短編なのだ

 悪いことをしたのだ。
 そう思うと止まらなくて、
 悪い、悪い、悪い、悪い、アライさんは悪いから、存在していてはいけなくて、アライさんは悪いから、相手の機嫌を直さなければいけなくて、アライさんは悪いから、直せなくて憎まれて、アライさんは悪いから、消滅を願われて。
 悪いのだ。悪いからこんなに苦しいのだ。悪くなければ苦しいはずがないのだ、アライさんは悪いのだ。
 悪いのだ。
 謝罪することも努力することも諦めてしまったのだ。謝っても許しちゃくれないし、努力しても変われやしないのだ。アライさんが悪いのは存在に染みついた性質で、どんなに謝っても過ちを繰り返し、どんなに努力してもすぐに戻ってしまう、
 そういう性質なのだ。
 きっとそう。
 だから苦しむのだ。
 罰なのだ。罰に違いないのだ。アライさんは悪いから。
 ……悪くないのだ?
 気休めはやめてほしいのだ。アライさんは悪い、これまで色々なフレンズからそう言われて生きてきたのだ。今更悪くないなんて、そんなのただの外れ値なのだ。アライさんは悪いのだ。そうなのだ、そうじゃないと、そうじゃなければ、
 だから許してほしいのだ。
 許してくれないことはわかってるけど、許されてはいけないことはわかってるけど、ここでずっと、鬱々と苦しみ続けているから、だから許してほしいのだ。
 かわいそうなアライグマだと思って、許してほしいのだ。
 だけどそれすらもう諦めているのだ。
 歪んでいるのだ。間違っているのだ。許されるわけがない。許されるわけがないのだ。
 許されないから、悪いから、いつまでも繰り返してしまうから。
 アライさんが悪いのは、つまりそういうことなのだ。
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