Secret lover
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その日は仕事が遅くなったついでに、激励の意味も込めてバスケ部の練習を覗きに行った。
体育館を覗いてみると既に人気もまばらで、一年生達がモップがけをしている。どうやら今日の練習は終了してしまったようだ。
明日試合だから少し早めに切り上げたのかもしれない。
せっかく寄ってみたのに、と残念に思いながら踵を返す。帰り際のバスケ部員達が手を振りながら明日の試合を見に来いと言うので、こちらも笑顔でそれに応えた。
多分行かないと思うけれど。
体育館の正面口を通り過ぎようとすると、そこから出てきた南に遭遇した。
「あ南君。お疲れ~。」
ちょうど良かったと走り寄る。
「明日で県予選も終わりやな。なんか強い学校と試合なんやて?」
「どーせ、見に来んのやろ。」
冷たい反応だとは思うが、そんな事位でいちいちメゲていたらやってられない。
「まぁそう言わんと頑張ってー。学校中が期待しとるで。」
ポン、と肩を叩くと南は物凄く不愉快そうな顔をした。何か悪いことを言ったのだろうかと首を傾げる。
悪いコトと言えば…と、ふと思い出したのはエースキラーというあだ名だった。
確かにあの時、あの生徒達は南の事をそう言った。
チラリと南の顔を見上げる。
確かにちょっと不機嫌な時の目で睨まれたら殺される、と思う、かもしれない。
「なんや。」
不意に南と目が合って、思わず逸らしてしまった。
「もう少しやる気のある顔をしなさいよ。」
何故そんな呼び名になったのか気になる所ではあるけれど、所詮噂話や中傷の域を出ないものだと思う。
「ウルトラマン、エース…か。」
知らずそう呟いていた。
「は?何や急に。大丈夫か。」
怪訝そうな顔をした南に少しひやりとした。彼はそれに出て来る怪獣と同じ自分のあだ名を知っているのだろうか。否知らないほうがいいに決まっているが。
「アハハ、疲れてんのかなぁ…。」
空笑いすると、南は何かに気付いたように少し視線をあげて「ああ」と呟く。
そしてチラリとこちらを見て唇の端を吊り上げた。
「よー知ってんな、俺のあだ名。」
そんなあだ名があるという事は、本人の耳にも届いていたらしい。
先ほどポロリと零してしまったその言葉を後悔した。
けれど所詮あだ名なんて、些細な事から始まるものだと思う。
フイと顔を逸らして歩き出した南の後ろ姿に声をかけた。
「あたしな、小学生ん時のあだ名アンパンやってん。」
反応はない。
「あ、ヤバイ方やなくてアンパンマンが省略された結果なんやけど。」
足を止めない南を追いかけたが、足の長さが違うので後ろから小走りについて行く形になる。
「せやけどあたしの顔が真ん丸やったのはせいぜい小学校2年生までやってんで。でもずっとアンパンやってん。」
ピタリと南が足を止めた。
「なんやねん。」
不機嫌そうにジロリと睨まれて少し怯んだのは事実。
「…せやから、あだ名なんてそんなもんやん。」
「うざいわ、お前。」
そう言い捨てて再び歩き出した南を慌てて追う。
「イメージ先行型やて先生思てるし。」
君、目つき悪いから、とは流石に言わなかったが。
それでも無視を決め込んで歩く南を止めようとその腕を捕まえた。
「南君は怪獣やないもんな?」
伺うように覗き込もうとすると、その腕は勢い良く振り払われる。
「ウザいっちゅーねん!」
その拍子に振り上げられた南の腕が視界を横切った。
殴られる…!
刹那そう思った。
2年生の生徒が体育教員を殴って停学処分を受けたのはつい先日の事。そんな学校なのだ、ここは。
反射的に目を瞑り肩を竦めた。
「………。」
しかしいつまで経っても来るはずの衝撃は訪れない。
目を開けるべきか否か。
目を開けた途端に殴られたらどうしよう。もしかしてそれくらい根性が悪かったら。
いや待て、大会前に彼がそんな事をするだろうか?
