Chocolate Lily
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____もしかしてピロートークというものは、あまり一般的ではないのだろうか
今しがた起こった人生で一度きりの経験の余韻に浸る間もなく、行為が終わると直ぐに身支度を整え始めた五条を見て、ナビス子はぼんやりとそんな事を思った。
そしてあの時、電話口から聞こえた女の声を思い出す。
「帰るの…?」
「まだやる事が残っててね」
話を途中で放り出して来たから怒ってるだろうな、と五条は数少ない同期の顔を思い浮かべた。
真っ黒な服で肢体を覆ってしまっても、五条のスタイルの良さは隠せなくて、その姿を見ると、やはり自分には分不相応な相手だとナビス子は思うのだ。
他に相手が居ても仕方ない。
旧家と言われる呪術師の家門の中には、妾を囲う事が当たり前のような家もあると聞いた。
いずれ五条家に嫁ぐであろう自分がそれを容認せざるを得ない立場になるのなら、彼と深く向き合わない方がいいに決まっている、とナビス子は自分に言い聞かせた。
それでも、自分の両親のような睦まじい夫婦への憧れはそう簡単に捨てられるものではない。
ナビス子の視線に気づいた五条は、律儀にも彼女のそばまでやってきて頬に触れるだけのキスをした。最低限の礼儀のつもりなのかもしれないと思う。
「じゃあね」と、お茶をするために少し立ち寄ったかのような軽さで部屋を出ていく五条の背中に、酷く胸が締め付けられる心地がした。
『ちょっと!迎えにきたあの男の人は何?!』
「親戚…かな…?」
尋問にテキストでの遣り取りは面倒だったのだろう。電話の相手のそれに、しどろもどろになりながらも何とかボロが出ない言い訳をする。
『だってチューしてたじゃん!』
「あれは…あれは、あの人帰国子女なんだよ。ちょっと感覚がオカシイの」
仰る通り、わざわざあんなところでキスする意味が分からないよね、とナビス子は思う。
美術館デートをした人とは何となく疎遠になってしまった。
あれから五条に会うことはなく、何となく毎日を過ごしていた。女にマメでないのは、彼にそうする必要がないからなのだろう。
このまま、何となく結婚するのだろうか、と思うと少し寂しい気がした。
ドキドキするような恋がしたい。一度きりの人生なのだから、愛し愛される経験をしてみたい。
そして多分、五条にそれを求めるのは無理だと思うのだ。彼は沢山のものを持ち過ぎている。
彼の来訪はいつだって突然だ。
本人曰く、たまたま空き時間が出来た時に来ているから、予定が立たないのだそうだ。
せっかくの休日に、朝っぱらから叩き起こされてナビス子は、正直迷惑していたし、それを顔いっぱいで表現したつもりだった。
「デート行こう!」
しかし彼がそれを気にする様子はない。ナビス子は、彼は目隠しのせいで相手の表情が読み取れないのだと思う事にした。
そもそも、突然デートだなんて言われて、それを真に受けるほど五条という人間を理解していないわけではない。
「はい!動きやすい服に着替えて。してもしなくても大して変わらない化粧はしなくていいからね!早く早く」
後半なんかムカつく事言われたな、と思いながらも、最終的に彼のペースに巻き込まれるしかない事を知っている。
五条の態度を見れば、あの日のことを反芻するように思い出しては割り切れないモヤモヤを抱えているのは自分だけだと分かってしまう。
外には五条が乗り付けてきたのであろうタクシーが待機していて、ナビス子は諦めも手伝って素直にそれに乗り込んだ。
人工的な色の流れる景色にやがて緑が増えてきた頃にタクシーを降りると、そこから更に人気のない空き地まで歩いてきたところで漸く五条が足を止めた。
そして後からついてきていたナビス子に向かって「こっちは手を出さないから、殺す気でかかっておいで」と告げる。
ナビス子は動きやすい服装でと言われた理由を理解して、なぜこの男はそれを説明をしないのだろうかと不満に思った。
「僕の事、キライでしょ。今までの恨みつらみぜーんぶぶつけてイイから。もしかしたら一発くらい入れられるかもしれないよ。なんて事絶対ないけど」
このレベルで人を煽れる人をなかなか知らない、と思いながらも、ナビス子は確かにイラっとさせられていた。
「じゃ、お言葉に甘えて」
呪術界一の実力者をぶん殴れるほどの技量があるとは思っていないが、それでも馬鹿にされっぱなしは腹が立つ。
朝の爽やかな空気を目一杯吸い込んでから丹田に力を込め、彼女はゆっくりと構えを取った。
