Cinderellaになれなくて
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彼氏が出来たら女の子は綺麗になるんだって。
純粋に彼氏が出来たって言うのとはちょっと違うんだけど、確かにあたしも家で鏡に向う時間が増えたと思う。
やたらブラッシングの回数が増えて、眉毛の手入れに費やす時間が増えた。
それでも、あからさまに自分を変えてしまうのは何だか違う気がして、やっぱりあたしはモサい子のままだった。
もしかしたら変な意地があったのかもしれない。
アイツ一人で本気になってウゼーとか思われるのは癪だった。
実際、仙道はちっともあたしを彼女扱いしなかった。
昼休みは大抵机に突っ伏して寝ているか、体育館でバスケをしていたし、放課後だって一緒に帰らない―――まぁ、これはあたしが周囲を見て学習した彼氏と彼女のあり方で、こうでなければならないと言うわけではないんだけど。
それでも会話くらいはするようになったから、馬鹿みたいだけど、あたしはそれだけで嬉しかった。
男の子に縁のないあたしに、話しかけてくれる人がいて、それがあの仙道なんだから。
自分の気持ちも立ち位置も分からないままだったけど、これはこれでいいような気がしていた。
大丈夫。
あたしはいつ仙道にフラれても大丈夫。
好きってわけじゃないし、彼女気取るつもりもない。
「明後日、男バス練習試合なんだって?」
盗み聞きするつもりはなかったんだけど、そんな声が耳に入って、声の方向を見たら女子に囲まれた仙道の姿があった。
男バスは仙道の所属する部だけど、正直“へぇ”としか思わなかった。
別にバスケに興味はないし、っていうかスポーツ自体に興味がないし、一人で見に行ったって面白いもんじゃないだろうし。
「あー、そういやそうだったかな」
仙道が適当な返事を返している。これはそう珍しくない光景だ。
あたしが自分の席から何の気なしにそんな仙道を見ていたら不意に目が合った。
他意はなくても、女の子と楽しそうにお喋りしている仙道を見ていたっていう気まずさに思わず目を逸らしてしまって、途端に目を逸らした事が不自然で更に気まずいような気がして俯いた。
あたしって、どうしてこんなに間が悪いんだろうとか、どうしてもっと上手く立ち回れないんだろうとか、そんなモヤモヤで胸が重くなる。
嫉妬してたわけじゃない。
でも仙道には、どう映っただろうと考えると、そんな自分が嫌で嫌で仕方がなくなってしまう。
予鈴が鳴って、モヤモヤを誤魔化すように筆箱を弄っていたあたしは、側で立ち止まる人影に恐る恐る顔を上げた。
けれどそこに立つ仙道は、何時もと変わらない穏やかな表情でいる。
「見に来る?」
「……え?」
「明後日、練習試合なんだ。暇ならさ」
思いもかけない言葉に、咄嗟の言葉が出てこないあたしは、ただ仙道を見上げた。
するとあたしが戸惑っていると思ったのか仙道は「あ」と声をあげた。
「でもせっかくの休みだから、ゆっくりしたいか。朝から駆り出されるのも面倒だよな」
そして少し申し訳なさそうに笑った。
あたしは仙道が誘ってくれたことが嬉しくて――もっと言えば仙道があたしに気をつかってくれたんだろうということが、本当に凄く嬉しくて、とにかくその気持ちを伝えなくっちゃとそれだけは思った。
「ううん、行く。行くよ。応援に行く」
焦って同じことを何回も口にしていた。
ちょっと意外そうな顔をした仙道だったけど、直ぐに眉尻を下げてニコリと笑った。
「じゃ明後日、ウチの体育館な」
そう言って席に戻ろうとした仙道を「あの…」という心許なげな声で呼び止める。
会話をするようになったと言っても、大抵は仙道が話しかけてきてくれて、あたしはそれに答えるってだけだから、自分から話しかけるのはやっぱり緊張するし遠慮してしまう。
「ん?」
仙道は嫌な顔ひとつ見せずに、あたしの声に反応してくれた。
「時間は…」
仙道がポカンとした顔をしたから、あたしは何か変な事を言ってしまっただろうかと内心タジタジになってしまう。
仙道は視線を宙に泳がせた。
「えーと、確か9時半…集合だったかな、試合開始だったかな」
今度はあたしがポカンとしてしまう。
「10時くらいに来たらいーんじゃね?」
「え、あ、はぁ…」
適当すぎてビックリするよって言葉は飲み込んだ。
すると仙道がフッと目を細める。
「今、呆れただろ」
「いや、そんなことは…」
「いーよ、遠慮しなくて。自覚あるからさ」
あんまり遠慮してもシラケるだけだろうと思って「少しだけ」といったら、仙道はどこか満足げに笑った。
だから、あたしは何故だかまた嬉しくなってしまって、そしたら、ちょっと気持ちも楽になって、次の言葉はスルリと出た。
「あの、でも、ちゃんと最初から見たいから、9時半には体育館に行っとくね」
「真面目なんだな」
