Cinderellaになれなくて
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その日の夜は興奮してなかなか寝付けなかった。
男の子のコトを「いいな」と思っても、それを形にする事なんてできなかったし、今後もそうだと思っていた。
こんな夢のようなことが現実に起こるだなんて。
ベットに潜り込んだあたしは、学校で仙道に会ったら何て言おうか、仙道はあたしに何て言ってくれるんだろうかって殆ど妄想に近いそれを一生懸命考えて頬が弛むのを止める事ができなかった。
けれど週明けの学校は、やっぱり妄想は妄想でしかない事をあたしに再確認させた。
仙道は登校が遅いし、人気者だから休み時間は忙しいしで取りつく島もない。
そもそも畏れ多くて自分からは近づけないから、仙道が話しかけれくれるのを待つしかないんだけど、仙道がこちらを気にする様子はなくて、あの日体育館であたしを見つけた仙道が笑いかけてくれたのはやっぱり気のせいだったんじゃないかって思い始めた。
席に座って帰りのHRが始まるのを待つ間、何となく煌びやかな女子に目が行った。あたしがあんな風にキラキラしていたなら高校生活は違っていただろうし、仙道に遠慮なく話しかける事ができたんだろうと思う。
そして押し寄せてくる劣等感に飲み込まれないように、やっぱり勉強を頑張ろうと一生懸命自分を奮い立たせた。
あたしにとって恋愛は妄想で、勉強が現実なんだって。
何だか泣きたい気分になったのは気のせいだから、担任が教室に入って来たタイミングで大きく深呼吸をした。
HRが終わったらサッサと教室を後にするのはいつものことで、特にその日だけが早かったわけではない。
教室を出て2、3歩歩いた時、後ろから名前を呼ばれた気がしたので一度足を止めてそちらを見たけど、教室前の人混みにあたしに用事のありそうな人はいなかったから再びまえを向いて歩き出した。
階段の踊り場まで来たところで、突然背後から肩を叩かれた。
「え?」
足を止めて振り返るとそこには仙道がいた。
「帰るの早えー」
何でだろう。
あたしが色々考えていたことは、仙道を目の前にすると全部どこかに飛んでいってしまって、何もかも上手にできなくなる。
あたしは気の利いた言葉どころか何も声を出さずにあたしより随分と背の高い仙道をただ見上げた。
「今日 話せてねーから」
よく見ると仙道は荷物を持っていなくて、もしかしてあたしに話しかけるためにわざわざ追いかけて来たんだろうかと思ってしまった。
それって何なんだろうって。
「…あ、そうだね」
「練習試合、見に来てくれてただろ」
「うん」
あたしの鈍い反応を見たせいか仙道が「あんま面白くなかった?」と聞いてきたので、慌ててそれを否定しようとしたら両手をパタパタと必死に振っていた。
「いや、そうじゃなくて…」
仙道がすごくカッコよかった、なんてセリフをあたし如きが言ってはいけない気がして言葉に詰まると、仙道は「ん?」と小首を傾げてあたしの次の言葉を待ってくれた。
「あの、皆んなすごくて…あたしバスケあんまり分かんないんだけど、なんかすごかった。すごく面白かったよ。もっと沢山見たかった」
すると仙道は嬉しそうに目を細めた。
その大人っぽい表情に、あたしはドキリとしてしまう。
「よかった」
仙道がそう言ってくれたから、あたしも「誘ってくれてありがとう」って言葉をサラッと言う事ができた。
「また見にくる?」
「え?いいの?」
「じゃ、誘うよ」
「うん、ありがと」
その会話はとてもスムーズで、あたしは少しホッとした。
「ワリ、帰るとこだったんだよな」
仙道がそう言って会話を切り上げようとしたから、あたしは少し物足りなくて残念な気がしたけれど、だけどこれ以上会話を広げる技量がなくて、本当に嫌になってしまう。
「あ、いや、別に…」
そうは言っても仙道も部活だし、早く切り上げたいのは仙道のほうなのかもしれない。
すると仙道は「お」と小さく声を漏らし「時間があるならもう少し喋ろーか」と言った。
