Cinderellaになれなくて
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驚いた高木さんの顔がやがてムッとするのを見て、あたしはようやく現実の世界に戻って来ることができた気がする。
「へー。随分不釣り合いなカップル」とは彼女の捨て台詞。
考えてみれば仙道があたしの告白をOKしたのは、妥協したからでも優しさからでもなく、この高木さんに負けたくないと言う意地、ただそれだけに違いないのだ。
高木さんと仙道との痴話喧嘩の飛び火を喰らってしまったあたしは、物凄く迷惑と思って然るべきなのだけれど、あたしの頭の中はそんなんじゃない、もっとどうでもいい事で一杯になってしまった。
例えば、仙道をあたしにとっての初めての彼氏と言ってもいいのか、とか。
でも仙道はあたしを付き合った人の人数に入れる気は更々ないだろうから、あたしも止めとこう。なんだか惨めだ。
それから、今までと何か変えるべきなのか、例えば帰りは待っておくべきなのか、とか。
よく昼休みを一緒に過ごしたり、二人で下校しているカップルの姿を見るけれど、あたしたちにはそれはナシだろう。
仙道もこんなダサイ女に付きまとわれるのは迷惑だろうし、あたしだって仙道にこれっぽっちも好意を持たれてない事を知りながらそんな勘違い女になりたくない。
他にも電話番号くらい交換するべきなのか、とか。
あ、これはもうあたしの考えることじゃない。向こうが聞いてこなければこっちだって教える必要も聞く必要もないんだし。
何となく浮かれてしまいそうになったけれど、実際付き合ってるとは名ばかりなわけだし、ほとぼりが醒めた頃には自然だろうが強制だろうが消滅してしまう仮面カップルにすぎないんだ。
少しでも期待すると傷つきそうだから、あたしは最悪のケースばかり考えることに決めた。
それでも次の日の朝になると「おはよう」の挨拶くらいしたほうがいいんだろうか、仙道は嫌がらないだろうか、と、やっぱりどこかちょっと浮かれてしまっていたように思う。
仙道は本鈴ギリギリか、もしくはHRが終わる頃に教室にやってくるから当然まだ居ない。
あたしは落ち着かない感じで自分の席に座り、英単語を覚えるフリで教科書を開いたけれど、頭になんてちっとも入ってきやしない。
やがて先生よりも遅れてHRギリギリにやってきた仙道にあたしを見る余裕なんてなくて、あたしの朝はいつもと何等変わりなく過ぎて行ったのだった。
それからも授業の合間の休み時間にさえ、仙道が話しかけてくることは疎か、彼と目が合うことすらなくて、“最初からこんなものだと分かっていたはずじゃないか”と、何度も自分に言い聞かせなければならなかった。
その日教室の外でお昼を済ませたあたしは、予鈴が鳴る頃に教室に戻った。
何気なく仙道の席を見たけれどそこに本人の姿はなくて、やっぱり少し落胆した。
次の授業の教科書を取り出すために机の中を覗いていると、あたしの前の席に人が座ったのが分かった。
特に気にせず教科書を机から引っ張り出し、再び顔を上げたあたしはびっくりして声をあげてしまう。
「わっ」
それはあたしの前の席に座って、あたしを見ていたのが仙道だったから。
途端に胸がバクバクし始めた。
「よう」と笑顔を向ける仙道は、あたしに何の用事があって今ここに居るのだろう。
“昨日のはやっぱりナシにしてくれ”とか、きっとそんな話に違いないんだ。
「昨日さ…」
モヤモヤし始めた胸が、胃の辺りまで沈んでるんじゃないかってくらい重たく感じる。
「…うん」
あたしは出来るだけ平静を装うように努めたけれど、昨日の今日でフられるのは流石に結構ヘコむと思う。
あたしの妄想にも似た危惧はなんだったんだろうって、バカバカしすぎて泣けてきそう。
「先に帰っちまったんだな」
仙道のそれに、あたしはポカンとして彼を見上げた。
「…え?」
「いや、もしかしたら待ってんのかなーって探したんだけど」
え、それってまさか一緒に帰るつもりだったってことなの?
