明日晴れたら
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「急にカワイコぶりやがって…」
清田が舌打ちをしながらブツブツと不平をこぼしている。
「ホント、あの人のシュート完璧だわ」
「海南のナンバーワンシューターだからな!」
途端に清田は得意げな顔になる。
「それなのに居残って自主練とか…どんだけなの」
「神さんは真面目で努力家で天才だからな!」
どうやらあの神という先輩がかなりお気に入りらしい。
「神…さん」
「…む?」
「超かっこいい」
「くそっ…女ってやつは…」
明日晴れたら
男バスの練習試合があると聞きつけて、その日体育館に足を運んだ。
自分でもこんなに早く自らの意志でバスケの試合を見に行く日が訪れるとは思っていなかったし、複雑な気持ちもある。
それでも、あの人のプレーが見てみたいという思いが止められなかった。
けれど所謂ファンだ。多分、恋とは少し違う。
全国区の海南男子バスケ部となると、たかが練習試合でもギャラリーが集まっていて、部外者である自分の姿が浮くことを心配していたミキは少し安堵した。
清田が言っていたとおり、神が海南のキーマンであることは疑いようもなかったが、彼以外のプレイヤーもハイレベルであったから、彼女はたちまち夢中になった。
神にボールが渡るとワクワクした。
神のプレーはミキの期待を裏切らなかった。
センターライン付近から放たれたボールがリングに吸い込まれたときには、会場の声につられるように思わず声をあげていた。
ずっと見ていたいと思う試合だった。
試合が終了した後もフロアにある神の姿をひたすら目で追っていたミキだったが、周囲のギャラリーが引いていき、彼の姿が体育館の隅に消えたところで、神に声をかけるチャンスがあるかもしれないと思い立った。
急いで1階へ続く階段を駆け下りる。
学年の違う神との接点はないから、こんなときに見に来ましたというアピールをして顔だけでなく名前も覚えてもらいたい。
そして普通に会話のできるような関係になりたい。
そんな下心を抱えて神の姿を探した。
ようやくそれらしき姿を見つけたが、そばに女子生徒がいることに気づいてドキリとする。
膝サポーターを見ればそれがバレー部員であることが分かった。
知らない横顔だった。二年、若しくは三年だろうと思うと、一年という自分の立場が風に吹き飛んでしまうような存在に思えた。
少なくとも彼女は、自分よりずっと彼のことを知っている。
それでも、彼女が直ぐに神のそばを離れ、遠めに見た神の表情が少し困惑しているようだったことで救われた気分になる。
気を取り直して再び足を踏み出そうとした時、部員に声をかけられた彼が連れ立ってどこかへ歩き出してしまったから、動き出した足は再び止まってしまう。
きっとこれが清田だったら声をかけることにこれほど躊躇わなかっただろう。
たった一年の歳の差。
バスケ部でない自分には彼との接点が何もない。
それは酷く高い壁に思えた。
それから何とか神との接点を持とうと昼休みの体育館に通ってみたりしたが、彼が来ることはなかった。
昼休みの中途半端な時間よりも、部活後の自主練のほうが効果的であろうことはミキにも分かった。
それでも部活後の時間に体育館に行くのはあまりにもあからさまでためらわれた。
敬遠されてしまっては元も子もない。
ただ、バスケットボールを持ったあの人が見たいだけなのに。
机に肘をついたまま、何気なく窓越しの向こうの校舎に目をやった。
「あ…」
窓越しに見つけた姿に胸が跳ねた。
偶然とはいえ、なぜ吸い寄せられるように彼を見つけてしまったのだろう。
遠くから見ているだけなのに幸せな気分になった。
こんな些細なことが幸運と思えるほど、この高校生活があまりにも平凡でつまらないのだと、そう気づいた。
清田が舌打ちをしながらブツブツと不平をこぼしている。
「ホント、あの人のシュート完璧だわ」
「海南のナンバーワンシューターだからな!」
途端に清田は得意げな顔になる。
「それなのに居残って自主練とか…どんだけなの」
「神さんは真面目で努力家で天才だからな!」
どうやらあの神という先輩がかなりお気に入りらしい。
「神…さん」
「…む?」
「超かっこいい」
「くそっ…女ってやつは…」
明日晴れたら
男バスの練習試合があると聞きつけて、その日体育館に足を運んだ。
自分でもこんなに早く自らの意志でバスケの試合を見に行く日が訪れるとは思っていなかったし、複雑な気持ちもある。
それでも、あの人のプレーが見てみたいという思いが止められなかった。
けれど所謂ファンだ。多分、恋とは少し違う。
全国区の海南男子バスケ部となると、たかが練習試合でもギャラリーが集まっていて、部外者である自分の姿が浮くことを心配していたミキは少し安堵した。
清田が言っていたとおり、神が海南のキーマンであることは疑いようもなかったが、彼以外のプレイヤーもハイレベルであったから、彼女はたちまち夢中になった。
神にボールが渡るとワクワクした。
神のプレーはミキの期待を裏切らなかった。
センターライン付近から放たれたボールがリングに吸い込まれたときには、会場の声につられるように思わず声をあげていた。
ずっと見ていたいと思う試合だった。
試合が終了した後もフロアにある神の姿をひたすら目で追っていたミキだったが、周囲のギャラリーが引いていき、彼の姿が体育館の隅に消えたところで、神に声をかけるチャンスがあるかもしれないと思い立った。
急いで1階へ続く階段を駆け下りる。
学年の違う神との接点はないから、こんなときに見に来ましたというアピールをして顔だけでなく名前も覚えてもらいたい。
そして普通に会話のできるような関係になりたい。
そんな下心を抱えて神の姿を探した。
ようやくそれらしき姿を見つけたが、そばに女子生徒がいることに気づいてドキリとする。
膝サポーターを見ればそれがバレー部員であることが分かった。
知らない横顔だった。二年、若しくは三年だろうと思うと、一年という自分の立場が風に吹き飛んでしまうような存在に思えた。
少なくとも彼女は、自分よりずっと彼のことを知っている。
それでも、彼女が直ぐに神のそばを離れ、遠めに見た神の表情が少し困惑しているようだったことで救われた気分になる。
気を取り直して再び足を踏み出そうとした時、部員に声をかけられた彼が連れ立ってどこかへ歩き出してしまったから、動き出した足は再び止まってしまう。
きっとこれが清田だったら声をかけることにこれほど躊躇わなかっただろう。
たった一年の歳の差。
バスケ部でない自分には彼との接点が何もない。
それは酷く高い壁に思えた。
それから何とか神との接点を持とうと昼休みの体育館に通ってみたりしたが、彼が来ることはなかった。
昼休みの中途半端な時間よりも、部活後の自主練のほうが効果的であろうことはミキにも分かった。
それでも部活後の時間に体育館に行くのはあまりにもあからさまでためらわれた。
敬遠されてしまっては元も子もない。
ただ、バスケットボールを持ったあの人が見たいだけなのに。
机に肘をついたまま、何気なく窓越しの向こうの校舎に目をやった。
「あ…」
窓越しに見つけた姿に胸が跳ねた。
偶然とはいえ、なぜ吸い寄せられるように彼を見つけてしまったのだろう。
遠くから見ているだけなのに幸せな気分になった。
こんな些細なことが幸運と思えるほど、この高校生活があまりにも平凡でつまらないのだと、そう気づいた。