ごちゃまぜ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ぎゃうん!」
新しく始まる高校生活に浮かれまくる私に、神様はオチツケと言いたかったのだろうか。商店街を入ってすぐの雑多な店先に放り出されていた幟を立てるための台を避けようとして派手に転んだ。
気づいたら四つん這いになっていて、咄嗟に突き出した手のひらと膝がジワリと熱を持つ。
「見えてんで」
不意に後ろから声をかけられて我に返り、慌ててお尻を手をやると派手にスカートが捲れ上がっていた。
「あぉわっ!」
何者か分からない声を出して、両手でスカートの裾を尻の下に巻き込んでその場に座った。恥ずかしすぎて周囲を見ることができないし、傷の痛みを感じる余裕もない。
すると、ジーとチャックの開く音がして、ポイと何かが膝の上に落ちてきた。手に取ってみたそれは絆創膏で、驚いて顔を上げると、目に飛び込んできたジャージ姿の男の子は自分と同年代と思われた。
ヤンキーを彷彿とさせる目つきの悪さを踏まえてもカッコイイかも、と思ったその時。
「どんくさ」
彼はそう言い捨てて踵を返したのだった。
ポカン、とその後ろ姿を見送りながら、そこで今日履いていたのが綿パンだった事を思い出して、恥ずかしすぎて死にたくなった。
「───って事があってん」
「それで派手に擦りむいてんねんな」
「もうあの商店街には行かれへん」
そう言って名無しさんは机に突っ伏した。
豊玉高校は男子の多い学校だ。彼氏を作るぞーと息巻いていたが、彼氏より先にドコのドイツかも分からない男にパンツを見られるだなんて立ち直れない。
「誰も覚えてへんよ」
所詮他人事だな、と名無しさんが頬を膨らませたその時、隣の席の男子が「おう、南」と声をあげた。
岸本というその男子は、やたらとごついガタイをしている上にロン毛、更に濃いめの顔立ちと胸焼けがしそうな見た目だったから、名無しさん何となく敬遠していた。
それでも何の気なしにそのロン毛の視線の先を見遣ると、教室の窓に両腕をのせて廊下からこちらをのぞいている男子生徒が見えた。
岸本が席を立って窓際に向かうのを視界の隅に映しながら、南と呼ばれた男子生徒のことを割とタイプなオシャレ男子だと思った名無しさんは、少し楽しい気分になった。頬杖をつきながら廊下を眺めるフリをして見ていると、その視線に気付いたのか不意に南と目が合った。
思わず視線を逸らしてから違和感を覚える。どこかで見た事のある顔のような気がする…と記憶をたぐり寄せていると「おー」と声が聞こえた。反射的に視線を戻すと、南が名無しさんを指差した。
「いちごパンツやんけ」
「ぎゃっ!」
イッパツで思い出した。昨日商店街で会った人だ。まさか同じ学校だったなんて思いもしなかった現実に愕然とし、忘れたい記憶は忘れることができない記憶にすり替わる。
南のそれを聞いて振り向いた岸本のギョロギョロした目が名無しさんを捉えた。
「いちごパンツてなんやそれ。幼稚園児か」
「ぎょーさんいちごついてたで」
「もうパンツ見せ合う仲になったんか」
「俺のはまだ見せてへんけど」
「やめー!」
名無しさんは思わず立ち上がって、何かを掻き消すかのように両腕を振った。
「まだも次もなんもあれへん!」
「そんなんどうなるか分からへんやんけ」
しれっとそう言った南と目が合うと、彼はニヤリと笑った。
「……は、」
頭がおかしくなるほど顔が熱くなっている。チョンチョン、と指先で友人に叩かれて、名無しさんは漸く自分がクラス中の注目を浴びている事に気づいた。慌てて着席してチラリと廊下側に視線をやると、岸本と南がこちらを見ながらニヤニヤ笑っている。カッイイと思った自分を罵ってやりたいと思った。
「恥ずかしすぎて死ぬ」
「死なへん死なへん」
顔も身体もありえないくらいに熱くなっていて、今すぐ溶けて消えてしまいたいと机に両肘をついて両手で顔を覆う名無しさんの頭上から「いちごちゃん」と声が降ってきた。条件反射で「誰がいちごやねん!」と顔をあげると、いつの間に戻ってきたのか隣の席の岸本が立っている。
「“今度の練習試合見に来や“、やと。南からの伝言」
「え?」
「バスケ部やねん」と岸本が親指で自分を指し示した。やだバスケ部カッコいい、きっとカッイイ人がいる、と邪な興味が脳裏を過ぎる。
「アイツが人誘うん珍しいで。よっぽど面白かったんやろな」
「…行かない」
ギリギリそう答えながらも、悔しいがなバスケ部への興味は払拭できそうにないと名無しさんは頭を抱えた。
27/27ページ