Cinderellaになれなくて
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その日は何かと先生に用事を言い使って、いつもよりも帰りが遅くなった。
置きっぱなした荷物を取りに教室に向かい、少し開いているその扉に手をかけようとして思わず動きを止める。
中から聞こえる女の子の声がどうも穏やかではなくて、足を踏み入れるのに躊躇したからだ。
「何よそれ!好きじゃなかったって事!?」
「まー、そうなるかもな」
「ふざけないでよ!じゃ、なんで付き合ったのよ!?」
「だからー…」
うんざりしたような男の声には聞き覚えがあった。
「付き合ってみたら好きになるかもしれねーって思ったんだって。」
「は?何が付き合ってみたら、よ。あわよくばヤれるとかそういう魂胆だったんでしょ!?」
「…ホラ。そーゆートコが好きになれねぇんだよなぁ。やっぱり。」
小気味よいビンタの音がここまで聞こえてきて思わず苦笑いする。
「ホント、噂どおりの最低男だわ!」
「そりゃどーも」
修羅場だ。
悪趣味だけど面白いから、もう少しだけと欲張って聞き耳を立てた。
「じゃあ何?仙道は告白されたら誰とでも付き合うってわけなんだ?」
その名前にドキリとする。
聞いたことのある声だと思ったのは仙道のものだったんだ。
[02]
あたしはそこで初めて仙道に彼女が居ることを知った。
この様子だと過去形になりそうだけど。
彼は色んな女の子と仲イイから、彼女が居るのかいないのか、どの子が彼女なのかそうでないのか分からないと思うあたしは、よっぽどそういうのに疎いんだろうと思う。
「ま、基本はそーなるかな。別に本命がいるわけじゃなし、出来るなら好意には応えたいじゃん。」
「サイッテー」
仙道の言うことも解るような気がするんだけど。
だって、お互いがお互い好きで付き合い始める確立って凄く少ないと思う。
多少なりともどちらかが…大抵告白されたほうがだけれど、相手が自分の許容範囲なら妥協して付き合ってみたりするもんなんじゃないのかな。
経験ないからわかんないけど。
「じゃ、なに?例えば、アンタのクラスの江崎さんが告って来たとしたら、それでも付き合ってみるんだ?」
身体がカッと熱くなったのは、突然自分の名前が出てきて驚いたからじゃない。
そこでサエない女の子の例として引き合いに出されたのが自分だったからだ。
自分がそんな風に馬鹿にされる対象だったなんて思いもしなかった。
「また極論だなー。」
更に追い討ちをかける仙道の声に身体が震えた。
胸をえぐられるって、こんな感じなんだろうと思う。
確かにあたしは地味な眼鏡っ子だし、よもやあたしの事を好きになる人なんていないだろうとは自分でも分かっているけれど、それでもなけなしのプライドはある。
それをこんな風に二人よってたかって、人の事を何だと思ってるの?
「でも、そうでしょ?今の理論でいけば。」
「ま、そうだな。どうやらこれでフリーになりそうだし。」
「……偽善者ぶって。」
あたしが思ったままの言葉を彼女が代弁した。
馬鹿にしてる。
粉々になった心からは、失望と言うよりかは怒りに似た何かが湧いてきた。
モテるから何だっていうの?カワイイとかカッコイイとかくだらない。
高校生は勉強できてナンボでしょ。
モテるからって大学には行けないし、それだけじゃ就職だってできないわよ。
頭の中で悪態を並べて少し心を落ち着ける。
次に息を止める心地で思い切り引き戸を開けると、教室の中の二人の声がピタリと止んだ。
多分当の本人の登場にビビッて居ると思う。ってか、ビビれ。
二人の視線が自分に向けられているんじゃないかという緊張感に身体をこわばらせながらも、あたしは何も知らないフリで自分の席へと向かった。
二人を見る勇気はない。
奇妙に静まり返った教室で、あたしはそそくさと鞄を持つと再び廊下へと向かった。
「江崎サン」
不意に仙道に名前を呼ばれて足を止める。彼に名前を呼ばれるのは初めてではないだろうか。
ゆっくりと振り返り、仙道とその隣の女子生徒の顔を見た。
彼女の顔は知っていた。
同じ学年の少しハデなタイプの、確か名前は高木さんとかいった。
仙道に視線を戻すと、彼は誰にでも見せる人の良い笑顔を…あたしには偽善者面にしか見えなくなったそれを見せた。
「今日は遅いんだね。」
あたしが会話を聞いなかったか様子を伺っているのだろうか。
ならばとあたしははにかむような笑顔を作った。
「うん、先生に用事をたのまれちゃって。」
