歩いて帰ろう
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キヨタ達が見えなくなると神くんはパッとあたしの手を離し、それから教室へ帰るまで一言も喋らなかった。
最初はウキウキしていたあたしも、流石に途中で異変に気付き何度か声をかけてみたものの見事に無視を喰らう。
なんか、マズくない…?
放課後部活の為に体育館へ向かえば何処から湧いて出たのかキヨタが煩く付き纏い、いつからだの何でだだの揚句には二人で俺を騙そうとしているな?とシツコイったらない。
そんな事より少しでも手持ち無沙汰になるとあたしの頭の中は神くんの態度が気になって…
もし、仮に、不機嫌の理由があたしにあるのだとしたら…?
もぉ、キヨタ勘弁して。
アイツとは今世紀最悪の相性だ。
解散後の自主練はいつもほど集中できるはずもなく、さてどうしたものかと言い訳を考える。
言い訳も何もキヨタを殴りたかった、ただそれだけなんだもの。
不意に人影に気づけばフロアの入り口の壁に両腕を組んで凭れ掛かった神くんが長い足をもてあますようにして立っている。
「あ、もう終わったんだ?」
さてはマネ子に手伝ってもらったな?
「あたしももう終わり。ちょっと待ってね」とボールを集めるのだけれど神くんが手伝ってくれる様子はない。
これはいよいよ不機嫌の原因があたしにあると気まずい雰囲気に胸がバクバクと鳴りだす。
「…じ、神くん、何か怒ってる…?」と顔色を伺ったあとに「よね?」と付け加えた。
すると神くんはそれには答えずに「腹筋」とあたしを促す。
息も詰まるような空気の中の筋トレは今までやった中で1番きつく、多分1番効果的だったと思う。
「…っく~」
フロアに寝転がったあたしに構わず鞄を引っ掛ける神くんにこれ以上の沈黙は堪えられないと上半身を起こした。
「あのね神くん、昼休みの事を怒ってるならあれはただ…」
「俺は理由が聞きたい訳じゃないけど」
おぉ喋った、なんてどうでもいい事に感動しつつ「え?」と聞き返す。
「理由なんて関係ないだろ」
絶句するあたし。
だって理由を言わない事には何も解決しないじゃない。
あたしを置いて出口へ向かおうとする神くんを慌てて追った。
「ご、ごめんね神くん。あれはただの悪ふざけで…」
足を止めた神くんがあたしを振り返る。
「誰とでもあんな悪ふざけをするんだ?…ムカつく」
ドッキンと心臓が飛び上がりギュウと握り潰されるように痛くなる。
あたしを見下ろす神くんの冷たい目が怖くって目を合わせられない。
普段温厚な人ほど怒ったら怖いって本当なんだ。
「…ご、めん」
やっと出た言葉は神くんに届いたのだろうか、表情を変えない彼に俯いてしまう。
「もう、あんな事しない…から」
ごめんね
嫌いにならないで
ジワっと鼻の奥が熱くなるからそれを堪えるためにきつく唇を噛んだ。
ハァーと大きなため息が聞こえて顔をあげると視線を反らせた神くんが頭を掻いた。
「俺、すごくカッコ悪い」
そしてあたしに背中を向けて出ていくからあたしは慌てて荷物を掴んでその後を追った。
「神くん、神くん!」
ヤバイ泣きそう。
駐輪場で神くんに追い付いたあたしは勢いに任せてその背中にしがみついた。
「やだ~…」
浅はかな自分が嫌だ
神くんを怒らせちゃった自分が嫌だ
神くんと別れるのはもっと嫌だ
駐輪場でこんな事してたら誰かに見られちゃうかもしれないけれど、今はそんな事問題じゃない。
「みょう寺さん」
神くんがあたしを振り返るからあたしはその背中から体を離す。
ごめん、もうしないから、としきりに呟くあたしの頭に大きな手が乗せられた。
「俺もごめん」
驚いて顔をあげた拍子にポロリと涙が零れた。
「だけど俺、あんなのを見て笑っていられるほど大人じゃないから」
ウン、と頷いたらまた涙が零れた。
「小さい男だよね」
今度はウウンと首を振る。
神くんがそんな風に思ってくれていたのは嬉しいから、だから余計自己嫌悪に陥るの。
「みょう寺さん」と呼ばれて伏せていた目をあげたら真剣な顔で神くんが言った。
「今からみょう寺さんの部屋に行ってもいい?」
その真意が何であるかなんて、考える余裕が今のあたしにあるの?
