ごちゃまぜ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
だって始まりには終わりがある訳でしょ?そう考えたら付き合ったりするのって怖くない?
先生が教室に来るのが遅れたのもあって、6限目が始まる前の休み時間から前の席の男の子としていた雑談は上手い具合に恋愛の話にまで発展させられてしまった。
そうかなぁ…と首を傾げる彼はとても聞き上手で、と言うか話させ上手で、優しい笑顔に騙されて言わなくて言い事までウッカリ喋ってしまったことを少し後悔した。
だけどそれって勿体ないよね。
自分から色んな可能性を放棄してるんだから。
そう言って笑った彼の笑顔が印象的だった。
授業が始まって10分も経たないうちに教室にはダラけた空気が蔓延し始め、やる気のカケラも持ち合わせていない生徒達を前に先生さえもそれを黙認している様子だからあたしは堂々と大欠伸をした。
だいたい政経の授業自体に何の意義も見いだせないのに、それを6限目に持ってくるだなんて寝ろと言っているようなものだと思う。
前の席の神くんは頬杖をついたままピクリとも動かない。
もしかしたら寝てるのかもしれないなと思ったらあたしも眠気を抑えられなくなって目を一、二度ゆっくり瞬きさせた。
「ねぇ」
不意に振り返った神くんに驚いたあたしは謀らずも眠気を半減させることに成功する。
「今の話なんだけどさ」
「え?何の話?」と眠気覚ましになりそうな楽しい話題を期待するあたしに神くんは「不景気になるとどうして銀行が金利を引き下げるのかってヤツ」と真面目な話題を振ってきた。
おぉ授業聞いてるよこの人。
だけど生憎その話題じゃあたしの脳みそにエンジンはかからない。
「経済を活性化させるには貨幣に流動性を持たせる事が重要って言ってたじゃん?」
授業を殆ど聞いてなかったあたしは、そんな事言ってたかなと思いつつ大して面白い話でもないから適当な相槌をうつ。
「それって名無しさんちゃんの高校生活にも言えると思わない?」
「え?」
急に名前を出されて驚くあたしと目が合うと神くんはニコリと微笑んだ。
「名無しさんちゃんが流動性を持てばもっと活性化すると思うよ」
そんなふうに経済の話に準えて話を進められてもあたしはただ目を白黒させるばかりで、頭に浮かぶクエスチョンマークを顔面にも貼り付けてみたが彼には見えない様子。
「どうゆうこと?」と聞き返すあたしに彼は長い睫毛を伏せながら声を潜める。
「俺はね、金庫に仕舞い込まれた貨幣は傷付くのを怖がって殻に閉じこもる名無しさんちゃん自身に例えられると思うんだ。それが動くことで経済が潤うように、名無しさんちゃんも少しだけ外の世界へ飛び出す勇気を持てば高校生活がもっと楽しくなると思うんだけどな」
先程までの眠気はどこへやら、頭をフル回転させるもやはり追い付けず。
「ゴメン、話が見えないんだけど」
眉根を寄せて申し訳なさそうな顔を作れば神くんは少し首を傾けながら一瞬教壇へと逸らした視線を再びあたしに戻した。
「だから、俺と付き合ってみない?」
先生、今の授業もう一度最初からお願いします。
fin.
thanks for 3days