Short
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
学生の頃から、くっついて離れてまたくっついて、その繰り返しだった。
いつも別れ話を切り出すのは名無子で、寄りを戻そうとするのは五条で、結局名無子が絆されて戻ってしまう。
「これ誰?」
風呂上がりの水分補給にと、キッチンに立ってグラスの水を一気飲みしていた名無子の元までやってきた五条はそう言って、自分のスマホの画面を印籠のように突き出した。
そこには、人目を避けるように公園に植えられた背の高い木の下で肩を並べ、手に持ったノートのようなものを覗き込んでいる様子の名無子と男の姿が映っている。
「見て分かるでしょ。“窓“だよ。何でそんな写真持ってるの?」
五条はその質問を無視して不機嫌そうに両腕を組んだ。
「電話でよくない?何で会う必要があるの?」
また始まった、と内心で溜息を吐きながら、名無子はグラスをシンクに置いた。
「同じような事案が近隣で立て続けに起こってるって報告だったから。何か共通点があるのかと思って詳しい場所を地図に書いてもらっていただけよ」
「書いたのを誰かに取りに行かせろよ」
「これは仕事だよ」
「オマエがここまでやる必要ないよね」
「たまたまついでがあったし。地図で見ながら詳細聞いた方が早かったの」
そこまでいって名無子は、五条にも分かるように大きく息を吐いた。
「…五条、何度も言ってるけど、」
名無子が何度も別れようとしたのは、五条の束縛が辛かったからだ。
五条はシンクの台との距離を詰めて、その間に名無子を閉じ込める。
背の高い五条から見下ろされると威圧感があったが、名無子は負けじと顎をあげて正面から彼を見据えた。
「やっぱり無理だと思う。同じことの繰り返しだから…」
その先の言葉を遮るように五条の指先が名無子の唇をなぞり、顎の下に添えられる。
顔を逸らそうとした名無子のそれは顎を捉える手に阻まれた。
鍛えられた腕から逃げる術などなくて、そのままベッドに引き摺り込まれたら、別れ話は有耶無耶にされてしまう。
だからいつも、電話で名無子が一方的にそれを通告しなければならなかったのだが、しかしいつからかその気力さえも削ぎ落とされてしまっていた。
浅い呼吸を吐く細い指がシーツを握る。
背後から覆い被さるように名無子に挿入した五条が、彼女の乱れた髪を掻き分けながら真っ白な背中に何度もキスを落とすと、その度に名無子の体は小さく震えた。
名無子は五条と距離を取るために京都に拠点を置いた時期もあった。
しかしそれはあまり意味を為さなかった。
京都と東京の行き来など五条には容易すぎたし、最終的には五条が力業で東京に連れ戻してしまったからだ。
深く入った五条のそれが知り尽くした性感帯を刺激して、収縮を促すように胸の尖りを摘まれれば、素直な身体はあっという間に上り詰めてしまう。
堪えきれない名無子の喘ぎ声が五条の脳を刺激して、ビクビクと痙攣する膣内の感触をしばし愉しんでから再び抽送が始まると、今度は彼が満足するまで休むことを許されなかった。
「冥冥さんに付いて、海外に行くことになったの」
そう五条に告げたのは高専の廊下でだった。
「いつ?」
「来月」
「何日くらい?」
「冥冥さんは短期で帰る予定だけど、私は最低でも5年は戻らないつもり」
思ってもみなかったのだろう。そこで五条は名無子を正面から見据えた。彼の目が、目隠しで隠されていて良かったと名無子は思う。
「随分急だね。…もしかして前から決まってた?」
名無子はバツが悪そうに目を伏せながら頷いた。
「…黙ってて、ごめん」
「そっか」とつぶやいた五条が、名無子から顔を逸らして窓の外を見遣る。
「…長いね」
「うん、だから五条も、私を待たないで誰か良い人を見つけて」
五条がゆっくりと名無子に視線を戻すと、名無子の体が僅かに強張る。
「考えとくよ」
そう言った五条の唇が弧を描いたのを見て、名無子はホッと胸を撫で下ろした。
フ、と意識が浮かんで目を開けると、名無子の目には知らない天井が映り込んだ。
「……」
