明日晴れたら
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「なんで高校でバスケやらねーんだ」
「アンタに関係ないでしょ」
「関係あるとかねーとかじゃなくって、」
「どうしてアンタに喋らなくちゃなんないのよ」
体育館へ向かう道すがら、清田は拗ねたように口を尖らせた。
「…かわいくねー」
「アンタの前でかわいくする必要ないし」
清田は眉間にしわを寄せながらブツブツと文句を言っている。
「もったいねーと思ったんだよ!」
「はぁ?」
少し恥ずかしそうに口を尖らせた清田の横顔を見上げると、それ以上何も言えなくなった。
あの日失ったものを数えて、胸のモヤモヤは消えない。
明日晴れたら
清田は上機嫌で体育館に足を踏み入れた。
広い体育館は人がまばらで、自主練にはもってこいだった。
「バスケ部ばかり?」
「いーや。今はバスケ部より元バスケ部のほうが多いんじゃねーかと思う」
「ほらよ」と投げてよこされたバスケットボールを反射的に受け取ってしまう。
ボールに目を落として次に清田を見上げると、彼はリングに向けてボールを放った。
ガコンと音を立てたボールがリングの間を通りぬけて床に落ちる。
清田はそれを片手で受けてドリブルでゴール下を旋回した後、ボールを背後に通してからレイアップシュートを決めた。
「楽しいぜ」
そして満足そうにミキを振り返り、ニカっと笑ってみせる。
それがテクニックの必要なシュートであることを彼女は知っていた。
褒めるのもしゃくなので敢えてそれには触れず、ミキは胸の前でボールを構えた。
「…楽しいかどうかよりもさぁ…」
両手で放り投げたボールは、綺麗な弧を描いてリングに吸い込まれる。
「あ」と清田がゴールを見上げた。
「とにかく負けたくなかったんだよね、私」
でも負けちゃったんだよなぁと自嘲気味に呟いたミキの表情を見て、清田は何かよからぬことに触れてしまったことにようやく気づいたらしく口を真一文字に結んだ。
「………」
そして落ち着かない様子で周囲を見渡し、思いがけず見つけたそれに目を輝かせた。
「神さーん!」
目の前でビヨンと飛び上がった清田にミキは小さく声をあげた。
驚いたのはその子供じみた突拍子もない言動だけでなく、軽く飛び跳ねたつもりであろう彼のジャンプ力にもだった。
同時に体育館に響き渡るような大声で名前を呼ばれた”神さん”を少し気の毒に思った。
飛び上がって大げさに手を振る清田を無視するわけにもいかないだろう。
そう思って自ずと神妙な顔になっていたミキだったが、近づいてきた長身の人を見て目を見開いた。
それが、いつだったか放課後の体育館で自主練をしていた人だと直ぐに気づいたのは、彼が綺麗な顔立ちをしていたからだ。
普通レベルだったなら、うろ覚えだっただろうと思う。
しかしそんなミキの記憶とは裏腹に、その人は彼女を一瞥しただけだった。
「珍しいっすね」
「気が向いたときだけだからね」
そういえばあの時、一年のことは分からないようなことをいっていたけれど、一年の清田とそこそこ親しげにしているのを見れば、自分は適当にあしらわれたんだろうと思うしかなかった。
正に高校デビューで、そこそこ見た目に自身があっただけに、酷くプライドを傷つけられたような気がした。
「あー、放課後自主練してた人だぁ」
彼女の声色や口調があからさまに変わったことに、今度は清田がぎょっとする。
それは自分の前では見せたことのないもので、女の恐ろしさを再確認するには十分な威力を持っていた。
彼はそう言われてようやくミキの顔を確認したようで、納得したような声を漏らした。
「あのときの一年」
「知ってんすか?」
「そういうわけじゃないけど」
「私、よく覚えています。すごい綺麗なシュートだったから」
すると彼はニコリと笑った。
「君もバスケしてるの?」
「………」
今はやっていないと、なぜだかそれが答えられなくて一瞬戸惑う。
