ごちゃまぜ
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あたしは彼が慌てふためいたりだとか馬鹿笑いしたりだとか、そんな姿を見たことがない。
だから初めて見に行ったバスケの試合で、汗だくになった彼が大きな声を出しているのを見て腰が抜けるほど驚いた。
冷静な彼を熱く出来るのはバスケを於いて他にないのだと知ると共に、じゃあカノジョだったらどうなのだろうという好奇心が沸いた。
願わくば彼から冷静さを奪える存在になってみたいと思った時点で、あたしの心臓は冷静さを失くしていたんだ。
「なんであたしが…っ」
放課後、担任に言い渡された雑用を終えて大急ぎで教室に荷物を取りに戻ると、そこにはもう誰も居なかった。
チラリと壁の時計に目をやる。
「もうっ!部活に遅れちゃうっ!」
いやもう完璧に部活には遅れているんだけど、監督が来る前に合流しとかなくては大目玉を喰らってしまう。
今から遠回りして部室で着替える時間を考えたら、誰もいないのだしここで着替えてしまえとおおざっぱな性格が頭角を現わした。
乱暴にブラウスを脱ぎ捨ててTシャツを手にしたその時、
――ガラッ
何の前触れもなく突然開いたドアに驚いて目をやると、そこには花形が立っていた。
お互いしっかり見つめ合った後に「あ、悪い」と花形が再びドアを閉めた。
「………。」
彼はこんな時まで冷静で…って、女の子の着替え現場に遭遇したのにそれはないんじゃない?
しかもあたしは眩しいブラジャー姿まで披露したと言うのに!
急いでTシャツを着込んだあたしは教室のドアを開けて廊下に飛び出した。
「花形ー!」
向こうに見える大きな背中が振り返る。
その顔が「何か用?」と聞いていた。
「みみみ見たわねっ!?」
「わざとじゃないんだから仕方ないじゃないか。大体教室で着替える方がどうかしてる。」
否定しない実直さ。
それなのに微塵も動揺をみせてくれないんだから、あたしは彼の目に女として映っているんだろうか。
それってかなり失礼じゃないの。
だったら今日、たった今から意識させてやる。
再び背を向けようとする花形を呼び止めた。
「まだあるのか?」
訝しげな顔をする花形の前で深く深呼吸する。
例えば今、あたしがここで愛の一大告白をして、今の出来事をタテに交際を迫ったなら、アンタはそれでも涼しい顔をしていられる?
end