Secret lover
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
寝耳に水とはまさにこの事で、突然現れて金を請求してきた事務局の人にムキになって突っ掛かってしまった。
請求された金額が意味もなく瞬きしたくなるような可愛くない数字だったこと、「バスケ部で参加費未納なのはあなただけです」なんて驚きを通り超してマジギレしそうな台詞を言われたことが理性を崩壊させたのだが、よく考えたら事務局の人は何も悪くない。
急いで金平監督のもとに向かうと「聞いてないんですか?」と逆に驚かれ、その足で今度は学年主任を探す。
すると参加者名簿に勝手に名前を書き込んだ張本人は、悪びれずに「あ、言うの忘れとったわ」と宣った。
「困ります!なんであたしがバスケ部の夏合宿に参加しないといけないんですか!」
「何で言うたかて自分顧問やろ。あの人数に引率者一人は大変やから毎年顧問も参加してんねん。今年はマネージャーもおらんからちょうど良かった言うてな…。」
「聞いてません!」
そんな事知っていたら床に寝転がって駄々をこねてでも顧問なんか引き受けはしなかったのに。
「これも仕事や。」
その台詞は狡い。
よっぽど「ただ働きやないですか」と言ってやろうかと思った。しかし言えないのがサラリーマンの切なさ。
思春期真っ只中の男子校生と一緒に合宿だと?
考えただけで卒倒しそうになる。
臭い、汚い、下品、エトセトラエトセトラ…。
本気で泣きそうになった。
「[#da=1#]ちゃん、ご機嫌斜めやんな。生理中なん?」
からかってくる生徒達を一瞥するも相手にする気力はない。
「はよ帰り~。もうすぐ期末テストやん。帰って勉強し~。」
「パピ子ちゃんが手取り足取り教えてくれたら俺満点取れる思うわ。」
「とりあえず教科書を丸暗記しなさい。」
なんや冷たいなーという生徒の声を無視して階段を下りた。
そして遂にその日は、仕事を終えた後に一人居酒屋という、とても若い独身女性とは思えない暴挙に出た。
飲まなきゃやってられない。しかし家で飲みたい気分でもないのだからしかたない。
ウフフとほろ酔い気分で店を後にし、夜の繁華街をのんびり歩いていた。
こんな息抜きも必要だと思う。最近色々ありすぎた。しかもバスケ部絡みが多い。
一段と耳障りな音はゲームセンターのもの。思わず視線をやればチラホラと見える制服姿の若人達が目に飛び込む。
「…まさか」
ハハハという笑いは直ぐに消えた。
見覚えのある顔が一人二人…。それこそ今日学校で「教科書を丸暗記しろ」と説教した面子だった。
「コラー!」
「やべっ」
飲んでいたせいもあって気が大きくなっていたのだろう。苦笑いしながら道端に出てきた生徒たちを前に喚きたてる。
「はよ帰って勉強しいって言うたやろ!誰がゲーセンにおんねん、こんな時間まで!」
「怒んなや。シワが増えるで~。」
「別嬪さん台なしやで~。」
しかし端にはガラの悪い高校生に囲まれてちょっかいを出されているうら若き乙女に映ったようだ。
行きかう人が集団を避けるようにして通り過ぎてゆく。
「高校生がこんなことしてていいと思ってんの?」
「またまた~、お堅いなぁ~」
生徒の一人が馴れ馴れしく肩に手を置いてきた。ムッとしたのも一瞬で、それは背後から延びてきた何者かの手によって振り払われる。
「こんなとこにおったん?探したわー。」
驚いて振り返った。視線をグッと上に移動させれば見覚えのある綺麗な顔に、思わず「あ」と声をあげる。
「なんやねんお前。」
突然の乱入者に肩をいからせる豊玉生徒たち。しかし背の高い彼に涼やかな目で見下ろされて少し怯んだ様子だった。
「君らに言わなあかんの?」と現れた長身の青年が生徒たちから庇うようにその前に立ちはだかる。
「俺のツレになんか用?」
途端に生徒の一人が何か閃いたような顔をする。チラリとこちらの顔色を伺い気味の悪い笑みを浮かべた。
「……え?」
困惑していると彼は「帰ろーや」と他の生徒達を促し踵を返す。
「あれ?意外と大人しいねんな。」
拍子抜けしたような青年を見上げて、遠ざかる豊玉生徒たちを見送るその顔を再度確認する。
「…土屋…く、ん…?」
すると視線を落とした彼は爽やかな笑みを浮かべた。
「覚えとってくれはったん?」
忘れるはずがない。元カレに似ているとかいないとか、それ以前に女ならこんな男前忘れられない。
「あれ、豊玉やろ。相変わらずガラ悪いなぁ。」
彼等の背中を見送りながらそう言って、彼は視線を戻した。
「大丈夫?」
「え?え、え…」
そこで何故彼が声をかけて来たのかに気付く。彼等に絡まれていると思ったらしい。
「いや、あたし豊玉の先生なんです」と言っていいものか否か。
すると土屋はドキドキするような笑顔を見せた。思わず魂を吸い取られそうになる。
ドラマみたいなこのシュチュエーションに、時めくなと言うほうが無理だ。
「ほな、また変なのに絡まれんように気をつけて帰ってね。」
しかし土屋の発した台詞はそれを一気に現実に引き戻すのに十分な程常識的なもので、どこかでそれ以上の何かを期待していたのかもしれない自分にドキリとし、気まずさを覚えた。慌てて小刻みに頷くと、彼は何事もなかったかのように背をむける。
先日の南のせいだ。
自分が高校生であったなら、せめて教師でなかったら、なんて一瞬でもそんな馬鹿な事を考えてしまったのは。
一際目立つ長身が人込みに消えてゆくのをただ呆然と見送る己の気持ちに戸惑う自分がいた。
請求された金額が意味もなく瞬きしたくなるような可愛くない数字だったこと、「バスケ部で参加費未納なのはあなただけです」なんて驚きを通り超してマジギレしそうな台詞を言われたことが理性を崩壊させたのだが、よく考えたら事務局の人は何も悪くない。
急いで金平監督のもとに向かうと「聞いてないんですか?」と逆に驚かれ、その足で今度は学年主任を探す。
すると参加者名簿に勝手に名前を書き込んだ張本人は、悪びれずに「あ、言うの忘れとったわ」と宣った。
「困ります!なんであたしがバスケ部の夏合宿に参加しないといけないんですか!」
「何で言うたかて自分顧問やろ。あの人数に引率者一人は大変やから毎年顧問も参加してんねん。今年はマネージャーもおらんからちょうど良かった言うてな…。」
「聞いてません!」
そんな事知っていたら床に寝転がって駄々をこねてでも顧問なんか引き受けはしなかったのに。
「これも仕事や。」
その台詞は狡い。
よっぽど「ただ働きやないですか」と言ってやろうかと思った。しかし言えないのがサラリーマンの切なさ。
思春期真っ只中の男子校生と一緒に合宿だと?