ゆっくりと体の力を抜こうとしたその時。
「!」
一瞬唇に触れた何かに驚いて両手を突き出すと、ドンッと確かな衝撃を感じた。目を開けてみれば弾かれたのは南の身体。
「…なに?」
唖然と南を見上げた。
彼は不機嫌そうに呟く。
「お前ヤバイねん。」
「は?」
思わず眉間に皺を寄せた。これくらいの年齢の子が干渉されるのを嫌うのは仕方のないことだがヤバイとは何だ。人を何かの末期の如く言って。
南と正面から見つめ合うこと数秒。先に目を逸らせたのは彼の方だった。
「…ちょ!」
何事もなかったように歩きだした南を追いかけようと、踏み出したつもりの膝がガクガクと震えて動かないことに気づく。
「…情けな…」
それは殴られると思った刹那の恐怖から回避された安堵感からなのか、それとも。
唇に触れた"何か"のせいなのだろうか。
体育館を覗いてみると既に人気もまばらで、一年生達がモップがけをしている。どうやら今日の練習は終了してしまったようだ。
明日試合だから少し早めに切り上げたのかもしれない。
せっかく寄ってみたのに、と残念に思いながら踵を返す。帰り際のバスケ部員達が手を振りながら明日の試合を見に来いと言うので、こちらも笑顔でそれに応えた。
多分行かないと思うけれど。
体育館の正面口を通り過ぎようとすると、そこから出てきた南に遭遇した。
「あ南君。お疲れ~。」
ちょうど良かったと走り寄る。
「明日で県予選も終わりやな。なんか強い学校と試合なんやて?」
「どーせ、見に来んのやろ。」
冷たい反応だとは思うが、そんな事位でいちいちメゲていたらやってられない。
「まぁそう言わんと頑張ってー。学校中が期待しとるで。」
ポン、と肩を叩くと南は物凄く不愉快そうな顔をした。何か悪いことを言ったのだろうかと首を傾げる。
悪いコトと言えば…と、ふと思い出したのはエースキラーというあだ名だった。
確かにあの時、あの生徒達は南の事をそう言った。
チラリと南の顔を見上げる。
確かにちょっと不機嫌な時の目で睨まれたら殺される、と思う、かもしれない。
「なんや。」
不意に南と目が合って、思わず逸らしてしまった。
「もう少しやる気のある顔をしなさいよ。」
何故そんな呼び名になったのか気になる所ではあるけれど、所詮噂話や中傷の域を出ないものだと思う。
「ウルトラマン、エース…か。」
知らずそう呟いていた。
「は?何や急に。大丈夫か。」
怪訝そうな顔をした南に少しひやりとした。彼はそれに出て来る怪獣と同じ自分のあだ名を知っているのだろうか。否知らないほうがいいに決まっているが。
「アハハ、疲れてんのかなぁ…。」
空笑いすると、南は何かに気付いたように少し視線をあげて「ああ」と呟く。
そしてチラリとこちらを見て唇の端を吊り上げた。
「よー知ってんな、俺のあだ名。」
そんなあだ名があるという事は、本人の耳にも届いていたらしい。
先ほどポロリと零してしまったその言葉を後悔した。
けれど所詮あだ名なんて、些細な事から始まるものだと思う。
フイと顔を逸らして歩き出した南の後ろ姿に声をかけた。
「あたしな、小学生ん時のあだ名アンパンやってん。」
反応はない。
「あ、ヤバイ方やなくてアンパンマンが省略された結果なんやけど。」
足を止めない南を追いかけたが、足の長さが違うので後ろから小走りについて行く形になる。
「せやけどあたしの顔が真ん丸やったのはせいぜい小学校2年生までやってんで。でもずっとアンパンやってん。」
ピタリと南が足を止めた。
「なんやねん。」
不機嫌そうにジロリと睨まれて少し怯んだのは事実。
「…せやから、あだ名なんてそんなもんやん。」
「うざいわ、お前。」
そう言い捨てて再び歩き出した南を慌てて追う。
「イメージ先行型やて先生思てるし。」
君、目つき悪いから、とは流石に言わなかったが。
それでも無視を決め込んで歩く南を止めようとその腕を捕まえた。
「南君は怪獣やないもんな?」
伺うように覗き込もうとすると、その腕は勢い良く振り払われる。
「ウザいっちゅーねん!」
その拍子に振り上げられた南の腕が視界を横切った。
殴られる…!
刹那そう思った。
2年生の生徒が体育教員を殴って停学処分を受けたのはつい先日の事。そんな学校なのだ、ここは。
反射的に目を瞑り肩を竦めた。
「………。」
しかしいつまで経っても来るはずの衝撃は訪れない。
目を開けるべきか否か。
目を開けた途端に殴られたらどうしよう。もしかしてそれくらい根性が悪かったら。
いや待て、大会前に彼がそんな事をするだろうか?
ゆっくりと体の力を抜こうとしたその時。
「!」
一瞬唇に触れた何かに驚いて両手を突き出すと、ドンッと確かな衝撃を感じた。目を開けてみれば弾かれたのは南の身体。
「…なに?」
唖然と南を見上げた。
彼は不機嫌そうに呟く。
「お前ヤバイねん。」
「は?」
思わず眉間に皺を寄せた。これくらいの年齢の子が干渉されるのを嫌うのは仕方のないことだがヤバイとは何だ。人を何かの末期の如く言って。
南と正面から見つめ合うこと数秒。先に目を逸らせたのは彼の方だった。
「…ちょ!」
何事もなかったように歩きだした南を追いかけようと、踏み出したつもりの膝がガクガクと震えて動かないことに気づく。
「…情けな…」
それは殴られると思った刹那の恐怖から回避された安堵感からなのか、それとも。
唇に触れた"何か"のせいなのだろうか。