「ヤバイなぁ」
朝の洗いもの残したままだし、ベットにはパジャマ代わりのジャージを脱ぎ散らかしたままだし…って苦笑いするけれど本当にヤバイのはソコじゃない。
「汗かいてるんじゃない?」
「あ、ぁ…」
そうですねといつになくギクシャクしながらシャワールームへ入った。
湯気にあてられそう。
単純に遊びに来たなんて不自然すぎるのは分かっている。
神くんが何を求めててその先に何があるのかも。
「…じ、んくんもよかったら…」
部活でかいた汗は綺麗に流した筈なのに、またすぐに汗ばみそうなあたしを残して神くんがシャワールームに消えた。
テレビをつけてお気に入りの曲をかけて部屋をうんと煩くした。
ジュースを出してバレーボール雑誌をめくって…更にそれをファッション雑誌に取り替えて。
シャワールームから出てきた神くんに飲み物を勧めながら饒舌になるあたし。
「女の子のファッション雑誌って面白いよね」と神くんがあたしの隣に座って雑誌を覗き込んだ。
「見たことあるの?」
「うん、クラスのコに見せてもらった事がある。あぁ女の子ってこんな事を気にするんだなって思った」
「え…どんな」
クスリと笑った神くんがあたしを包み込むように抱きしめた。
「俺はみょう寺さんだから欲しいんだよ」
あぁそうだ。
雑誌には彼氏がやたら体を求めてくるけれどヤりたいだけなんじゃないかとか、そんな話がよく載っていて…
いいよね?と囁く神くんの服をギュッと掴んだらそれがOKのサイン。
震えるあたしの指先を握って神くんが何度もキスをくれる。
「大丈夫、俺も凄く緊張してるから」とはにかむように笑う笑顔に少し安心した。
神くんがすごく丁寧にあたしを扱ってくれているのがわかったから、恥ずかしい気持ちとか見られたくない気持ちとか色々我慢したのだけれど、逆に初めて見る男の人のそれを見ていいのか悪いのか、一体何をどうするのが正解なのか分からなくてただただ戸惑う。
そしてあたしが感心するのは、あたしなんかは保健体育の授業でしか見たことのないソレを男の子は自分で買うのかな、とかどこに隠し持っているんだろうとか。
微かなビニールの音に恥ずかしくなって目を潰るあたしの入り口に硬いものがあたった。
「少し力抜いて」
無理です
「…っ」
タンポンはもっと簡単に入るのにとか、本当に皆んなこんな事をやってるんだろうかとか、その時はそんな事を考える余裕はなくて、でも努力の甲斐あって(?)挿入にはそれほどの痛みを感じることはなかった。
その後は無茶苦茶痛かったんだけど。
なんか凄いことしちゃったって思う気持ちと意外とこんなもんなんだって思う気持ちが混じり合ってボーゼンとしているあたしに神くんが「大丈夫?」と聞いた。
我にかえって「うん」と返事をしたら、そこからムズムズと恥ずかしい気持ちが再燃してきた。
神くんがあたしの身体を自分のそれに引き寄せるように抱きしめると肌と肌が直接触れる感触がくすぐったくて気持ちいい。
それはあたしをとても幸せな気持ちにさせて、だからあたしは今までの彼女に…とりわけ神くんの初めてだったコに激しい嫉妬を覚えたのだけれど、神くんが壊れ物を扱うかのように優しいキスをあたしのこめかみにしてくれたら幸せの方が勝ってしまった。
「俺、今すごく幸せ」
そう言ってあたしの頬を指でなぞる神くんが愛しくて愛しくてしょうがなくなってしまったの。