歩いて帰ろう
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彼氏を部屋に招いて手づくり料理を振る舞う…なんて幸せ…!
「美味しい」と言ってもらえたなら、それがお世辞だって何だっていいの。
胸一杯幸せを充電したあたしは、いつになくヤル気満々で教科書と向き合った。
「あのね、此処なんだけど…」
あたしと向かい合わせに座っていた神くんが「どれ」と体を斜に構えて教科書を覗き込む。
どの角度で見ても端正な顔立ちだな、首のラインが綺麗…なんて馬鹿な事考えてるあたしに「これはね…」と説明を始めるから慌ててそっちに集中した。
静かな部屋には時計の音と時折聞こえる紙をめくる音。
静かな密室は二人の距離をすごく近く感じさせた。
「…ごめん神くん、もいっこ聞いていい?」
神くんがペンを止めて顔を上げた。
「どれ?」
「うんとね」と教科書を突き出すと、いつものように体を斜めに傾けて教科書を覗き込む。
「んー?」
ちょっと首を傾げた神くんが「ちょっと貸して」と教科書を引き寄せた。
ノートの隅にペンを走らせて考え込む様子に、神くんにも分からない問題があるんだと少し嬉しくなったのも束の間「あぁ、こうか」と納得したように再びペンを走らせ答えを確認している。
あれ?解いちゃったよ、流石だな。
「あのね…」
神くんが体をずらせてあたしの隣に移動してきたから、あたしは途端に緊張して心臓ばかりが馬鹿みたいに活発に動きだす。
静まれ心臓。
こんなに静かなのに神くんに聞こえちゃう。
それをごまかすように何回も相槌をうった。
「あーそうなるんだ!ちょっと思い付かないよね」
気付けば肩が触れ合う距離にいる神くんが笑った。
「数学は閃きなんだよ。なま恵さんは公式は覚えているみたいだから、あとはどうやってそれを使うかなんだよね」
例題の丸暗記だけじゃダメなんだよと彼は言う。
「え~閃き?閃かない全っ然」
「そこがいかにもみょう寺さんらしい」
それひっかかるなぁ。
あたしが鈍感って事?
「数学だけだよ」
「そうかな?一事が万事そんな感じだけど」
「そんな事ないもん、いつも閃きまくり」と口を尖らせたのは近すぎる距離にドキドキする自分を何とか平常心に近い状態へ持っていきたかったから。
「そうなの?」あたしを覗き込む神くんと目を合わせずに「そうだよ」と答えた。
「なら良かった」
そう言った神くんの手からシャーペンが転がり落ちてあたしの腰に腕がまわされた。
「はぅっ」
自分で恥ずかしくなるくらい肩が跳ねた。
「じ…」
言いかけた言葉は唇で塞がれて…
こないだの触れるだけのキスとは違う角度を変えて何度も重ねられるそれに頭がボゥっとなるのは酸欠ってだけじゃない。
唇が離れても鼻が触れ合うような距離の神くんを見ることが出来ないでいるあたしの体がギュッと抱きしめられた。
体ごと爆発しそう。
この腕に安堵感を覚える日がくるのだろうかってくらい戸惑うあたしに「あっちに行こ」と離れた体が腕を引いた。
「え?」
ええーーー!?
促されて体を起こしたもののアッチって確実にソコを指してますね!?
「や、神くんベンキョ…」
ワンルームしかない部屋のベットはすぐそこで、そこに腰を下ろした神くんがあたしを引き寄せた。
「て、テストっ勉強しなくっちゃ…!」
抱きしめられた腕の中で精一杯の言い訳を試みるのだけれど「気になって勉強どころじゃないよ」と言う唇があたしの頬に触れた。
ゾクリと鳥肌が立って能内が痺れる。
コレなに?誰コレ?
ここに彰クンと同人種がいる!?
あたしは漠然と頭のどこかで神くんはこんな事するような人じゃないって思ってた。
手を繋いで一緒に帰って、たまにキスして…それでいーじゃないって思うのは夢見すぎなの?
いつの間にかベットに沈まされたあたしの恐怖心は最高潮に達した。
こんなんじゃないってか心の準備が…っ。
「じ、落ち着いて…」
「その言葉はどちらかと言うとみょう寺さんに必要だと思うよ」
あたしは下から神くんの肩を必死で押し上げるのだけれど。
「俺だって男なんだし、こんな風に誰も居ない部屋に呼ばれたら期待しちゃうんだけど」
困ったように、だけどどこか楽しげにあたしを見下ろす彼は紛れも無く『男』なんだってあたしはその時再確認した。
「こ、心のジュンビが…」
「じゃあ今して」
考えろ言い訳
その間にもスカートに侵入した手が太腿に触れるザラリとした感触に縮み上がった。
「は、鼻に大根突っ込むくらい痛いって…」
「え?」
怪訝そうな神くんの顔。
「…だから…あたしは…その…」
初めてだから、と小さな声で告白した。
「鼻に大根…」
「…誰が試したの?鼻に大根…」
さぁ…
「誰だって最初は痛いんだから大丈夫」と尚も進めようとする手を掴んだ。
「嫌嫌、痛いの嫌」
あたしだってかなり必死。
「注射とか泣いちゃうし」
「注射、ねぇ…?遠いような近いような…」
そう言いながら体を起こした神くんにホッとするも束の間。
「痛くないように努力する。だから今日は指だけ、ね?」
は?と驚くあたしの足の間に神くんが体を割り込ませた。
抵抗しようとしたのだけど、さすがにコレ以上の我が儘を言ったら恋人って関係にヒビが入りそうで…あたしには何よりそれが怖かったから、全てを拒絶することは出来なかった。
「ちょっとだけね?見ないでね?痛くしないでね?嫌だって言ったらすぐ止めてね?」
神くんは適当な返事を返した。