「フェネック。フェネック。フェネック、フェネックフェネック、フェ……? それはいったい誰なのだ?」
 今日も同じことの繰り返しなのだ。存在しない存在に悩まされてアライさんはぐるぐる唸るのだ。
「フェネック、フェネック、憎、憎、フェネ、違うのだ、違うのだ」
 違うのだ。フェネックなんて存在しないのだ。存在しないから、「憎」なんておかしいのだ。存在しないのだ。存在しないものを■■なんておかしいのだ。
「フェネック」
 フェネックは今どうしているのだ? フェネックは今どこにいるのだ? ありとあらゆる■■が■■に■■、
「違うのだ!」
 憎。憎憎憎憎。憎、
「おかしいのだ……おかしいのだ……こんなはずじゃないのだ、こんなはずじゃ」
 ■■はアライさんの■■を■■で■■、
「駄目なのだ、出てくるななのだ! そんなことはなかったのだ、そんなことはもう忘れたのだ! 駄目なのだ、何も、何もなかったのだ、」
 ■■■■。■。
「アライさんは……アライさんは……」
 頭が痛いのだ。割れるように痛いのだ。フェネック。フェネック。ぐるぐる回って、回って、なかったはずのものが、
「■■」
 そうして意識が落ちて目覚めると、
「フェ、」
 それを何度も繰り返すのだ。
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拍手なのだ