「くううっそぉおおおー!」
荒い息を吐きながら空を仰ぎ、ナビス子が地団駄を踏んだ。
「はい、ひとこと感想をどーぞ」
「…レベチ」
「そんな当たり前のことじゃなくて」
ムカつく!と内心で悪態をつきながら、それでもこれ以上馬鹿にされたくなかった。
「…イメージ通りに身体が動かなくなってた」
「だよね」
オマエ何を知ってんだ、と言いたくなる。
「こっちに来てからちゃんと鍛錬してる?力は必ずしも上乗せされていくばかりじゃないんだから。特に体術は呪力を上手く乗せるには必要不可欠。体力維持の為の努力は基礎中の基礎。知ってるよね?」
「…ジムには通ってます」
ジムって…と五条が呆れたように呟く。
「だって仕事してるし。そもそも人目のないところで何かをするってのが難しいじゃないですか。通報されちゃう。」
「だから、呪術高専 に…」
「嫌です」
「まだ全部言ってないんだけど」
ナビス子は腕を組んで顔を逸らした。
「身バレしなくて済む方法もあるし」
「公文書偽造ですか」
「そんな感じ」
「そもそもばぁちゃんが何て言うか」
「そのバーさんがさ、心配してんの。君はサボり癖があるっからってさ」
ナビス子は驚いて五条の顔を見た。
「僕、メル友なんだよね」
「ウチのばぁちゃん、スマホ持ってな…」
「パソコンメールだよ。だからレスポンス遅いんだけど」
呆気に取られるとはこのことか。
母親とは頻繁に電話をしていたが、祖母がそんな事をしているとは知らなかった。
「ま、実践でしか鍛えられない事もあるし、君がどうしても呪術高専 に来たくないって言うなら、それは仕方ないとして」
五条はそう言って続けた。
「代わりに来月の10日から3日間付き合ってもらうから、仕事の休み取っといて」
「は?そんなこ…」
「別に僕はおばーちゃんに全部報告しても構わないんだけど」
不穏な台詞に抗議しようとした言葉を飲み込んで五条の顔を凝視する。
「君が肝試しとやらに行って、大したことない呪霊にやられそうになった事とか、僕が君の右太腿の内側に黒子がある事を知ってる事とか。」
ピキッとナビス子の表情が強張る。
「じょ、うだんですよね…?」
「どうかな。ということで、時間はまた連絡するから準備しといて」
そう言って五条は、自分を睨みつけるナビス子に向かってニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
今しがた起こった人生で一度きりの経験の余韻に浸る間もなく、行為が終わると直ぐに身支度を整え始めた五条を見て、ナビス子はぼんやりとそんな事を思った。
そしてあの時、電話口から聞こえた女の声を思い出す。
「帰るの…?」
「まだやる事が残っててね」
話を途中で放り出して来たから怒ってるだろうな、と五条は数少ない同期の顔を思い浮かべた。
真っ黒な服で肢体を覆ってしまっても、五条のスタイルの良さは隠せなくて、その姿を見ると、やはり自分には分不相応な相手だとナビス子は思うのだ。
他に相手が居ても仕方ない。
旧家と言われる呪術師の家門の中には、妾を囲う事が当たり前のような家もあると聞いた。
いずれ五条家に嫁ぐであろう自分がそれを容認せざるを得ない立場になるのなら、彼と深く向き合わない方がいいに決まっている、とナビス子は自分に言い聞かせた。
それでも、自分の両親のような睦まじい夫婦への憧れはそう簡単に捨てられるものではない。
ナビス子の視線に気づいた五条は、律儀にも彼女のそばまでやってきて頬に触れるだけのキスをした。最低限の礼儀のつもりなのかもしれないと思う。
「じゃあね」と、お茶をするために少し立ち寄ったかのような軽さで部屋を出ていく五条の背中に、酷く胸が締め付けられる心地がした。
『ちょっと!迎えにきたあの男の人は何?!』
「親戚…かな…?」
尋問にテキストでの遣り取りは面倒だったのだろう。電話の相手のそれに、しどろもどろになりながらも何とかボロが出ない言い訳をする。
『だってチューしてたじゃん!』
「あれは…あれは、あの人帰国子女なんだよ。ちょっと感覚がオカシイの」
仰る通り、わざわざあんなところでキスする意味が分からないよね、とナビス子は思う。
美術館デートをした人とは何となく疎遠になってしまった。
あれから五条に会うことはなく、何となく毎日を過ごしていた。女にマメでないのは、彼にそうする必要がないからなのだろう。
このまま、何となく結婚するのだろうか、と思うと少し寂しい気がした。