「居なかったからさ。」
「あ、ご、ごめ…」
「いや、いーんだけど」
そして仙道はニッコリ笑う。
「待たれると気使うから、先に帰ってくれた方がいーんだ」
「……、あ」
あたしに部活終わりを待つなって言いに来たんだと思った。
「あ、そうなんだ。そうだね、うん、わかった。大丈夫、待ったりしないから」
「そ、」
あたしの返事を聞いて安心したのだろうか、仙道は再びニコリと笑った。
彼はあたしが自分自身のプライドの為に、物分かりのいい子を演じていることになんか一生気づかないのだろう。
あたしの全身全霊が仙道に向けられていたとしても、彼がそれに気づくことはない。
何故なら彼は、あたしなんて見ていないんだから。
俯いたあたしの頭上で本令が鳴り始める。
「お、ヤバい」
立ち上がった仙道は、泣きそうなあたしに気づかないまま席を離れた。
「へー。随分不釣り合いなカップル」とは彼女の捨て台詞。
考えてみれば仙道があたしの告白をOKしたのは、妥協したからでも優しさからでもなく、この高木さんに負けたくないと言う意地、ただそれだけに違いないのだ。
高木さんと仙道との痴話喧嘩の飛び火を喰らってしまったあたしは、物凄く迷惑と思って然るべきなのだけれど、あたしの頭の中はそんなんじゃない、もっとどうでもいい事で一杯になってしまった。
例えば、仙道をあたしにとっての初めての彼氏と言ってもいいのか、とか。
でも仙道はあたしを付き合った人の人数に入れる気は更々ないだろうから、あたしも止めとこう。なんだか惨めだ。
それから、今までと何か変えるべきなのか、例えば帰りは待っておくべきなのか、とか。
よく昼休みを一緒に過ごしたり、二人で下校しているカップルの姿を見るけれど、あたしたちにはそれはナシだろう。
仙道もこんなダサイ女に付きまとわれるのは迷惑だろうし、あたしだって仙道にこれっぽっちも好意を持たれてない事を知りながらそんな勘違い女になりたくない。
他にも電話番号くらい交換するべきなのか、とか。
あ、これはもうあたしの考えることじゃない。向こうが聞いてこなければこっちだって教える必要も聞く必要もないんだし。
何となく浮かれてしまいそうになったけれど、実際付き合ってるとは名ばかりなわけだし、ほとぼりが醒めた頃には自然だろうが強制だろうが消滅してしまう仮面カップルにすぎないんだ。
少しでも期待すると傷つきそうだから、あたしは最悪のケースばかり考えることに決めた。
それでも次の日の朝になると「おはよう」の挨拶くらいしたほうがいいんだろうか、仙道は嫌がらないだろうか、と、やっぱりどこかちょっと浮かれてしまっていたように思う。
仙道は本鈴ギリギリか、もしくはHRが終わる頃に教室にやってくるから当然まだ居ない。
あたしは落ち着かない感じで自分の席に座り、英単語を覚えるフリで教科書を開いたけれど、頭になんてちっとも入ってきやしない。
やがて先生よりも遅れてHRギリギリにやってきた仙道にあたしを見る余裕なんてなくて、あたしの朝はいつもと何等変わりなく過ぎて行ったのだった。
それからも授業の合間の休み時間にさえ、仙道が話しかけてくることは疎か、彼と目が合うことすらなくて、“最初からこんなものだと分かっていたはずじゃないか”と、何度も自分に言い聞かせなければならなかった。
その日教室の外でお昼を済ませたあたしは、予鈴が鳴る頃に教室に戻った。
何気なく仙道の席を見たけれどそこに本人の姿はなくて、やっぱり少し落胆した。
次の授業の教科書を取り出すために机の中を覗いていると、あたしの前の席に人が座ったのが分かった。
特に気にせず教科書を机から引っ張り出し、再び顔を上げたあたしはびっくりして声をあげてしまう。
「わっ」
それはあたしの前の席に座って、あたしを見ていたのが仙道だったから。
途端に胸がバクバクし始めた。
「よう」と笑顔を向ける仙道は、あたしに何の用事があって今ここに居るのだろう。
“昨日のはやっぱりナシにしてくれ”とか、きっとそんな話に違いないんだ。
「昨日さ…」
モヤモヤし始めた胸が、胃の辺りまで沈んでるんじゃないかってくらい重たく感じる。
「…うん」
あたしは出来るだけ平静を装うように努めたけれど、昨日の今日でフられるのは流石に結構ヘコむと思う。
あたしの妄想にも似た危惧はなんだったんだろうって、バカバカしすぎて泣けてきそう。
「先に帰っちまったんだな」
仙道のそれに、あたしはポカンとして彼を見上げた。
「…え?」
「いや、もしかしたら待ってんのかなーって探したんだけど」
え、それってまさか一緒に帰るつもりだったってことなの?
「居なかったからさ。」
「あ、ご、ごめ…」
「いや、いーんだけど」
そして仙道はニッコリ笑う。
「待たれると気使うから、先に帰ってくれた方がいーんだ」
「……、あ」
あたしに部活終わりを待つなって言いに来たんだと思った。
「あ、そうなんだ。そうだね、うん、わかった。大丈夫、待ったりしないから」
「そ、」
あたしの返事を聞いて安心したのだろうか、仙道は再びニコリと笑った。
彼はあたしが自分自身のプライドの為に、物分かりのいい子を演じていることになんか一生気づかないのだろう。
あたしの全身全霊が仙道に向けられていたとしても、彼がそれに気づくことはない。
何故なら彼は、あたしなんて見ていないんだから。
俯いたあたしの頭上で本令が鳴り始める。
「お、ヤバい」
立ち上がった仙道は、泣きそうなあたしに気づかないまま席を離れた。