Secret lover
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あんなふうに言われてしまったらやはり一度くらいはバスケ部の練習を覗きにいかなくてはなるまい。
しかし行こう行こうと思いつつなかなか腰が上がらずにいた。
中間考査が近い。色々と忙しいのだ。言い訳かもしれないが。
不穏な言葉を残して帰った彼らだったが、あれから部屋を訪れることはなかった。それなりに常識はあるようだ。
学校での態度も今までと変わらない。ただの教師と生徒。
「事なかれ主義…か。」
そんなことを言われても、ドラマみたいに熱い教師がどれだけいるというのだろう。
結局バスケ部の練習を見に行けないままテスト期間に突入してしまった。
中間考査が終わると、今度はその採点に時間を割くことになる。
「…なんで?」
採点ミスはない。
しかし何故かこのクラスだけ異常に平均点が高い。
職員室の出入りが慌ただしくなってきた。時計を見ればいい時間。
そろそろ部活を終えて鍵を返しに来る生徒の出入りが増える。
再び入り口に目をやればちょうど良いタイミングで南をみつけた。
「ちょ、南君。」
ちょいちょいと手招きをすると彼は素直に近づいてくる。
「練習なかなか見に行かれへんでごめんなー。」
「それが用件か。」
冷めた視線が痛い。
もしかしたら嫌われているのかもしれない。少しでも体育館を覗きに行っていたら彼の態度はもっと穏和だったのだろうか。
「いや、実は…。」
手に持った赤ペンを机に置いてゆっくりと南を見上げた。
「今回の世界史のテスト、簡単やった?」
「は?…別に。」
彼は怪訝そうな顔をする。
「君んとこクラスだけ異常に平均点がええねんけど。何でかなぁ。」
「カンニングしよったで。」
「は!?」
そういう事が平気でできてしまうのだと驚くと共に、それに何の意味があるのかと首を傾げた。
「せやけど、そんなんでイイ点取ってもなぁ。結局模試では通用せえへんのに。」
「90点取ったらヤらせたんねやろ?」
絶句した。
シラっとした顔の南をマジマジと見つめる。
「え、え、えええ!?」
叫んでしまってから慌てて口を塞いで職員室を見渡す。こちらを振り返る先生方にはヘコヘコと頭を下げておいた。
「そう言うとったで。」
「…なんで?」
「知るかいな。自分で言ったんやろが。」
慌てて答案用紙を捲る。
ああそうだ。
この前パンツがどうのこうの言っていた生徒の点数が異常に高いではないか。
「OK出したつもりないで。アホやなぁ…。ありえへん。」
フン、と南が鼻で笑う。
「どうせまたあやふやな言い方して逃げたんやろ。どないすんねや、本気やでヤツら。」
「本気かて…。常識的に考えたら解るやろ。無茶苦茶やん。あたし先生やねんで?」
「あんたの言う常識って何やねん。」
何となく萎縮してしまいそうになる自分を奮い立たせた。
「常識は、常識やん。」
「そんなもん俺らには通用せぇへん。」
ぴしゃりと言われて黙り込む。
「また適当な事言って逃げようやなんて思いなや。ヤツら怒らせたら手に負えへんで。」
「…脅さんといて。」
思わず身震いした。
「ま、せいぜい頑張り。」
そう言って唇の端をつりあげた南がこちらを一瞥してから背を向ける。
「どーしよ…。学校来られへん。」
こうなったら、と藁にでもすがる気持ちで、職員室を出て行く南を追いかけた。
「待って。南君。」
ゆっくりと足を止めた大きな背中が振り返る。彼は少し迷惑そうに眉間に皺を寄せた。
「後生や、助けたって。」
両手を顔の前で合わせて拝む。
「何でや。」
「この前は助けてくれたやん。お好み焼き奢るし。」
彼はフーと大きなため息を吐いた。
「そんなんで何度でも助けたるかい。元はと言えば適当に流したアンタが悪いんやろ。」
「それはもう、その通り。せやけどあの時は仕方なかってん。」
仕方ない、か、と南が呟く。
「便利な言葉やなそれ。俺の嫌いな言葉やねん。仕方ないでなんでも終わらせてまうんか。」
思わず黙り込むと彼は目を細めた。
「流されるんなら最後まで流されてしまい。その方が楽やで。」
なんとムカつく言われようだろうか。所詮高校生に社会人の辛さが分かってたまるものか。
「流されていい事と悪い事があるやろ。」
「そう思うなら自分で何とかしい。」
彼は事もなげにそう言って背中を向けた。
なんて薄情で気分屋な生徒なのだろうと思うと腹がたつ。生徒に助けを求めること自体が間違っているのかもしれないが。
「南くんは強くて羨ましいわ。」
足を止めた南がチラリと振り返る。
「変な事頼んでごめんやで。もう頼まんから安心してや。」