「俺、正直に言うと江崎さんのこと全然知らねーからさ」
そして「ワリィ」と顔の前に片手をあげて謝る振りをした。
その嫌味なく正直な態度が、警戒心でガチガチになっているあたしの心に響く。
「ほんと正直だね」
そう言って笑うと仙道もニコリと眉尻を下げた。
それからあたしたちは屋上に続く階段に座って話をした。
あたしと仙道の間には人がもう1人座れるくらいの距離があって、あたしたちはこんなもんなんだろうと思う。
仙道は話しやすくて、皆んなが仙道の周りに集まる理由が分かる気がした。
「成績いーんだな」
「だって帰宅部だし…」
「俺、毎回必死なんだよ。赤点取ったら練習させてもらえねーし」
「赤点?」
「そ、赤点」
「赤点取ったことあるの?」
「たまーに」
そう言って仙道は頬杖をついた。
あたしだったら恥ずかしい事はそれとなく包み隠しておくんだけど、良くも悪くも仙道は正直でびっくりしてしまう。
まぁあれだけ授業中寝てたら赤点も仕方ないのかもしれない。
「部活大変そうだもんねー」
「フォローサンキュー」
ふふッと笑うと仙道があたしの脇腹に軽くチョップした。
「うわっ」と何とも可愛くない声をあげてしまったことや、仙道の手があたしの脇腹をつついたことに動揺してして赤面する。
「勉強教えてよ」
頬杖をついたままの仙道があたしを横目で見た。今この場所には2人しかいなくて、だから仙道がジッと見ているのは他の誰でもないあたしなんだって分かる。
「別にいーけど」
「お、ラッキー」
「上手く教えられる自信ないよ?」
「赤点さえ回避できたらいーんだ」
あたしは仙道の彼女じゃなくて、仙道の友達になれたらいいのにって思った。
だって彼女には終わりがあるけど、友達には終わりがないから。
けれど今あたしが仙道の彼女じゃなくなったら仙道とのこの時間も嘘みたいになくなってしまうわけで、それがいつも頭の隅っこに引っかかっていた。だから仙道を好きになっちゃいけないって、あたし達はそう言うのじゃないって、何度も言い聞かせた。
男の子のコトを「いいな」と思っても、それを形にする事なんてできなかったし、今後もそうだと思っていた。
こんな夢のようなことが現実に起こるだなんて。
ベットに潜り込んだあたしは、学校で仙道に会ったら何て言おうか、仙道はあたしに何て言ってくれるんだろうかって殆ど妄想に近いそれを一生懸命考えて頬が弛むのを止める事ができなかった。
けれど週明けの学校は、やっぱり妄想は妄想でしかない事をあたしに再確認させた。
仙道は登校が遅いし、人気者だから休み時間は忙しいしで取りつく島もない。
そもそも畏れ多くて自分からは近づけないから、仙道が話しかけれくれるのを待つしかないんだけど、仙道がこちらを気にする様子はなくて、あの日体育館であたしを見つけた仙道が笑いかけてくれたのはやっぱり気のせいだったんじゃないかって思い始めた。
席に座って帰りのHRが始まるのを待つ間、何となく煌びやかな女子に目が行った。あたしがあんな風にキラキラしていたなら高校生活は違っていただろうし、仙道に遠慮なく話しかける事ができたんだろうと思う。
そして押し寄せてくる劣等感に飲み込まれないように、やっぱり勉強を頑張ろうと一生懸命自分を奮い立たせた。
あたしにとって恋愛は妄想で、勉強が現実なんだって。
何だか泣きたい気分になったのは気のせいだから、担任が教室に入って来たタイミングで大きく深呼吸をした。
HRが終わったらサッサと教室を後にするのはいつものことで、特にその日だけが早かったわけではない。
教室を出て2、3歩歩いた時、後ろから名前を呼ばれた気がしたので一度足を止めてそちらを見たけど、教室前の人混みにあたしに用事のありそうな人はいなかったから再びまえを向いて歩き出した。
階段の踊り場まで来たところで、突然背後から肩を叩かれた。
「え?」
足を止めて振り返るとそこには仙道がいた。
「帰るの早えー」
何でだろう。
