Cinderellaになれなくて
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半日も経たないうちにあたしは自分の発言を後悔し始めた。
って言うか教室に入って来た仙道の姿を見た時点でもう後悔していた。
このあたしが、あの仙道に告白なんて間違いなく明日の朝にはクラスと言わず全校中の笑い者だ。
身の程知らずなんて後ろ指さされて。
それでもこれを蹴って高木さんの陰湿に違いない嫌がらせを受けるくらいなら、75日間の噂に耐えるほうがいいのかもしれないと自分を奮い立たせる。
あたしはいつになくソワソワしながら一日を過ごしたけれど、帰りのSHRが終わる頃になってもどうやって仙道に近づき、誘い出し、そして告白すればいいのか皆目検討がつかなかった。
そうこうしているうちにSHRも終わり、各々席を立ち始めた。
そんな中、当の仙道はと言えばのんびりと椅子に凭れて友人と喋っているから、これじゃあ近づけないと焦りばかりが増してゆく。
やがてその友人達と連れ立って教室を出ていく仙道を、あたしはただ見送るしか出来なかった。
それが本気でなくても、告白という行為の難しさを痛感しながら下駄箱へ降りると、そこには高木さんが待ち構えていた。
そして性格の滲み出たような意地悪な笑みで「どうだった?」なんて聞いてくるんだから、ホントに底意地の悪いコだなって思う。
「…いや、まだ…」
口ごもるあたしに彼女は「だと思った」と何故か余裕の笑みを浮かべた。
そして「仙道はたいてい部活に遅れていくから、体育館の側で待っていれば捕まるよ」と有り難いようでそうでもないアドバイスをくれたのだった。
[04]
既に乗り気ではなくなっていたあたしだけれど、仕方なく言われた通りに体育館の前で待つこと30分。
いよいよ諦めて帰ろうとした時に彼は現れた。
「あれ?」
珍しい、と言いたげな仙道だけど、彼からあたしに気付いてくれたのはラッキーだったと思う。
急いで仙道に駆け寄り、「あの、少し、いいかな…?」と、おっかなびっくり声をかけると、彼はまた少し驚いた顔をした。
「いーけど…?」
あたしは仙道を体育館の入り口から離れた人目につかない所に連れて行き、そこで大きく深呼吸する。
ええい、ままよ!と顔を上げた途端に両手を合わせて苦笑いする仙道の姿が目に飛び込んできた。
「ごめん!」
「………え…?」
もう?
告白する前にフられましたよ。
信じられない新記録樹立。格好悪すぎて笑えない。
「俺、何か委員になってたっけ?」
「ハ?」
意味が分からずキョトンとするあたしに「え、俺今日日直だった?」と更に不可解な発言。
「えーと、いや、あの…」
「あ、現国の斎藤に呼び出し喰らってんの忘れてた。それ?」
首を振るあたしの前で彼は「あと何かあるかなぁ…」と空を仰ぎながら頭をかいた。
そして流石にもう何も思い浮かばなかったのか、あたしに視線を戻して小首をかしげる。
完全に勢いを削がれたあたしは今すぐ逃げ出したい衝動に駆られた。
だって何度もこんなシュチュエーションを経験したであろうはずの彼でさえ、あたしから告白されるだなんて想定の範疇にないのがモロに分かってしまったんだから。
チラリと視線をあげると仙道があたしの言葉を待っている。
思い付け言い訳。
しかし言い訳の代わりに浮かんだのは高木さんの顔だった。
もーいい。
もーいいよ、皆であたしを笑い者にして。
「わたし…わたしとつ…き合って下さい」
一瞬キョトンとした仙道が「何処に?」と間抜けな返事をよこす。
「じゃなくて、…あの…」
絶対わざとだと思った。そんな鈍感な人いるはずがない。
思わず泣きだしそうなあたしがきつく唇を噛むとそこで彼は今更気付いたように「あぁ」と声を漏らした。
「…参ったな」
彼の小さな呟きはあたしを最高に傷つけ惨めにした。
きっと馬鹿にされている、キモいとか思われている。
「えーと、…それは俺の彼女になりたいって事でいいの?」
違うもん、あたしは別にアンタと付き合いたいなんて思ってない。
他校にも彼女がいて何股もかけてるんだとか、高校生の間に100人切り狙ってるんだとか裏で悪い噂があるのも知ってる。
「誰かに何か言われた?」
「え?」
それは天の助けだと思った。
真実を話せばあたしのなけなしのプライドの完全崩壊は免れる気がした。
「じ…」
「ワリ。んなわけねーよな」
口を開きかけたあたしに彼は申し訳なさそうな苦笑いを見せる。
「なんか俺、全く結び付かなくて。江崎さんってそーゆーのに全く興味なさそうだし。」
そしてまた「あ、ワリ」と繰り返した。
「江崎さんだってあるよな。そりゃそーだ。」
彼の中のカテゴリーではあたしは女子ではなく、限りなくグレーゾーンだったのだろう。
惨めだ。
凄い惨め。
あたしだって他の子と同じ普通の女の子なのに。
地味な子の告白ってそんなに有り得ない事なの?