それを察してか清田が「せっかくだから見せつけてやってくださいよ。神さんの3Pシュート」といって神の背中を押した。
「アンタに関係ないでしょ」
「関係あるとかねーとかじゃなくって、」
「どうしてアンタに喋らなくちゃなんないのよ」
体育館へ向かう道すがら、清田は拗ねたように口を尖らせた。
「…かわいくねー」
「アンタの前でかわいくする必要ないし」
清田は眉間にしわを寄せながらブツブツと文句を言っている。
「もったいねーと思ったんだよ!」
「はぁ?」
少し恥ずかしそうに口を尖らせた清田の横顔を見上げると、それ以上何も言えなくなった。
あの日失ったものを数えて、胸のモヤモヤは消えない。
明日晴れたら
清田は上機嫌で体育館に足を踏み入れた。
広い体育館は人がまばらで、自主練にはもってこいだった。
「バスケ部ばかり?」
「いーや。今はバスケ部より元バスケ部のほうが多いんじゃねーかと思う」
「ほらよ」と投げてよこされたバスケットボールを反射的に受け取ってしまう。
ボールに目を落として次に清田を見上げると、彼はリングに向けてボールを放った。
ガコンと音を立てたボールがリングの間を通りぬけて床に落ちる。
清田はそれを片手で受けてドリブルでゴール下を旋回した後、ボールを背後に通してからレイアップシュートを決めた。
「楽しいぜ」
そして満足そうにミキを振り返り、ニカっと笑ってみせる。
それがテクニックの必要なシュートであることを彼女は知っていた。
褒めるのもしゃくなので敢えてそれには触れず、ミキは胸の前でボールを構えた。
「…楽しいかどうかよりもさぁ…」
両手で放り投げたボールは、綺麗な弧を描いてリングに吸い込まれる。
「あ」と清田がゴールを見上げた。
「とにかく負けたくなかったんだよね、私」
でも負けちゃったんだよなぁと自嘲気味に呟いたミキの表情を見て、清田は何かよからぬことに触れてしまったことにようやく気づいたらしく口を真一文字に結んだ。
「………」
そして落ち着かない様子で周囲を見渡し、思いがけず見つけたそれに目を輝かせた。
「神さーん!」
目の前でビヨンと飛び上がった清田にミキは小さく声をあげた。
驚いたのはその子供じみた突拍子もない言動だけでなく、軽く飛び跳ねたつもりであろう彼のジャンプ力にもだった。
同時に体育館に響き渡るような大声で名前を呼ばれた”神さん”を少し気の毒に思った。
飛び上がって大げさに手を振る清田を無視するわけにもいかないだろう。
そう思って自ずと神妙な顔になっていたミキだったが、近づいてきた長身の人を見て目を見開いた。
それが、いつだったか放課後の体育館で自主練をしていた人だと直ぐに気づいたのは、彼が綺麗な顔立ちをしていたからだ。
普通レベルだったなら、うろ覚えだっただろうと思う。
しかしそんなミキの記憶とは裏腹に、その人は彼女を一瞥しただけだった。
「珍しいっすね」
「気が向いたときだけだからね」
そういえばあの時、一年のことは分からないようなことをいっていたけれど、一年の清田とそこそこ親しげにしているのを見れば、自分は適当にあしらわれたんだろうと思うしかなかった。
正に高校デビューで、そこそこ見た目に自身があっただけに、酷くプライドを傷つけられたような気がした。
「あー、放課後自主練してた人だぁ」
彼女の声色や口調があからさまに変わったことに、今度は清田がぎょっとする。
それは自分の前では見せたことのないもので、女の恐ろしさを再確認するには十分な威力を持っていた。
彼はそう言われてようやくミキの顔を確認したようで、納得したような声を漏らした。
「あのときの一年」
「知ってんすか?」
「そういうわけじゃないけど」
「私、よく覚えています。すごい綺麗なシュートだったから」
すると彼はニコリと笑った。
「君もバスケしてるの?」
「………」
今はやっていないと、なぜだかそれが答えられなくて一瞬戸惑う。
それを察してか清田が「せっかくだから見せつけてやってくださいよ。神さんの3Pシュート」といって神の背中を押した。