どんな話をしたって、アライさんのもやは黒いままなのだ。
 真っ黒に澱んでいて何も見えないのだ。
 変わらない、何を言ったって、したって、見たって、何も変わらないのだ。
 黒々とした靄が澱むだけ。
 それでもアライさんは話すことをやめられないのだ。
 きっと誰かはわかってしまったのだ。アライさんは、
 仕方がないのだ。どうしようもないのだ。終わったことなのだ。
 それが恵まれたこと、贅沢だと言われようが、アライさんにとっては不幸だった。それだけなのだ。
 ヒトはいない。フレンズもいない。フェネックもいない。たった一人、零下のこの巣でぐるぐると、眠ったり、起きたり。
 アライさんは一人なのだ。いや、一人でいなければいけないのだ。
 戦えない靄と戦って、いつか、勝てるのかどうか、わからないけれど、なんとか、なんとか生きないと、生きなければ生きていられないのだ。
 ■■への■■、そんなことはどうでもいいのだ。アライさんは一人。無の静けさなのだ。
 何もない、何もないこの無の中でいつか一人じゃなくなる日が来るのか来ないのか、それまでアライさんはぐるぐると、ぐるぐると、眠ったり起きたり、
 今日もずっと。

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