Cinderellaになれなくて
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それはあたしがあたし自身の人生の中で起こりうることとして、全く想定していなかった出来事だった。
いや、色々と想定外の連続だったんだけど、
とにかく何をどうしてよいのか皆目検討がつかなかった。
また残念な事に、それについて相談の出来る友人も持ち合わせていなかった。
恋愛音痴な頭をフル回転させた結果、手ぶらで行くことはできないような気がして、差し入れのポカリとタオルとを準備してみた。
試合の合間の休憩に、マネージャーが選手にそれらを渡している光景を思い描きながら鞄に詰め込んでいたら、途中で自分がマネージャーではないことに気付いたけど、備えあればなんとやらと思ったからやっぱり持っていくことにした。
ドキドキよりワクワクが大きかったような気がする。
自分が凄く特別な事をしているような、うまく言えないけれどそんな感じだった。
そう思うことくらいいいんじゃないかって思った。
例え仙道があたしを好きじゃなくても、ただからかわれているだけだったとしても、ゴッゴ遊びでも、仙道があたしを試合に誘ってくれたんだ。あたしが彼女だから。
もしかしたら仙道と少し話せるかもしれないなんて淡い期待を抱いて少し早めに体育館へ向かったけれど、館内をウロウロしているバスケ部員に仙道の姿はなかった。
凄くバスケットが上手いと聞いていたから、バスケには並々ならぬ気合をいれているのかと思っていたけれど、そうでもないのかもしれない。元々運動神経がいいからなんだろう。背も高いし、そういうのってあると思う。
場違いなのは自覚していたから、二年の部員と顔を合わせるのが気まずくて、あたしは早々に二階へ上がった。
それでも、後から来た二年のギャラリーには変な顔で見られたような気がする。
あたしみたいなのがバスケ部の試合を見に来ているのがよっぽど意外なんだろう。場違いが何しに来たんだって視線を感じる。
あたしは周りが見えないふりで、ただひたすら体育館の床に描かれたコートを見ていた。
やかましいくらいのバスケットボールの音が体育館に響いている。仙道はまだ来ない。
遂に先ほどまで学ラン姿だった相手チームが赤のユニフォームに着替えた格好で再び姿を現してもまだ仙道の姿がないから、とうとう私はと今日の試合に仙道は出ないのではないかとさえ思い始めていた。
仙道のことをちょっと疑い始めた頃、彼がようやく姿を現した。
ほっと顔が緩んだその視線の先で、仙道は彼を待っていた陵南の選手にあっという間に取り囲まれていた。
彼はいつだって、どこでだってこういう立ち居地で、私とはまるで正反対に位置する人種だと再確認させられる。
初めて見るユニフォーム姿の仙道はいつもと違って見えた。
長く締まった手足はいつもの学ラン姿では分からないもので、思わずドキリとしてしまった自分が無性に恥ずかしくなった。
仙道はカッコよかった。
贔屓目とかじゃないと思う。
バスケのルールなんて教科書に載っている程度しか知らないし、速くて激しい動きを追うのに精一杯だったけれど、それでも普段見ることのできない仙道に思わず見とれていた。
それが冗談でも、私が隣に並んではいけない人なんじゃないかと思った。
同時に私がこんな人の隣に並べるチャンスなんて、それが嘘だったとしても、二度とない。
持ち前のネガティブな感情が渦巻く。
どうか神様、もう少しだけ夢を見させてください。
私が彼の彼女だっていう、ありえない夢を。
試合が終わって気づけば祈るように両手を胸の前で握り締めていた。
今の私には多分、試合の結果よりも自分の未来のことのほうが重要だった。
部員がパイプ椅子を片付け始める。
選手が自分の荷物を集めながら体育館を出て行く。二階のギャラリーを気にしている人もいる。
私の目は仙道をひたすら追いかけている。けれど仙道は今、この時に、私の事を思い出したりなんてしないだろう。
「………」
そのときだ。
顎を上げた仙道が何かを探すようにぐるりと二階を見わたした。そして私の方を見てニコリと満足そうに笑って見せたのだ。
それが誰に向けられたものか確認する間もなく、他の部員に背中を押された彼は直ぐに視線をはずした。私はそれが自分に向けられたものだとは信じられず周囲を確認する。
けれど私の周囲に人は居ない。
「…え…」
「え~」と誰にも聞こえないような小さな声を漏らして、私は周囲に細心の注意を払いながら体育館を出て行く仙道の背中に小さく手を振ってみた。もちろん彼が気づくはずないのだけれど。
