Chocolate Lily
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「これが御神木?」
五条が敷地内にある一際高い木を見上げながら尋ねた。
周囲は既に薄暗いものの、足を取られるほどではない。
「一応そうですね」
「きっちり結界が効いてるところは流石だね」
祠だけじゃなかったんかーい!とナビス子は内心で喚いた。早く帰りたいオーラを振り撒いているのに、五条がそれを気にする素振りは全くない。
KYか?KYなのか?と思いながら、棒立ちになっていると、不意に五条が「それ」とナビス子を指差した。
「彼氏に貰ったの?」
「え?」
ややあって、それが自分のシャツの首元から僅かに覗くチェーンの事であると気づく。
よく見ているなと素直に感心すると共に、何となく油断ならないものを感じた。
「いえ、彼氏はいません」
「あ、そんな感じだよね」
今サラッとディスられたんじゃね?とナビス子は眉間に皺を寄せた。
「自分で買ったの?」
「……いえ」
「ちょっと見せてよ」
「嫌です」
間髪入れず拒否すると、五条は「どうして?」と顎に手を当てて首を傾けた。
「何で見せないといけないんですか、きも」
「いやー、なんか気になって。別に取り上げたりしないって」
「いやです」
そして2度目の「どうして」が返ってくる。
「見せられないものなの?」
「大切なものは人に見せない主義なんです」
「だったら部屋にでも仕舞っとけばいいじゃん」
「うざ」
「最近の若者の語彙力…」と、嘆くふりをしながら、それでも彼は追求の手を緩めない。
「人間ってさ、隠されると暴きたくなるもんなんだよね。見せられないのに身につけておかないといけない。気になるな」
「……」
踵を返そうとしたナビス子を五条が呼び止める。
「君さ、」
「そこまで」
先程よりも更に濃くなった宵の中に当主の姿が浮かび上がった。
「やはり早々にお帰りいただくべきだったね」
「探究心が止められなくて」
もっとも六眼を持つ者に目をつけられた以上、そうそう隠し通せないだろうことは、彼女も覚悟していた。
五条を捉えていた目を一旦細めてから、当主は視線を孫娘に移した。
「仕方がない、ナビス子」
当主がゆっくりと頷くと、ナビス子は少し戸惑った様子で首のチェーンに指をかけ、それを襟元から引っ張り出した。
服から引き出されたその先には、何かが紐状に裂いた布でぐるぐる巻きにされている。
其方に気を取られた刹那、突然当主が背後からナビス子の首に腕を回してグイと力を込めた。
首に回された腕を掴んでナビス子の顔が苦悶に歪む。
「これが悪用される前に、この子を殺さねばならん。それが私の役目だ」
「ちょっとストップ!」
五条が小さく両手を挙げた。
「僕、そんなに信用されてない?そもそもまだ中身を知らないんですけど」
片腕でナビス子を捕らえたまま、もう片方の手で印を結んだ当主が小さく何かを唱えると、するりと布が解けてゆく。よく見れば紐状の極めて細い布であるにもかかわらず、それにはびっしりと文字が刻まれていた。
なるほど、この布が呪符となってこの独特の気配を隠していたのか、と五条は思った。
「おばーちゃん、もう少し手を緩めてあげないとその子失神するよ」
布の下から現れたのは、ちょうど細い胎児のような形をした勾玉だった。
「
「…そんな物がこの世に実在するとはね」
五条は興味深げに顎に手を当てて、死者を甦らせることができるというそれを覗き込むような素振りを見せたあと、思い出したように「手を緩めて」と再び懇願した。
「これが過去に存在した古文書上のものとされてきたのは知っているだろう。だが反魂の術式を持つ者は本当にいた。かつて術者と共に生まれ出た勾玉は役目を終えて消失したとされているが呪符は残った。山﨑家にこの呪符が伝わっているのは、それが山﨑家の先祖だったからだ。勾玉を持つ者の責務は重い。この事は他に知られぬよう口承で山﨑家の当主にのみ伝えられてきたが、枷を背負う者は長く生まれてこなかった、のに…」
そこでフッとナビス子の首を捕える腕の力が緩む。
「そんな事、僕に教えちゃっていいんです?」
「お前さんが変に鼻を利かせなければ告げる必要はなかったんだよ」と、少し不服そうに当主が言った。
「これだから六眼は厄介なんだ」
「でも僕、マジでこういうの興味ないから」
「言ったろう。それが何人であれ、本家以外の者に知られるわけにはいかない」
五条が小さく肩を竦めると、当主は「そこで提案だ」と切り出した。
「この力が悪用されないよう護れるなら、この
そこでナビス子が抗議の声を上げたが、喉を締められていたため続かなかった。
「僕のメリットは?」
「悪意を持った者が甦る危険性を防げるだけでもメリットだと思うがね」
「興味ないね」
「それだけではない。六眼を持つ五条家の当主がいつまでも独り身ではいられまい。それなりの家、それなりの呪力を持つ嫁を望まれるだろう」
そうなった時、今の呪術界とは一線を引いている家の者が望ましいと五条悟が考えるのは当然の事だった。
「その希望に沿えると思うが」
いかに強い術師であっても老いに逆らう事はできない。
至れ孫娘を護れなくなる日が来ることをこの老婆は理解していて、代わりとなる護り手を探していたのだ。
五条がニヤリと笑みを浮かべる。
「悪くないですね。それを悪用されるのは僕も望むところではないんで」