あたしが色々考えていたことは、仙道を目の前にすると全部どこかに飛んでいってしまって、何もかも上手にできなくなる。
あたしは気の利いた言葉どころか何も声を出さずにあたしより随分と背の高い仙道をただ見上げた。
「今日 話せてねーから」
よく見ると仙道は荷物を持っていなくて、もしかしてあたしに話しかけるためにわざわざ追いかけて来たんだろうかと思ってしまった。
それって何なんだろうって。
「…あ、そうだね」
「練習試合、見に来てくれてただろ」
「うん」
あたしの鈍い反応を見たせいか仙道が「あんま面白くなかった?」と聞いてきたので、慌ててそれを否定しようとしたら両手をパタパタと必死に振っていた。
「いや、そうじゃなくて…」
仙道がすごくカッコよかった、なんてセリフをあたし如きが言ってはいけない気がして言葉に詰まると、仙道は「ん?」と小首を傾げてあたしの次の言葉を待ってくれた。
「あの、皆んなすごくて…あたしバスケあんまり分かんないんだけど、なんかすごかった。すごく面白かったよ。もっと沢山見たかった」
すると仙道は嬉しそうに目を細めた。
その大人っぽい表情に、あたしはドキリとしてしまう。
「よかった」
仙道がそう言ってくれたから、あたしも「誘ってくれてありがとう」って言葉をサラッと言う事ができた。
「また見にくる?」
「え?いいの?」
「じゃ、誘うよ」
「うん、ありがと」
その会話はとてもスムーズで、あたしは少しホッとした。
「ワリ、帰るとこだったんだよな」
仙道がそう言って会話を切り上げようとしたから、あたしは少し物足りなくて残念な気がしたけれど、だけどこれ以上会話を広げる技量がなくて、本当に嫌になってしまう。
「あ、いや、別に…」
そうは言っても仙道も部活だし、早く切り上げたいのは仙道のほうなのかもしれない。
すると仙道は「お」と小さく声を漏らし「時間があるならもう少し喋ろーか」と言った。
「俺、正直に言うと江崎さんのこと全然知らねーからさ」
そして「ワリィ」と顔の前に片手をあげて謝る振りをした。
その嫌味なく正直な態度が、警戒心でガチガチになっているあたしの心に響く。
「ほんと正直だね」
そう言って笑うと仙道もニコリと眉尻を下げた。
それからあたしたちは屋上に続く階段に座って話をした。
あたしと仙道の間には人がもう1人座れるくらいの距離があって、あたしたちはこんなもんなんだろうと思う。
仙道は話しやすくて、皆んなが仙道の周りに集まる理由が分かる気がした。
「成績いーんだな」
「だって帰宅部だし…」
「俺、毎回必死なんだよ。赤点取ったら練習させてもらえねーし」
「赤点?」
「そ、赤点」
「赤点取ったことあるの?」
「たまーに」
そう言って仙道は頬杖をついた。
あたしだったら恥ずかしい事はそれとなく包み隠しておくんだけど、良くも悪くも仙道は正直でびっくりしてしまう。
まぁあれだけ授業中寝てたら赤点も仕方ないのかもしれない。
「部活大変そうだもんねー」
「フォローサンキュー」
ふふッと笑うと仙道があたしの脇腹に軽くチョップした。
「うわっ」と何とも可愛くない声をあげてしまったことや、仙道の手があたしの脇腹をつついたことに動揺してして赤面する。
「勉強教えてよ」
頬杖をついたままの仙道があたしを横目で見た。今この場所には2人しかいなくて、だから仙道がジッと見ているのは他の誰でもないあたしなんだって分かる。
「別にいーけど」
「お、ラッキー」
「上手く教えられる自信ないよ?」
「赤点さえ回避できたらいーんだ」
あたしは仙道の彼女じゃなくて、仙道の友達になれたらいいのにって思った。
だって彼女には終わりがあるけど、友達には終わりがないから。
けれど今あたしが仙道の彼女じゃなくなったら仙道とのこの時間も嘘みたいになくなってしまうわけで、それがいつも頭の隅っこに引っかかっていた。だから仙道を好きになっちゃいけないって、あたし達はそう言うのじゃないって、何度も言い聞かせた。
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