短編なのだ

 ダイスを振るのだ。
 それで全てが決まるのだ。
 ダイスを振るのだ。
 転がる音がするのだ。
 ダイスを振るのだ。
 喋っているのだ。夢中になって喋っているのだ。つまらない既知の古くさい知識を夢中になって喋っているのだ。
 知ってるのだ。知ってるのだ。知ってるのだ。何もかもつまらないのだ。新しいものはないのだ。常に後ろを歩いているのだ。
 つまらないのだ。何もないのだ。正論しか言わないのだ。
 何度振っても決まり切った結果しか出ないのだ。
 それでも振るのだ。決められているから、だから振るのだ。
 眠いのだ。とても眠いのだ。つい寝てしまったら何もかも先に進んでいて、それすら泥のような眠りの中で、アライさんは仕方がないのでごはんを買って食べたのだ。
 それだけがおいしくて、差し込むあたらしいもので、だけどそれもすぐに古きに埋もれてしまったのだ。
 それでおわりなのだ。
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    拍手なのだ