思わず目頭が熱くなった。泣くのは癪だから我慢しなくちゃと唇を噛む。
「ごめん」でも「無理」でも何でもいいから、早く拒絶の言葉を言ってあたしをこの場所から解放してほしい。
「あ、ワリィ。そーゆーつもりじゃなかったんだけど。」
えーと、と視線を上へ逸らせた仙道は再びあたしを見て言った。
「下の名前何だっけ?」
「…グリ子」
声はもう震えている。
「じゃ、グリ子ちゃん。」
仙道はニコッと笑う。
「これからヨロシク。」
「………え?」
想定外の台詞に泣きそうだった気持ちはどこへやら、思わず涙も引っ込んでキョトンと仙道を見上げた。
「ん?」と彼も眉尻を下げて少し困惑したように首を傾げる。
「え?え?どーゆーこと?」
勘違いだったら恥ずかしいからハッキリさせておかなくてはと思った。
だってそれは有り得ない。
すると彼は「付き合おうって事だよ」と微笑んだ。
意味が分からなくて、いや、意味が分かったからこそ唖然としてしまった。
呆然と立ちすくむあたしは「じゃあ俺、部活だから」と言う声でようやく我に返る。
バイバイと手を振る仙道に、自分も手を振り返したかどうかも分からないほどそれは現実味を帯びていなかった。
って言うか教室に入って来た仙道の姿を見た時点でもう後悔していた。
このあたしが、あの仙道に告白なんて間違いなく明日の朝にはクラスと言わず全校中の笑い者だ。
身の程知らずなんて後ろ指さされて。
それでもこれを蹴って高木さんの陰湿に違いない嫌がらせを受けるくらいなら、75日間の噂に耐えるほうがいいのかもしれないと自分を奮い立たせる。
あたしはいつになくソワソワしながら一日を過ごしたけれど、帰りのSHRが終わる頃になってもどうやって仙道に近づき、誘い出し、そして告白すればいいのか皆目検討がつかなかった。
そうこうしているうちにSHRも終わり、各々席を立ち始めた。
そんな中、当の仙道はと言えばのんびりと椅子に凭れて友人と喋っているから、これじゃあ近づけないと焦りばかりが増してゆく。
やがてその友人達と連れ立って教室を出ていく仙道を、あたしはただ見送るしか出来なかった。
それが本気でなくても、告白という行為の難しさを痛感しながら下駄箱へ降りると、そこには高木さんが待ち構えていた。
そして性格の滲み出たような意地悪な笑みで「どうだった?」なんて聞いてくるんだから、ホントに底意地の悪いコだなって思う。
「…いや、まだ…」
口ごもるあたしに彼女は「だと思った」と何故か余裕の笑みを浮かべた。
そして「仙道はたいてい部活に遅れていくから、体育館の側で待っていれば捕まるよ」と有り難いようでそうでもないアドバイスをくれたのだった。
[04]
既に乗り気ではなくなっていたあたしだけれど、仕方なく言われた通りに体育館の前で待つこと30分。
いよいよ諦めて帰ろうとした時に彼は現れた。
「あれ?」
珍しい、と言いたげな仙道だけど、彼からあたしに気付いてくれたのはラッキーだったと思う。
急いで仙道に駆け寄り、「あの、少し、いいかな…?」と、おっかなびっくり声をかけると、彼はまた少し驚いた顔をした。
「いーけど…?」
あたしは仙道を体育館の入り口から離れた人目につかない所に連れて行き、そこで大きく深呼吸する。
ええい、ままよ!と顔を上げた途端に両手を合わせて苦笑いする仙道の姿が目に飛び込んできた。
「ごめん!」
「………え…?」
もう?