小さなことで落ちたり上がったり、苦い、苦しい、けれど嬉しくて楽しい。
いや、色々と想定外の連続だったんだけど、
とにかく何をどうしてよいのか皆目検討がつかなかった。
また残念な事に、それについて相談の出来る友人も持ち合わせていなかった。
恋愛音痴な頭をフル回転させた結果、手ぶらで行くことはできないような気がして、差し入れのポカリとタオルとを準備してみた。
試合の合間の休憩に、マネージャーが選手にそれらを渡している光景を思い描きながら鞄に詰め込んでいたら、途中で自分がマネージャーではないことに気付いたけど、備えあればなんとやらと思ったからやっぱり持っていくことにした。
ドキドキよりワクワクが大きかったような気がする。
自分が凄く特別な事をしているような、うまく言えないけれどそんな感じだった。
そう思うことくらいいいんじゃないかって思った。
例え仙道があたしを好きじゃなくても、ただからかわれているだけだったとしても、ゴッゴ遊びでも、仙道があたしを試合に誘ってくれたんだ。あたしが彼女だから。
もしかしたら仙道と少し話せるかもしれないなんて淡い期待を抱いて少し早めに体育館へ向かったけれど、館内をウロウロしているバスケ部員に仙道の姿はなかった。
凄くバスケットが上手いと聞いていたから、バスケには並々ならぬ気合をいれているのかと思っていたけれど、そうでもないのかもしれない。元々運動神経がいいからなんだろう。背も高いし、そういうのってあると思う。
場違いなのは自覚していたから、二年の部員と顔を合わせるのが気まずくて、あたしは早々に二階へ上がった。
それでも、後から来た二年のギャラリーには変な顔で見られたような気がする。
あたしみたいなのがバスケ部の試合を見に来ているのがよっぽど意外なんだろう。場違いが何しに来たんだって視線を感じる。
あたしは周りが見えないふりで、ただひたすら体育館の床に描かれたコートを見ていた。
やかましいくらいのバスケットボールの音が体育館に響いている。仙道はまだ来ない。
遂に先ほどまで学ラン姿だった相手チームが赤のユニフォームに着替えた格好で再び姿を現してもまだ仙道の姿がないから、とうとう私はと今日の試合に仙道は出ないのではないかとさえ思い始めていた。
仙道のことをちょっと疑い始めた頃、彼がようやく姿を現した。
ほっと顔が緩んだその視線の先で、仙道は彼を待っていた陵南の選手にあっという間に取り囲まれていた。
彼はいつだって、どこでだってこういう立ち居地で、私とはまるで正反対に位置する人種だと再確認させられる。
初めて見るユニフォーム姿の仙道はいつもと違って見えた。
長く締まった手足はいつもの学ラン姿では分からないもので、思わずドキリとしてしまった自分が無性に恥ずかしくなった。
仙道はカッコよかった。
贔屓目とかじゃないと思う。
バスケのルールなんて教科書に載っている程度しか知らないし、速くて激しい動きを追うのに精一杯だったけれど、それでも普段見ることのできない仙道に思わず見とれていた。
それが冗談でも、私が隣に並んではいけない人なんじゃないかと思った。
同時に私がこんな人の隣に並べるチャンスなんて、それが嘘だったとしても、二度とない。
持ち前のネガティブな感情が渦巻く。
どうか神様、もう少しだけ夢を見させてください。
私が彼の彼女だっていう、ありえない夢を。
試合が終わって気づけば祈るように両手を胸の前で握り締めていた。
今の私には多分、試合の結果よりも自分の未来のことのほうが重要だった。
部員がパイプ椅子を片付け始める。
選手が自分の荷物を集めながら体育館を出て行く。二階のギャラリーを気にしている人もいる。
私の目は仙道をひたすら追いかけている。けれど仙道は今、この時に、私の事を思い出したりなんてしないだろう。
「………」
そのときだ。
顎を上げた仙道が何かを探すようにぐるりと二階を見わたした。そして私の方を見てニコリと満足そうに笑って見せたのだ。
それが誰に向けられたものか確認する間もなく、他の部員に背中を押された彼は直ぐに視線をはずした。私はそれが自分に向けられたものだとは信じられず周囲を確認する。
けれど私の周囲に人は居ない。
「…え…」
「え~」と誰にも聞こえないような小さな声を漏らして、私は周囲に細心の注意を払いながら体育館を出て行く仙道の背中に小さく手を振ってみた。もちろん彼が気づくはずないのだけれど。
小さなことで落ちたり上がったり、苦い、苦しい、けれど嬉しくて楽しい。