なんかちょっと違うと思ったけど、後からチームメイトに確認してきてくれたのか、ちゃんと試合の開始時間を教えてくれたんだから、仙道って優しいっていうか面倒見のいい人なんだなとも思った。
純粋に彼氏が出来たって言うのとはちょっと違うんだけど、確かにあたしも家で鏡に向う時間が増えたと思う。
やたらブラッシングの回数が増えて、眉毛の手入れに費やす時間が増えた。
それでも、あからさまに自分を変えてしまうのは何だか違う気がして、やっぱりあたしはモサい子のままだった。
もしかしたら変な意地があったのかもしれない。
アイツ一人で本気になってウゼーとか思われるのは癪だった。
実際、仙道はちっともあたしを彼女扱いしなかった。
昼休みは大抵机に突っ伏して寝ているか、体育館でバスケをしていたし、放課後だって一緒に帰らない―――まぁ、これはあたしが周囲を見て学習した彼氏と彼女のあり方で、こうでなければならないと言うわけではないんだけど。
それでも会話くらいはするようになったから、馬鹿みたいだけど、あたしはそれだけで嬉しかった。
男の子に縁のないあたしに、話しかけてくれる人がいて、それがあの仙道なんだから。
自分の気持ちも立ち位置も分からないままだったけど、これはこれでいいような気がしていた。
大丈夫。
あたしはいつ仙道にフラれても大丈夫。
好きってわけじゃないし、彼女気取るつもりもない。
「明後日、男バス練習試合なんだって?」
盗み聞きするつもりはなかったんだけど、そんな声が耳に入って、声の方向を見たら女子に囲まれた仙道の姿があった。
男バスは仙道の所属する部だけど、正直“へぇ”としか思わなかった。
別にバスケに興味はないし、っていうかスポーツ自体に興味がないし、一人で見に行ったって面白いもんじゃないだろうし。
「あー、そういやそうだったかな」
仙道が適当な返事を返している。これはそう珍しくない光景だ。
あたしが自分の席から何の気なしにそんな仙道を見ていたら不意に目が合った。
他意はなくても、女の子と楽しそうにお喋りしている仙道を見ていたっていう気まずさに思わず目を逸らしてしまって、途端に目を逸らした事が不自然で更に気まずいような気がして俯いた。
あたしって、どうしてこんなに間が悪いんだろうとか、どうしてもっと上手く立ち回れないんだろうとか、そんなモヤモヤで胸が重くなる。
嫉妬してたわけじゃない。
でも仙道には、どう映っただろうと考えると、そんな自分が嫌で嫌で仕方がなくなってしまう。
予鈴が鳴って、モヤモヤを誤魔化すように筆箱を弄っていたあたしは、側で立ち止まる人影に恐る恐る顔を上げた。
けれどそこに立つ仙道は、何時もと変わらない穏やかな表情でいる。
「見に来る?」
「……え?」
「明後日、練習試合なんだ。暇ならさ」
思いもかけない言葉に、咄嗟の言葉が出てこないあたしは、ただ仙道を見上げた。
するとあたしが戸惑っていると思ったのか仙道は「あ」と声をあげた。
「でもせっかくの休みだから、ゆっくりしたいか。朝から駆り出されるのも面倒だよな」
そして少し申し訳なさそうに笑った。
あたしは仙道が誘ってくれたことが嬉しくて――もっと言えば仙道があたしに気をつかってくれたんだろうということが、本当に凄く嬉しくて、とにかくその気持ちを伝えなくっちゃとそれだけは思った。
「ううん、行く。行くよ。応援に行く」
焦って同じことを何回も口にしていた。
ちょっと意外そうな顔をした仙道だったけど、直ぐに眉尻を下げてニコリと笑った。
「じゃ明後日、ウチの体育館な」
そう言って席に戻ろうとした仙道を「あの…」という心許なげな声で呼び止める。
会話をするようになったと言っても、大抵は仙道が話しかけてきてくれて、あたしはそれに答えるってだけだから、自分から話しかけるのはやっぱり緊張するし遠慮してしまう。
「ん?」
仙道は嫌な顔ひとつ見せずに、あたしの声に反応してくれた。
「時間は…」
仙道がポカンとした顔をしたから、あたしは何か変な事を言ってしまっただろうかと内心タジタジになってしまう。
仙道は視線を宙に泳がせた。
「えーと、確か9時半…集合だったかな、試合開始だったかな」
今度はあたしがポカンとしてしまう。
「10時くらいに来たらいーんじゃね?」
「え、あ、はぁ…」
適当すぎてビックリするよって言葉は飲み込んだ。
すると仙道がフッと目を細める。
「今、呆れただろ」
「いや、そんなことは…」
「いーよ、遠慮しなくて。自覚あるからさ」
あんまり遠慮してもシラケるだけだろうと思って「少しだけ」といったら、仙道はどこか満足げに笑った。
だから、あたしは何故だかまた嬉しくなってしまって、そしたら、ちょっと気持ちも楽になって、次の言葉はスルリと出た。
「あの、でも、ちゃんと最初から見たいから、9時半には体育館に行っとくね」
「真面目なんだな」
なんかちょっと違うと思ったけど、後からチームメイトに確認してきてくれたのか、ちゃんと試合の開始時間を教えてくれたんだから、仙道って優しいっていうか面倒見のいい人なんだなとも思った。