そう言い残して大股に職員室へ向かった。
一年一年一年。一年の辛抱。
そう自分に言い聞かせて。
しかし行こう行こうと思いつつなかなか腰が上がらずにいた。
中間考査が近い。色々と忙しいのだ。言い訳かもしれないが。
不穏な言葉を残して帰った彼らだったが、あれから部屋を訪れることはなかった。それなりに常識はあるようだ。
学校での態度も今までと変わらない。ただの教師と生徒。
「事なかれ主義…か。」
そんなことを言われても、ドラマみたいに熱い教師がどれだけいるというのだろう。
結局バスケ部の練習を見に行けないままテスト期間に突入してしまった。
中間考査が終わると、今度はその採点に時間を割くことになる。
「…なんで?」
採点ミスはない。
しかし何故かこのクラスだけ異常に平均点が高い。
職員室の出入りが慌ただしくなってきた。時計を見ればいい時間。
そろそろ部活を終えて鍵を返しに来る生徒の出入りが増える。
再び入り口に目をやればちょうど良いタイミングで南をみつけた。
「ちょ、南君。」
ちょいちょいと手招きをすると彼は素直に近づいてくる。
「練習なかなか見に行かれへんでごめんなー。」
「それが用件か。」
冷めた視線が痛い。
もしかしたら嫌われているのかもしれない。少しでも体育館を覗きに行っていたら彼の態度はもっと穏和だったのだろうか。
「いや、実は…。」
手に持った赤ペンを机に置いてゆっくりと南を見上げた。
「今回の世界史のテスト、簡単やった?」
「は?…別に。」
彼は怪訝そうな顔をする。
「君んとこクラスだけ異常に平均点がええねんけど。何でかなぁ。」
「カンニングしよったで。」
「は!?」
そういう事が平気でできてしまうのだと驚くと共に、それに何の意味があるのかと首を傾げた。
「せやけど、そんなんでイイ点取ってもなぁ。結局模試では通用せえへんのに。」
「90点取ったらヤらせたんねやろ?」
絶句した。
シラっとした顔の南をマジマジと見つめる。
「え、え、えええ!?」
叫んでしまってから慌てて口を塞いで職員室を見渡す。こちらを振り返る先生方にはヘコヘコと頭を下げておいた。
「そう言うとったで。」
「…なんで?」
「知るかいな。自分で言ったんやろが。」
慌てて答案用紙を捲る。
ああそうだ。
この前パンツがどうのこうの言っていた生徒の点数が異常に高いではないか。
「OK出したつもりないで。アホやなぁ…。ありえへん。」
フン、と南が鼻で笑う。
「どうせまたあやふやな言い方して逃げたんやろ。どないすんねや、本気やでヤツら。」
「本気かて…。常識的に考えたら解るやろ。無茶苦茶やん。あたし先生やねんで?」
「あんたの言う常識って何やねん。」
何となく萎縮してしまいそうになる自分を奮い立たせた。
「常識は、常識やん。」
「そんなもん俺らには通用せぇへん。」
ぴしゃりと言われて黙り込む。
「また適当な事言って逃げようやなんて思いなや。ヤツら怒らせたら手に負えへんで。」
「…脅さんといて。」
思わず身震いした。
「ま、せいぜい頑張り。」
そう言って唇の端をつりあげた南がこちらを一瞥してから背を向ける。
「どーしよ…。学校来られへん。」
こうなったら、と藁にでもすがる気持ちで、職員室を出て行く南を追いかけた。
「待って。南君。」
ゆっくりと足を止めた大きな背中が振り返る。彼は少し迷惑そうに眉間に皺を寄せた。
「後生や、助けたって。」
両手を顔の前で合わせて拝む。
「何でや。」
「この前は助けてくれたやん。お好み焼き奢るし。」
彼はフーと大きなため息を吐いた。
「そんなんで何度でも助けたるかい。元はと言えば適当に流したアンタが悪いんやろ。」
「それはもう、その通り。せやけどあの時は仕方なかってん。」
仕方ない、か、と南が呟く。
「便利な言葉やなそれ。俺の嫌いな言葉やねん。仕方ないでなんでも終わらせてまうんか。」
思わず黙り込むと彼は目を細めた。
「流されるんなら最後まで流されてしまい。その方が楽やで。」
なんとムカつく言われようだろうか。所詮高校生に社会人の辛さが分かってたまるものか。
「流されていい事と悪い事があるやろ。」
「そう思うなら自分で何とかしい。」
彼は事もなげにそう言って背中を向けた。
なんて薄情で気分屋な生徒なのだろうと思うと腹がたつ。生徒に助けを求めること自体が間違っているのかもしれないが。
「南くんは強くて羨ましいわ。」
足を止めた南がチラリと振り返る。
「変な事頼んでごめんやで。もう頼まんから安心してや。」
そう言い残して大股に職員室へ向かった。
一年一年一年。一年の辛抱。
そう自分に言い聞かせて。