告白する前にフられましたよ。
信じられない新記録樹立。格好悪すぎて笑えない。
「俺、何か委員になってたっけ?」
「ハ?」
意味が分からずキョトンとするあたしに「え、俺今日日直だった?」と更に不可解な発言。
「えーと、いや、あの…」
「あ、現国の斎藤に呼び出し喰らってんの忘れてた。それ?」
首を振るあたしの前で彼は「あと何かあるかなぁ…」と空を仰ぎながら頭をかいた。
そして流石にもう何も思い浮かばなかったのか、あたしに視線を戻して小首をかしげる。
完全に勢いを削がれたあたしは今すぐ逃げ出したい衝動に駆られた。
だって何度もこんなシュチュエーションを経験したであろうはずの彼でさえ、あたしから告白されるだなんて想定の範疇にないのがモロに分かってしまったんだから。
チラリと視線をあげると仙道があたしの言葉を待っている。
思い付け言い訳。
しかし言い訳の代わりに浮かんだのは高木さんの顔だった。
もーいい。
もーいいよ、皆であたしを笑い者にして。
「わたし…わたしとつ…き合って下さい」
一瞬キョトンとした仙道が「何処に?」と間抜けな返事をよこす。
「じゃなくて、…あの…」
絶対わざとだと思った。そんな鈍感な人いるはずがない。
思わず泣きだしそうなあたしがきつく唇を噛むとそこで彼は今更気付いたように「あぁ」と声を漏らした。
「…参ったな」
彼の小さな呟きはあたしを最高に傷つけ惨めにした。
きっと馬鹿にされている、キモいとか思われている。
「えーと、…それは俺の彼女になりたいって事でいいの?」
違うもん、あたしは別にアンタと付き合いたいなんて思ってない。
他校にも彼女がいて何股もかけてるんだとか、高校生の間に100人切り狙ってるんだとか裏で悪い噂があるのも知ってる。
「誰かに何か言われた?」
「え?」
それは天の助けだと思った。
真実を話せばあたしのなけなしのプライドの完全崩壊は免れる気がした。
「じ…」
「ワリ。んなわけねーよな」
口を開きかけたあたしに彼は申し訳なさそうな苦笑いを見せる。
「なんか俺、全く結び付かなくて。江崎さんってそーゆーのに全く興味なさそうだし。」
そしてまた「あ、ワリ」と繰り返した。
「江崎さんだってあるよな。そりゃそーだ。」
彼の中のカテゴリーではあたしは女子ではなく、限りなくグレーゾーンだったのだろう。
惨めだ。
凄い惨め。
あたしだって他の子と同じ普通の女の子なのに。
地味な子の告白ってそんなに有り得ない事なの?
思わず目頭が熱くなった。泣くのは癪だから我慢しなくちゃと唇を噛む。
「ごめん」でも「無理」でも何でもいいから、早く拒絶の言葉を言ってあたしをこの場所から解放してほしい。
「あ、ワリィ。そーゆーつもりじゃなかったんだけど。」
えーと、と視線を上へ逸らせた仙道は再びあたしを見て言った。
「下の名前何だっけ?」
「…グリ子」
声はもう震えている。
「じゃ、グリ子ちゃん。」
仙道はニコッと笑う。
「これからヨロシク。」
「………え?」
想定外の台詞に泣きそうだった気持ちはどこへやら、思わず涙も引っ込んでキョトンと仙道を見上げた。
「ん?」と彼も眉尻を下げて少し困惑したように首を傾げる。
「え?え?どーゆーこと?」
勘違いだったら恥ずかしいからハッキリさせておかなくてはと思った。
だってそれは有り得ない。
すると彼は「付き合おうって事だよ」と微笑んだ。
意味が分からなくて、いや、意味が分かったからこそ唖然としてしまった。
呆然と立ちすくむあたしは「じゃあ俺、部活だから」と言う声でようやく我に返る。
バイバイと手を振る仙道に、自分も手を振り返したかどうかも分からないほどそれは現実味を帯びていなかった。