昔々のことなのだ。
 ヒトはアライさんに優しくしたのだ。
 アライさんは自分のことが大嫌いで、いつも自信がなくて、虚勢を張って強がっていたのだ。
 そんなアライさんに色々なヒトが優しくしたのだ。
 アライさんの記憶は白なのだ。
 くすんだ白。
 完全な白ならよかったのに、くすんでいるせいで何かがあるとわかるのだ。
 誰にも言えないのだ。
 フレンズはいなくて、フェネックも最初からいなくて、それじゃあアライさんは誰にこれを話せばいいのか、
 違うのだ。
 わからないのだ。わかってはいけないのだ。何も言えない、言ってはいけないのだ。
 それなのにアライさんはこうして言おうとしている。
 ■■のおはかに言おうとしている。
 おはかの前までやってきて、くすんだ白の中身を思い出そうとしている。
 いいことなのか、わるいことなのか、でも、忘れたままではいられないのだ。いつかは追いついてくることなのだ。
 ヒトはアライさんに優しくしたけどアライさんはヒトのことが嫌いなのだ。
 嫌いなのだ。
 ヒトはもう滅んでしまったけど、きっとどこかで生きているのだ。
 そうしてアライさんは今日もぐるぐると回すのだ。
 ■■あれと回すのだ。
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