「そ」と言った仙道は「気をつけてね」とありきたりな言葉を返し、あたしも「うん、バイバイ」とごくありきたりな返事をして教室を出た。
凄く悔しかった。
置きっぱなした荷物を取りに教室に向かい、少し開いているその扉に手をかけようとして思わず動きを止める。
中から聞こえる女の子の声がどうも穏やかではなくて、足を踏み入れるのに躊躇したからだ。
「何よそれ!好きじゃなかったって事!?」
「まー、そうなるかもな」
「ふざけないでよ!じゃ、なんで付き合ったのよ!?」
「だからー…」
うんざりしたような男の声には聞き覚えがあった。
「付き合ってみたら好きになるかもしれねーって思ったんだって。」
「は?何が付き合ってみたら、よ。あわよくばヤれるとかそういう魂胆だったんでしょ!?」
「…ホラ。そーゆートコが好きになれねぇんだよなぁ。やっぱり。」
小気味よいビンタの音がここまで聞こえてきて思わず苦笑いする。
「ホント、噂どおりの最低男だわ!」
「そりゃどーも」
修羅場だ。
悪趣味だけど面白いから、もう少しだけと欲張って聞き耳を立てた。
「じゃあ何?仙道は告白されたら誰とでも付き合うってわけなんだ?」
その名前にドキリとする。
聞いたことのある声だと思ったのは仙道のものだったんだ。
[02]
あたしはそこで初めて仙道に彼女が居ることを知った。
この様子だと過去形になりそうだけど。
彼は色んな女の子と仲イイから、彼女が居るのかいないのか、どの子が彼女なのかそうでないのか分からないと思うあたしは、よっぽどそういうのに疎いんだろうと思う。
「ま、基本はそーなるかな。別に本命がいるわけじゃなし、出来るなら好意には応えたいじゃん。」
「サイッテー」
仙道の言うことも解るような気がするんだけど。
だって、お互いがお互い好きで付き合い始める確立って凄く少ないと思う。
多少なりともどちらかが…大抵告白されたほうがだけれど、相手が自分の許容範囲なら妥協して付き合ってみたりするもんなんじゃないのかな。
経験ないからわかんないけど。
「じゃ、なに?例えば、アンタのクラスの江崎さんが告って来たとしたら、それでも付き合ってみるんだ?」
身体がカッと熱くなったのは、突然自分の名前が出てきて驚いたからじゃない。
そこでサエない女の子の例として引き合いに出されたのが自分だったからだ。
自分がそんな風に馬鹿にされる対象だったなんて思いもしなかった。
「また極論だなー。」
更に追い討ちをかける仙道の声に身体が震えた。
胸をえぐられるって、こんな感じなんだろうと思う。
確かにあたしは地味な眼鏡っ子だし、よもやあたしの事を好きになる人なんていないだろうとは自分でも分かっているけれど、それでもなけなしのプライドはある。
それをこんな風に二人よってたかって、人の事を何だと思ってるの?
「でも、そうでしょ?今の理論でいけば。」
「ま、そうだな。どうやらこれでフリーになりそうだし。」
「……偽善者ぶって。」
あたしが思ったままの言葉を彼女が代弁した。
馬鹿にしてる。
粉々になった心からは、失望と言うよりかは怒りに似た何かが湧いてきた。
モテるから何だっていうの?カワイイとかカッコイイとかくだらない。
高校生は勉強できてナンボでしょ。
モテるからって大学には行けないし、それだけじゃ就職だってできないわよ。
頭の中で悪態を並べて少し心を落ち着ける。
次に息を止める心地で思い切り引き戸を開けると、教室の中の二人の声がピタリと止んだ。
多分当の本人の登場にビビッて居ると思う。ってか、ビビれ。
二人の視線が自分に向けられているんじゃないかという緊張感に身体をこわばらせながらも、あたしは何も知らないフリで自分の席へと向かった。
二人を見る勇気はない。
奇妙に静まり返った教室で、あたしはそそくさと鞄を持つと再び廊下へと向かった。
「江崎サン」
不意に仙道に名前を呼ばれて足を止める。彼に名前を呼ばれるのは初めてではないだろうか。
ゆっくりと振り返り、仙道とその隣の女子生徒の顔を見た。
彼女の顔は知っていた。
同じ学年の少しハデなタイプの、確か名前は高木さんとかいった。
仙道に視線を戻すと、彼は誰にでも見せる人の良い笑顔を…あたしには偽善者面にしか見えなくなったそれを見せた。
「今日は遅いんだね。」
あたしが会話を聞いなかったか様子を伺っているのだろうか。
ならばとあたしははにかむような笑顔を作った。
「うん、先生に用事をたのまれちゃって。」
「そ」と言った仙道は「気をつけてね」とありきたりな言葉を返し、あたしも「うん、バイバイ」とごくありきたりな返事をして教室を出た。
凄く悔しかった。