ。
 何がおわりでもクマ生はおわらず、後悔が重くても、罪悪感が苦しくても、存在を許せなくても、生きるしか。どうしてこんなに苦しまなければいけないのだ? わからないまま今日も過ぎようとしているのだ。
 窓から差し込む夕陽の鋭い紅に、このときばかりは今日が晴れだったことを恨むのだ。
 陽を遮ろうと手をかざして、爪が伸びてたことに気付いたのでアライさんは爪を切るのだ。
 そしてあらうのだ。
 罪悪感をあらうのだ。
 あらえなくて、わらうのだ。
 そして明日も惑うのだ。
50/76ページ
    拍手なのだ