Chocolate Lily
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「部外者を連れてったなんて知られたら大目玉喰らっちゃうなー」
そんなことを言いながら、そこに大して罪悪感を抱いていない様子の五条と無言のナビス子が2人で連れ立って歩く。
街の中心部から少し離れたそこは、数十年前には観光客でごった返していた時期もあったようだが、今はすっかり寂れていた。
平日の昼間に商店街を歩く人は殆どおらず、いかにも古くからあるといった外観の店と新参の店がチグハグ感を演出していたが興味をそそられる感じはしない。
それでもここに来るまでの新幹線の旅は悪くなかったので、ナビス子は朝より幾分マシな気分になっていた。
「なんか、呪霊の数が多いところですね」
商店街の裏路地に入ると、ガタガタになったコンクリート製の側溝の蓋が、寂れた雰囲気を一層際立たせて、トタンで修繕された建物の隙間や、乾いた土だけになった植木鉢の背後から低級の呪霊が顔を覗かせている。
「そう?こんなもんなんじゃない?」
「……」
こんなもんなわけないでしょーよ、と言いたくなるところをグっと堪える。
この人と一緒に居るのに必要なのは忍耐だ、とナビス子は思った。
「何で私が連れて来られたんでしょうか」
「えー、デートじゃん」
だいぶセンスのあるデートコースだな、という言葉は飲み込んでおく。
「五条さんとのデートにいい思い出ないです」
そもそも先日の初デートのお陰で、自分は無駄に有給を使わされる羽目になったのだ。
「じゃ、これからいっぱい作ろーねっ」
五条がナビス子の肩をギュッと抱いてすぐに離す。
忍耐だ、とナビス子は再び自分に言い聞かせた。
「さて、手始めに」と五条が足を止めるのに倣ってナビス子も足を止める。
所有者が居るのかどうかも分からない古い建物は、昔は鮮やかに入り口の壁を彩っていたであろうタイルが所々割れて剥がれ落ちていた。
かつて娼館だった事が分かる2階部分の特徴的な丸い嵌め込み窓にピタリと身体を寄せて、道すがらチラホラ見えた低級の呪霊たちとは違った様相のそれが此方を覗いている。
「あそこに居るの、祓ってみて」
彼は呪術高専の先生だった、と今更ながらナビス子は思った。そして生徒は彼の授業についていけているのか、とも。
ポイントを押さえて指導してくれるものの、基本的に放置主義。そうすることで本人の力でポテンシャルを引き出させるのだそうだ。
どうやら五条はナビス子にそのポテンシャルとやらを引き出させたかったようで、宿泊先に辿り着く頃にはナビス子はヘロヘロになっていた。
「うーん、体力が落ちてるねぇ。それじゃ本来の呪力も発揮できないよねぇ」
長い足を持て余すように歩く五条がナビス子を労る様子はない。
「じゃーん、お疲れのナビス子ちゃんに温泉のご褒美でーす」
それでも、高そうな旅館を宿泊先に選んでくれたあたり、少しは気にかけてもらえているのかともナビス子は思った。
自分が泊まりたかっただけなのでは、という疑念には蓋をしておく。
「部屋に露天風呂がついてる…」
「源泉掛け流しだよ」
「何で同じ部屋なんですか?」
「逆に何で別の部屋を取る必要が?」
ナビス子は「フー」と大きなため息を吐いた。
抗議をする気力体力は尽きていたし、したところで今更どうにかなるとも思えない。
しかしその不興は、敢えて内湯には入らず大浴場の温泉で身体をほぐし、更に宿自慢の料理に舌鼓を打つうちにすっかり消えていた。
「いい食べっぷりだね」
「どれもこれも美味しいですね」
幸せそうに料理を食べるナビス子を見ながら、五条が笑みを浮かべる。
「何ですか?」
その視線に気づいたナビス子が箸を止めて五条を見た。
「ナビス子が僕の前でそんな表情見せるの、初めてなんじゃない?」
ごくん、と食べ物を飲み込んでからナビス子は首を捻った。
「そう…ですか?」
「色気より食い気ってやつ?」
____ひと言多い
ナビス子の眉間に寄せられたシワは、再び料理を口に運んだ途端に、やはり難なく崩れた。
食後にもう一度大浴場に行って帰ってくると、部屋には既に布団が敷かれていて、五条がその上に寝そべってスマホを弄っていた。
五条の浴衣の丈を見て思わず「短かっ」と声に出してしまったが、それより2つ並べられた布団の方が気になる。
「せっかくだから、内湯に入ればよかったのに。露天最高だよ」
アナタが居なければね、と心の中で呟きながら、ナビス子は並べられた布団の片方を引っ張って布団同士の距離を取った。
「なにやってんの?」
「疲れてるんで寝ます。ぜっったいに邪魔しないでくださいね」
そう言い捨てて布団を被る。
"早く寝ろ自分"と心の中で念じていると、布団が剥ぎ取られた。
「ふざけてる?」
目前に迫るアイスブルーの瞳。ゾクリ、と背中が震える。
「…マジです」
「熱い夜を過ごす予定なんだけど」
そう言って降りてきた唇に指をあてて動きを制す。それは温かく、柔らかく、触れることが許されるのは限られた者だけだ。けれど。
「もう、こういうのは結婚するまでナシにしましょう」
愛は呪いだと言う人を愛してはいけない。
愛しても受け入れられることはない。
だから、割り切れるようになるまでナビス子には時間が必要だった。
五条が、自分の動きを止めている手を掴んで引き剥がす。
「今更意味分かんないんだけど」
「もう相性は確かめたし、必要なくないですか?」
「そんなに自制が効くタイプじゃないから」
長いまつ毛に縁取られた、ガラスのように美しく光る瞳に捉えられたらもう逃げられない。
「ま…っ」
順を追って施される愛撫に抗う術はなくて、されるがままに浴衣も息も乱されてゆく。
捕らえられ、充分に慣らされたそこに腰を進められたら、それだけで中心に性感が突き抜け小さな悲鳴に似た声が漏れた。
吸い付くように収縮され、吐精感を抑えるために一旦動きを止めた五条が、ナビス子に覆い被さって唇を重ねながらゆっくりと律動を始める。
「…どこが感じる?」
「…そんな…のっ」
「ここ…好きだよね」
角度を変えて抽送しながら、ひとつひとつ愉しそうに確かめてゆくそれが憎らしい。
投げ出されていた手はいつのまにか五条の腕を掴んでいた。抜き差しされるその場所が尋常でなく疼いて、繰り返し突き上げられたら身体が壊れてしまいそうだ。
「っもう…ムリ…」
浅く繰り返す呼吸の合間からそう訴えると「じゃあ出すよ」と五条が探し当てたそこを刺激するように力強く打ちつけ始めた。たちまち知らない何かが競り上がってきて、身体が信じられないくらいそれを欲して蠢動する。
_____こんなの知らない
頭の中が真っ白に弾けた。
一瞬息を詰めた五条が腰を押し当てて動きを止めた。ビクビクと痙攣しているそれがどちらのものか分からない。
ゆっくりと引いていく熱を感じながら、蕩けた目で五条を見上げると、彼は唇の端を吊り上げた。
「もうナカイキ覚えたの?」
そして耳元に唇を寄せて低く囁く。
「僕もキモチよかったよ」
そこにあるのは欲で、愛ではない。