考えただけで卒倒しそうになる。
臭い、汚い、下品、エトセトラエトセトラ…。
本気で泣きそうになった。
「[#da=1#]ちゃん、ご機嫌斜めやんな。生理中なん?」
からかってくる生徒達を一瞥するも相手にする気力はない。
「はよ帰り~。もうすぐ期末テストやん。帰って勉強し~。」
「パピ子ちゃんが手取り足取り教えてくれたら俺満点取れる思うわ。」
「とりあえず教科書を丸暗記しなさい。」
なんや冷たいなーという生徒の声を無視して階段を下りた。
そして遂にその日は、仕事を終えた後に一人居酒屋という、とても若い独身女性とは思えない暴挙に出た。
飲まなきゃやってられない。しかし家で飲みたい気分でもないのだからしかたない。
ウフフとほろ酔い気分で店を後にし、夜の繁華街をのんびり歩いていた。
こんな息抜きも必要だと思う。最近色々ありすぎた。しかもバスケ部絡みが多い。
一段と耳障りな音はゲームセンターのもの。思わず視線をやればチラホラと見える制服姿の若人達が目に飛び込む。
「…まさか」
ハハハという笑いは直ぐに消えた。
見覚えのある顔が一人二人…。それこそ今日学校で「教科書を丸暗記しろ」と説教した面子だった。
「コラー!」
「やべっ」
飲んでいたせいもあって気が大きくなっていたのだろう。苦笑いしながら道端に出てきた生徒たちを前に喚きたてる。
「はよ帰って勉強しいって言うたやろ!誰がゲーセンにおんねん、こんな時間まで!」
「怒んなや。シワが増えるで~。」
「別嬪さん台なしやで~。」
しかし端にはガラの悪い高校生に囲まれてちょっかいを出されているうら若き乙女に映ったようだ。
行きかう人が集団を避けるようにして通り過ぎてゆく。
「高校生がこんなことしてていいと思ってんの?」
「またまた~、お堅いなぁ~」
生徒の一人が馴れ馴れしく肩に手を置いてきた。ムッとしたのも一瞬で、それは背後から延びてきた何者かの手によって振り払われる。
「こんなとこにおったん?探したわー。」
驚いて振り返った。視線をグッと上に移動させれば見覚えのある綺麗な顔に、思わず「あ」と声をあげる。
「なんやねんお前。」
突然の乱入者に肩をいからせる豊玉生徒たち。しかし背の高い彼に涼やかな目で見下ろされて少し怯んだ様子だった。
「君らに言わなあかんの?」と現れた長身の青年が生徒たちから庇うようにその前に立ちはだかる。
「俺のツレになんか用?」
途端に生徒の一人が何か閃いたような顔をする。チラリとこちらの顔色を伺い気味の悪い笑みを浮かべた。
「……え?」
困惑していると彼は「帰ろーや」と他の生徒達を促し踵を返す。
「あれ?意外と大人しいねんな。」
拍子抜けしたような青年を見上げて、遠ざかる豊玉生徒たちを見送るその顔を再度確認する。
「…土屋…く、ん…?」
すると視線を落とした彼は爽やかな笑みを浮かべた。
「覚えとってくれはったん?」
忘れるはずがない。元カレに似ているとかいないとか、それ以前に女ならこんな男前忘れられない。
「あれ、豊玉やろ。相変わらずガラ悪いなぁ。」
彼等の背中を見送りながらそう言って、彼は視線を戻した。
「大丈夫?」
「え?え、え…」
そこで何故彼が声をかけて来たのかに気付く。彼等に絡まれていると思ったらしい。
「いや、あたし豊玉の先生なんです」と言っていいものか否か。
すると土屋はドキドキするような笑顔を見せた。思わず魂を吸い取られそうになる。
ドラマみたいなこのシュチュエーションに、時めくなと言うほうが無理だ。
「ほな、また変なのに絡まれんように気をつけて帰ってね。」
しかし土屋の発した台詞はそれを一気に現実に引き戻すのに十分な程常識的なもので、どこかでそれ以上の何かを期待していたのかもしれない自分にドキリとし、気まずさを覚えた。慌てて小刻みに頷くと、彼は何事もなかったかのように背をむける。
先日の南のせいだ。
自分が高校生であったなら、せめて教師でなかったら、なんて一瞬でもそんな馬鹿な事を考えてしまったのは。
一際目立つ長身が人込みに消えてゆくのをただ呆然と見送る己の気持ちに戸惑う自分がいた。