何が起こったのか整理できないまま、自分がしつらえの良いベッドに寝ている事を把握すると、危険が及んでいるわけではないようだと判断してゆっくりと身体を起こした。
「…あれ?」
何をしてたんだっけ?と記憶を手繰り寄せる。
名無子は渡航前の最後の仕事として呪霊を祓いに行ったはずだった。
呪霊を祓い、その巨体がチリのように崩れていくのを見ながら安堵の息を吐いたその時、『お疲れ』と不意に背後から聞こえた聞き慣れた声に酷く驚いて、そして…。
「目が覚めたんだ」
険しい顔で額に手を当てていた名無子は、弾かれたようにその声の主に顔を向けた。
「五条、ここどこ?私ヘマした?」
呪霊を祓ったと思ったのは自分の見誤りで、呪霊の結界に引き摺り込まれてしまったのかもしれない。そしてそれを、五条が助けてくれたのだろう、多分。
名無子の頭は現状を理解しようとそう憶測した。
「急いで戻らないと、皆んな心配してるよね」
シーツを捲り床に両足を下ろした名無子に五条が「その必要はないよ」と言った。
怪訝そうに五条を見上げると、彼は唇の端を吊り上げる。
「オマエは任務中に行方不明になったんだ」
「そうなの?じゃあ、五条が見つけてここまで運んでくれたんだ?」
「僕が名無子を行方不明にしたの。オマエは今日からここで暮らすんだよ」
五条の言っていることが理解できずに名無子は首を傾けながら眉根を寄せた。
「ふざけてる場合じゃないんだけど」
「本気だよ」
五条を一瞥してから立ち上がり、扉へと足を進める。伸ばした名無子の手は、しかし扉に触れる前に見えない何かに阻まれた。
「……結界?」
背後の五条を振り返る。
「なにこれ、どうしたの?」
「だからオマエは今日からここで暮らすんだって」
五条は彼がいつも見せる余裕綽々の笑みを浮かべながら、一歩ずつ名無子との距離を詰める。
「もう高専に戻る必要も、僕以外の人間に会う必要もない」
「…何を、言って…正気?」
「もちろん正気だよ。大切なものは失くさないように仕舞っておくことにしただけ」
名無子が結界と五条の間に挟まれてしまう頃には彼女の顔から完全に血の気が引いていて、それを見た五条は可笑しそうに喉を鳴らした。
五条の視線から逃れるように背を向けて、結界を壊そうと呪力を込めて壁を叩いてみてもそれが無意味である事は分かっている。
両手を結界の壁に押し当てて背後から名無子の身体を閉じ込めると、五条は背中を丸めて彼女の耳元に唇を寄せた。
「そう簡単に、僕から逃げられると思うなよ」
下半身の服だけを剥ぎ取った身体に激しく腰を打ち付けながら、五条が恍惚とした表情を浮かべている。
「は…イきそう…中に出すね…」
「ヤダッやめて…!」
声だけの抵抗も虚しく、膨れ上がった欲が奥で弾けた。
「あー…出た」
腰を押し当てたまま動きを止めた五条は満足そうに息を吐くと、自分の陰茎が入っている名無子の下腹部を指の腹で押した。
「名無子の中に、たくさん出したよ」
そのままゆるゆると腰を動かすとグジュグジュと挿入部が音を立てて、尻に体液が伝い落ちるのがわかった。
「どいて、離して」
「まだこんなに吸い付いてくるのに?」
「…っ」
無理矢理腰を引こうとすると、それを阻むように身体を起こした五条に腰を掴まれた。
「快すぎ。抜かないで二回戦ヤろうか」
その言葉通り、ゆっくり抽送を繰り返していたそれが再び硬さを増してゆくのが分かった。
「愛と同じ。何度でも溢れるほど注いであげるよ」
「やだ…やだ…」
名無子目尻から涙が溢れる。
「やだよ、助けて、お願い」
「うん、愛してるって言って」
「愛してるから、お願い」
「愛してるなら僕だけのものになりな」
小さな頃から才に恵まれ、欲しいものは何でも手に入れることができたこの男は、真に手に入らないものなどないと思っている。手に入らないものが許せないと思っている。
「…みんなが…私を探してるはず…」
「そうだね、はじめのうちは血眼になって探すだろうね。でもそのうち諦めるよ。そうやって少しずつ風化していって、誰の記憶からも忘れ去られてしまう。そうしたらその時、」
五条は名無子の両手首を掴んでシーツに押し付けると、その耳元に唇を寄せて殊優しい声色で囁く。
「オマエは本当に僕だけのものになるんだよ」
2/9ページ