ドキドキするような恋がしたい。一度きりの人生なのだから、愛し愛される経験をしてみたい。
そして多分、五条にそれを求めるのは無理だと思うのだ。彼は沢山のものを持ち過ぎている。
彼の来訪はいつだって突然だ。
本人曰く、たまたま空き時間が出来た時に来ているから、予定が立たないのだそうだ。
せっかくの休日に、朝っぱらから叩き起こされてナビス子は、正直迷惑していたし、それを顔いっぱいで表現したつもりだった。
「デート行こう!」
しかし彼がそれを気にする様子はない。ナビス子は、彼は目隠しのせいで相手の表情が読み取れないのだと思う事にした。
そもそも、突然デートだなんて言われて、それを真に受けるほど五条という人間を理解していないわけではない。
「はい!動きやすい服に着替えて。してもしなくても大して変わらない化粧はしなくていいからね!早く早く」
後半なんかムカつく事言われたな、と思いながらも、最終的に彼のペースに巻き込まれるしかない事を知っている。
五条の態度を見れば、あの日のことを反芻するように思い出しては割り切れないモヤモヤを抱えているのは自分だけだと分かってしまう。
外には五条が乗り付けてきたのであろうタクシーが待機していて、ナビス子は諦めも手伝って素直にそれに乗り込んだ。
人工的な色の流れる景色にやがて緑が増えてきた頃にタクシーを降りると、そこから更に人気のない空き地まで歩いてきたところで漸く五条が足を止めた。
そして後からついてきていたナビス子に向かって「こっちは手を出さないから、殺す気でかかっておいで」と告げる。
ナビス子は動きやすい服装でと言われた理由を理解して、なぜこの男はそれを説明をしないのだろうかと不満に思った。
「僕の事、キライでしょ。今までの恨みつらみぜーんぶぶつけてイイから。もしかしたら一発くらい入れられるかもしれないよ。なんて事絶対ないけど」
このレベルで人を煽れる人をなかなか知らない、と思いながらも、ナビス子は確かにイラっとさせられていた。
「じゃ、お言葉に甘えて」
呪術界一の実力者をぶん殴れるほどの技量があるとは思っていないが、それでも馬鹿にされっぱなしは腹が立つ。
朝の爽やかな空気を目一杯吸い込んでから丹田に力を込め、彼女はゆっくりと構えを取った。
「くううっそぉおおおー!」
荒い息を吐きながら空を仰ぎ、ナビス子が地団駄を踏んだ。
「はい、ひとこと感想をどーぞ」
「…レベチ」
「そんな当たり前のことじゃなくて」
ムカつく!と内心で悪態をつきながら、それでもこれ以上馬鹿にされたくなかった。
「…イメージ通りに身体が動かなくなってた」
「だよね」
オマエ何を知ってんだ、と言いたくなる。
「こっちに来てからちゃんと鍛錬してる?力は必ずしも上乗せされていくばかりじゃないんだから。特に体術は呪力を上手く乗せるには必要不可欠。体力維持の為の努力は基礎中の基礎。知ってるよね?」
「…ジムには通ってます」
ジムって…と五条が呆れたように呟く。
「だって仕事してるし。そもそも人目のないところで何かをするってのが難しいじゃないですか。通報されちゃう。」
「だから、
「嫌です」
「まだ全部言ってないんだけど」
ナビス子は腕を組んで顔を逸らした。
「身バレしなくて済む方法もあるし」
「公文書偽造ですか」
「そんな感じ」
「そもそもばぁちゃんが何て言うか」
「そのバーさんがさ、心配してんの。君はサボり癖があるっからってさ」
ナビス子は驚いて五条の顔を見た。
「僕、メル友なんだよね」
「ウチのばぁちゃん、スマホ持ってな…」
「パソコンメールだよ。だからレスポンス遅いんだけど」
呆気に取られるとはこのことか。
母親とは頻繁に電話をしていたが、祖母がそんな事をしているとは知らなかった。
「ま、実践でしか鍛えられない事もあるし、君がどうしても
五条はそう言って続けた。
「代わりに来月の10日から3日間付き合ってもらうから、仕事の休み取っといて」
「は?そんなこ…」
「別に僕はおばーちゃんに全部報告しても構わないんだけど」
不穏な台詞に抗議しようとした言葉を飲み込んで五条の顔を凝視する。
「君が肝試しとやらに行って、大したことない呪霊にやられそうになった事とか、僕が君の右太腿の内側に黒子がある事を知ってる事とか。」
ピキッとナビス子の表情が強張る。
「じょ、うだんですよね…?」
「どうかな。ということで、時間はまた連絡するから準備しといて」
そう言って五条は、自分を睨みつけるナビス子に向かってニヤリと嫌な笑みを浮かべた。